「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗

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11.問題ない業務

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 聖女の仕事は、様々だと聞いていた。王国の魔法に関係することなら、繋がってくる職務だ。それはわかっていた。
 とはいえ、今の私の職務は領分を越えてはいるのだろう。とにかく忙しく、休める暇がない。
 国を守るために結界を張ったり、水を浄化して飲めるようにしたり、晴れが続けば雨を降らせたり、病気や怪我があったら治療にあたったり、私は王都を右往左往している。というか、このままでは王都以外にも、赴くことになりそうだ。

「あなたの働きは、予想以上のものなのだろうな。王城の魔法使い達が長い時間をかけて行うことを、数時間で終わらせている」
「そうなのですか?」
「ああ、実際にこうして護衛となってよくわかった。あなたは天才だ」

 ラベルグ様は、私の護衛として活動することになった。
 それは、私から頼んだことではない。彼の方から提案したことである。どうやら騎士団は、それを認めてくれたようだ。

 そもそもの話、私に護衛なんて必要はない。大抵のことは、魔法でなんとかなるからだ。
 まず危険がない仕事、そういった点も考慮して、ラベルグ様の提案は受け入れられたのかもしれない。何も仕事をさせないというのも、問題ではあるだろうし。

 何にしても、私にとってそれはありがたいことだった。
 数少ない味方であるラベルグ様が、傍についてくれているならとりあえずは安心だ。

「だからこそ、王城の方も手出しすることはできずにいるのだろう。下手に嫌がらせでもしたら、自分達の業務が増えるだけだ」
「……それは、ニルーア様の思惑からは外れているのでしょうか?」
「実際に彼女と接しているのはあなただ。どう思うかは、あなたが判断するべきだろう」
「そうですね……」

 上司ということもあって、ニルーア様とは毎日顔を合わせている。
 最初の方は、激務で疲労する私を見て満足そうにしていたとは思う。ただ、最近はどうだろうか。結構、不満そうな表情をしている気がする。

「不満が溜まっていたように思います、ね……」
「なるほど、彼女は今のあなたに満足していないということか。何か失敗を望んでいると、考えた方が良いかもしれない。俺の護衛についても、快く思わなかったらしいからな」
「何かを仕掛けてくるかもしれませんね」
「外部からの物理的妨害は、俺が防ぐことはできる。魔法的な干渉などについては、どうなのだ?」
「問題ありません。その程度では、私は揺らぎませんから」

 物理的でも魔法でも、妨害に対する対策は万全だ。
 余程のことがなければ、大丈夫だとは思う。もちろん、油断は禁物ではあるが。
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