「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗

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9.業務の疲労

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 聖女という仕事は、激務であるということは知っていた。
 ただ、実際にやってみたことによって、私は自分の想像が甘いものだったことを理解した。
 まだ慣れていないのもあるだろうが、今日一日だけでくたくたになっている。思っていた以上に、聖女の業務というものはきつかったのだ。

「フェルーナ、大丈夫か?」
「え、ええ……」

 聖女というのは、基本的に王城に住み込みで働く。
 流石の王城も、そのための部屋は用意してくれた。ただここはラベルグ様曰く、聖女の部屋としては質素過ぎるらしい。
 その点に関しても、冷遇されているということなのだろう。ただ、別にこれは私にとってはどうでもいいことだ。平民である私にとって、自室なんてこのくらいの大きさで問題ない。

「何があった? 妨害でもされたのか?」
「え? ああ、いえ、それは大丈夫です。今日一日は、不思議なくらい何もありませんでしたから」
「何もなかった?」
「ええ、これは単純に慣れない業務で疲れたというだけです」

 私の言葉に、ラベルグ様は驚いているようだった。
 彼は私が何かしら冷遇された結果、疲れていると思ったようだ。それは当然のことだといえるだろう。私も何かあるものだと、思っていたのだから。
 ただ今日一日は、本当に特に冷遇や嫌がらせというものは、なかったと思う。私が気付かなかっただけなのかもしれないが、少なくとも派手な動きはなかったといえる。

「聖女の業務というものは、思っていた以上に大変なものなのですね?」
「そういうものだと聞いている。ただ、ルナーラ様やルナメリア様よりも優秀なあなたが、疲れるものなのか?」
「慣れなどもあるのではありませんか?」
「あなたは不当に過度な業務を言い渡されたのかもしれない」
「それは……」

 ラベルグ様の言葉に、私は少し考えることになった。
 業務の量というものについては、特に気にしていなかった。聖女の仕事というものがどれ程のものなのか、私は詳しく知っている訳ではない。
 渡された資料は、ルネメリア様が残したものだと聞いている。ただ、それについては改ざんされている可能性もあるだろう。あれで信じてしまうのは、早計だったのかもしれない。

「ラベルグ様、今から私が今日一日のことをお話しますから、擦り合わせていただくことは可能ですか?」
「ああ、俺もそこまで詳しい訳ではないが、ルナメリア様や周囲の者達から聞いていない訳でもない。明らかに違えば、指摘することはできるだろう」
「それなら、よろしくお願いします」

 私は、ラベルグ様と自身の業務について照らし合わせてみることにした。
 それは必要なことだろう。私が把握していない王城側の策略などが、わかるかもしれない。
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