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5.気付かなかった待遇
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「ルナーラ様、私達の関係性などはこの際どうでも良いことです」
自分への接し方に対して不満を述べるルナーラ様を、ラベルグ様はそう言って両断した。
敬意を払っていると言っていたが、その言葉は結構辛辣である。そういう所には、兄妹としての気軽さが出ているのかもしれない。
「重要なのは私が呼ばれたことです。何故、フェルーナと私を? 単に紹介という訳ではないのでしょう。そこには何か意図があるはずです」
「まあ、それはその通りなのですけれどね」
ルナーラ様は、明らかに不機嫌そうにしていた。
彼女としては、妾の子とはいえ兄から堅苦しい態度はされたくないのだろう。
そういったやり取りから考えると、二人の間には案外確執などはないのかもしれない。
「それに関しては、フェルーナにも聞いて欲しいことなのですけれど」
「あ、はい。私も気になっていました」
「お兄様、とりあえず座りましょうか」
ルナーラ様が私の正面に腰掛けると、ラベルグ様はこちら側に来た。
それは、正当な公爵令嬢である妹と自分を、線引きしているからだろうか。いやこれは単に、話を聞く側に回っていると考えるべきかもしれない。どうやら彼の方も、何も――あるいはほとんど事情を知らされていないようだし。
「結論から言いましょう。フェルーナは冷遇されています」
「え?」
「冷遇……」
ラベルグ様が腰掛けてから、ルナーラ様は特に前置きも挟まずに言葉を発した。
その言葉の内容に、私は面食らっている。冷遇とは一体、何に対する言葉なのだろうか。それがよくわからなかった。
「フェルーナは次期聖女に選ばれました。ただ、腐った王国の上層部は彼女のことを認めていません。その理由はひどく馬鹿げたもの。つまり、彼女の身分のことです」
「身分、つまりは平民であるからフェルーナは認められていないという訳ですか……」
「ええ、上層部はその決定について納得していません。だから彼女を王城に留まらせようとしなかった。次期聖女を泊めることなど、いくらでもできたというのに。いえ、それ所かわざと無理なことを言ったとさえ思ってしまいます」
ルナーラ様の言葉によって、私は初めて自分が冷遇されていたということを認識した。
一週間後に王城にまた来ること、あれは嫌がらせの類だったということなのだろうか。王城側は、当然私の出身がどこであるかを知っている。そこから最も嫌がる期間を導き出し、王城にも泊まらせようとしなかった。
それがもしも本当だとしたら、それは嫌がらせとしか言いようがない。
なんとも意地悪で、悪質だ。私が平民であり、王都まで来るには苦労しなければならないことなんて、わかり切っているはずなのに。
自分への接し方に対して不満を述べるルナーラ様を、ラベルグ様はそう言って両断した。
敬意を払っていると言っていたが、その言葉は結構辛辣である。そういう所には、兄妹としての気軽さが出ているのかもしれない。
「重要なのは私が呼ばれたことです。何故、フェルーナと私を? 単に紹介という訳ではないのでしょう。そこには何か意図があるはずです」
「まあ、それはその通りなのですけれどね」
ルナーラ様は、明らかに不機嫌そうにしていた。
彼女としては、妾の子とはいえ兄から堅苦しい態度はされたくないのだろう。
そういったやり取りから考えると、二人の間には案外確執などはないのかもしれない。
「それに関しては、フェルーナにも聞いて欲しいことなのですけれど」
「あ、はい。私も気になっていました」
「お兄様、とりあえず座りましょうか」
ルナーラ様が私の正面に腰掛けると、ラベルグ様はこちら側に来た。
それは、正当な公爵令嬢である妹と自分を、線引きしているからだろうか。いやこれは単に、話を聞く側に回っていると考えるべきかもしれない。どうやら彼の方も、何も――あるいはほとんど事情を知らされていないようだし。
「結論から言いましょう。フェルーナは冷遇されています」
「え?」
「冷遇……」
ラベルグ様が腰掛けてから、ルナーラ様は特に前置きも挟まずに言葉を発した。
その言葉の内容に、私は面食らっている。冷遇とは一体、何に対する言葉なのだろうか。それがよくわからなかった。
「フェルーナは次期聖女に選ばれました。ただ、腐った王国の上層部は彼女のことを認めていません。その理由はひどく馬鹿げたもの。つまり、彼女の身分のことです」
「身分、つまりは平民であるからフェルーナは認められていないという訳ですか……」
「ええ、上層部はその決定について納得していません。だから彼女を王城に留まらせようとしなかった。次期聖女を泊めることなど、いくらでもできたというのに。いえ、それ所かわざと無理なことを言ったとさえ思ってしまいます」
ルナーラ様の言葉によって、私は初めて自分が冷遇されていたということを認識した。
一週間後に王城にまた来ること、あれは嫌がらせの類だったということなのだろうか。王城側は、当然私の出身がどこであるかを知っている。そこから最も嫌がる期間を導き出し、王城にも泊まらせようとしなかった。
それがもしも本当だとしたら、それは嫌がらせとしか言いようがない。
なんとも意地悪で、悪質だ。私が平民であり、王都まで来るには苦労しなければならないことなんて、わかり切っているはずなのに。
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