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26.考慮するべきこと
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「……そういえば、姉上。この国の騎士団長は第二王子のウェルド殿下なのですよね?」
「え? ええ、そうよ。それがどうかしたの?」
ルシウスは私に唐突にそのような質問をしてきた。
恐らく先程までがどちらかというと暗い話題だったため、話を変えようとしているのだろう。それがわかったため、私はとりあえず話に乗る。
「いえ、今回の戦いにおいて見事な指揮をしていましたから、驚いたのです。てっきりお飾りなのかと思っていましたからね」
「それはなんというか、中々辛辣な評価をしていたのね?」
「失礼なことだとはわかっていますが、やはりあの若さで騎士団長に第二王子がなったら、色々と疑ってしまうものです」
「まあ、それはそうかもしれないわね……」
ルシウスの疑念は、きっと多くの人達が覚えているものなのだろう。
若くて実績も特にない第二王子が騎士団長に就任している。それは確かに一見すると、権力によって就任したように見えてしまうだろう。
というか、事実としてもそれは間違っていない。実際に国王様は、息子可愛さに騎士団長を任せているのだろうし、それはウェルド様自身がそう思っていることでもある。
「でも、ウェルド様は非常に優秀な方なのよ」
「おや、そうなのですか?」
「ええ、真面目で少し不器用な部分はあるけれど、騎士団長としての手腕は見事なものだと言われているわ。それが皆に知られていないというのは、残念なことね」
「いえ、まあ、今回の戦いである程度知られるのではないでしょうか?」
そこで私は、ルシウスの態度に少し違和感を覚えた。なんというか、彼は非常にぎこちない態度なのだ。
先程までははきはきと喋っていたのに、今は難しい顔をしている。私が何か変なことを言ったのだろうか。
「ルシウス、どうかしたの?」
「あ、いえ、その……珍しいと思ったのです」
「珍しい? 何が?」
「姉上がそのように他者を語るのが、です」
「それは……」
ルシウスの指摘に、私はとても納得していた。
今まで私は、他者とそれ程関わりを持たないようにしていた。だから、自ずと誰かのことを饒舌に語ることがなかったのである。
そのギャップに、ルシウスは困惑していたということなのだろう。確かに彼からすれば、先程の私は変だったかもしれない。
「特別親しくされているのですか?」
「そ、そういう訳ではないわ」
「本当ですか? なんというか、なんとも思っていない相手に対する態度ではなかったような気がしますが」
「そ、そうかしら?」
ルシウスの言葉に、私は少し怯んでしまう。
ウェルド様のことを男性として意識したことがないかというと、それは嘘になる。婚約の話などもあったし、色々と思う所はあるのだ。
それが先程は表面に出てしまったということだろうか。それはなんというか、すごく恥ずかしい。
「……まあ、悪いことではないとは思います。むしろ素敵なことかと」
「そ、そう?」
「ええ、ただ気掛かりはありますね」
「え?」
そこでルシウスの表情は、真剣なものに切り替わった。
それがどうしてなのか、私にはわからない。
「相手が第二王子であるということは、考慮するべき事柄かと」
「考慮……まあ、確かに権力者ではあるけれど、それにそんなに不都合があるのかしら?」
「我々は特に意識したこともありませんが、ウェルリグル侯爵家というものは少々厄介な構造をしているでしょう?」
「……ああ、そうだったわね」
ルシウスの説明によって、私は思い出した。ウェルリグル侯爵家では、し烈な当主争いが繰り広げられているのだということを。
私達のような末弟や末妹に近い子供は、それをあまり気にしたことはない。話にならない程の力しか持っていないからだ。
だが、上の兄弟達は次期当主になろうと争っているらしい。その争いがあるため、私がウェルド様と近づくことは、少々危険であるとルシウスは言いたいのだろう。
「第二王子と私がもしも婚約したりしたら、勢力図がひっくり返るかもしれないのね」
「ええ、姉上が争いに巻き込まれるかもしれません……といっても、第二王子と婚約した姉上を敵に回そうと思う人はいないと思いますから、取り込むために甘い言葉をかけてくるだけだとは思いますが」
「なるほど、それは面倒ね……迂闊だったわ。それは意識しておくべきことだったわね」
関係なかったはずの当主争いに参加することになる。それはできれば、避けたいことだ。
今まですっかりと忘れていたが、それは考慮するべき事柄だった。これはエクティス様に伝えておいた方がいいかもしれない。もしも婚約した場合、王家にも迷惑をかけることになる事柄である訳だし。
「え? ええ、そうよ。それがどうかしたの?」
ルシウスは私に唐突にそのような質問をしてきた。
恐らく先程までがどちらかというと暗い話題だったため、話を変えようとしているのだろう。それがわかったため、私はとりあえず話に乗る。
「いえ、今回の戦いにおいて見事な指揮をしていましたから、驚いたのです。てっきりお飾りなのかと思っていましたからね」
「それはなんというか、中々辛辣な評価をしていたのね?」
「失礼なことだとはわかっていますが、やはりあの若さで騎士団長に第二王子がなったら、色々と疑ってしまうものです」
「まあ、それはそうかもしれないわね……」
ルシウスの疑念は、きっと多くの人達が覚えているものなのだろう。
若くて実績も特にない第二王子が騎士団長に就任している。それは確かに一見すると、権力によって就任したように見えてしまうだろう。
というか、事実としてもそれは間違っていない。実際に国王様は、息子可愛さに騎士団長を任せているのだろうし、それはウェルド様自身がそう思っていることでもある。
「でも、ウェルド様は非常に優秀な方なのよ」
「おや、そうなのですか?」
「ええ、真面目で少し不器用な部分はあるけれど、騎士団長としての手腕は見事なものだと言われているわ。それが皆に知られていないというのは、残念なことね」
「いえ、まあ、今回の戦いである程度知られるのではないでしょうか?」
そこで私は、ルシウスの態度に少し違和感を覚えた。なんというか、彼は非常にぎこちない態度なのだ。
先程までははきはきと喋っていたのに、今は難しい顔をしている。私が何か変なことを言ったのだろうか。
「ルシウス、どうかしたの?」
「あ、いえ、その……珍しいと思ったのです」
「珍しい? 何が?」
「姉上がそのように他者を語るのが、です」
「それは……」
ルシウスの指摘に、私はとても納得していた。
今まで私は、他者とそれ程関わりを持たないようにしていた。だから、自ずと誰かのことを饒舌に語ることがなかったのである。
そのギャップに、ルシウスは困惑していたということなのだろう。確かに彼からすれば、先程の私は変だったかもしれない。
「特別親しくされているのですか?」
「そ、そういう訳ではないわ」
「本当ですか? なんというか、なんとも思っていない相手に対する態度ではなかったような気がしますが」
「そ、そうかしら?」
ルシウスの言葉に、私は少し怯んでしまう。
ウェルド様のことを男性として意識したことがないかというと、それは嘘になる。婚約の話などもあったし、色々と思う所はあるのだ。
それが先程は表面に出てしまったということだろうか。それはなんというか、すごく恥ずかしい。
「……まあ、悪いことではないとは思います。むしろ素敵なことかと」
「そ、そう?」
「ええ、ただ気掛かりはありますね」
「え?」
そこでルシウスの表情は、真剣なものに切り替わった。
それがどうしてなのか、私にはわからない。
「相手が第二王子であるということは、考慮するべき事柄かと」
「考慮……まあ、確かに権力者ではあるけれど、それにそんなに不都合があるのかしら?」
「我々は特に意識したこともありませんが、ウェルリグル侯爵家というものは少々厄介な構造をしているでしょう?」
「……ああ、そうだったわね」
ルシウスの説明によって、私は思い出した。ウェルリグル侯爵家では、し烈な当主争いが繰り広げられているのだということを。
私達のような末弟や末妹に近い子供は、それをあまり気にしたことはない。話にならない程の力しか持っていないからだ。
だが、上の兄弟達は次期当主になろうと争っているらしい。その争いがあるため、私がウェルド様と近づくことは、少々危険であるとルシウスは言いたいのだろう。
「第二王子と私がもしも婚約したりしたら、勢力図がひっくり返るかもしれないのね」
「ええ、姉上が争いに巻き込まれるかもしれません……といっても、第二王子と婚約した姉上を敵に回そうと思う人はいないと思いますから、取り込むために甘い言葉をかけてくるだけだとは思いますが」
「なるほど、それは面倒ね……迂闊だったわ。それは意識しておくべきことだったわね」
関係なかったはずの当主争いに参加することになる。それはできれば、避けたいことだ。
今まですっかりと忘れていたが、それは考慮するべき事柄だった。これはエクティス様に伝えておいた方がいいかもしれない。もしも婚約した場合、王家にも迷惑をかけることになる事柄である訳だし。
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