11 / 48
11.問題ない業務
しおりを挟む
聖女の仕事は、様々だと聞いていた。王国の魔法に関係することなら、繋がってくる職務だ。それはわかっていた。
とはいえ、今の私の職務は領分を越えてはいるのだろう。とにかく忙しく、休める暇がない。
国を守るために結界を張ったり、水を浄化して飲めるようにしたり、晴れが続けば雨を降らせたり、病気や怪我があったら治療にあたったり、私は王都を右往左往している。というか、このままでは王都以外にも、赴くことになりそうだ。
「あなたの働きは、予想以上のものなのだろうな。王城の魔法使い達が長い時間をかけて行うことを、数時間で終わらせている」
「そうなのですか?」
「ああ、実際にこうして護衛となってよくわかった。あなたは天才だ」
ラベルグ様は、私の護衛として活動することになった。
それは、私から頼んだことではない。彼の方から提案したことである。どうやら騎士団は、それを認めてくれたようだ。
そもそもの話、私に護衛なんて必要はない。大抵のことは、魔法でなんとかなるからだ。
まず危険がない仕事、そういった点も考慮して、ラベルグ様の提案は受け入れられたのかもしれない。何も仕事をさせないというのも、問題ではあるだろうし。
何にしても、私にとってそれはありがたいことだった。
数少ない味方であるラベルグ様が、傍についてくれているならとりあえずは安心だ。
「だからこそ、王城の方も手出しすることはできずにいるのだろう。下手に嫌がらせでもしたら、自分達の業務が増えるだけだ」
「……それは、ニルーア様の思惑からは外れているのでしょうか?」
「実際に彼女と接しているのはあなただ。どう思うかは、あなたが判断するべきだろう」
「そうですね……」
上司ということもあって、ニルーア様とは毎日顔を合わせている。
最初の方は、激務で疲労する私を見て満足そうにしていたとは思う。ただ、最近はどうだろうか。結構、不満そうな表情をしている気がする。
「不満が溜まっていたように思います、ね……」
「なるほど、彼女は今のあなたに満足していないということか。何か失敗を望んでいると、考えた方が良いかもしれない。俺の護衛についても、快く思わなかったらしいからな」
「何かを仕掛けてくるかもしれませんね」
「外部からの物理的妨害は、俺が防ぐことはできる。魔法的な干渉などについては、どうなのだ?」
「問題ありません。その程度では、私は揺らぎませんから」
物理的でも魔法でも、妨害に対する対策は万全だ。
余程のことがなければ、大丈夫だとは思う。もちろん、油断は禁物ではあるが。
とはいえ、今の私の職務は領分を越えてはいるのだろう。とにかく忙しく、休める暇がない。
国を守るために結界を張ったり、水を浄化して飲めるようにしたり、晴れが続けば雨を降らせたり、病気や怪我があったら治療にあたったり、私は王都を右往左往している。というか、このままでは王都以外にも、赴くことになりそうだ。
「あなたの働きは、予想以上のものなのだろうな。王城の魔法使い達が長い時間をかけて行うことを、数時間で終わらせている」
「そうなのですか?」
「ああ、実際にこうして護衛となってよくわかった。あなたは天才だ」
ラベルグ様は、私の護衛として活動することになった。
それは、私から頼んだことではない。彼の方から提案したことである。どうやら騎士団は、それを認めてくれたようだ。
そもそもの話、私に護衛なんて必要はない。大抵のことは、魔法でなんとかなるからだ。
まず危険がない仕事、そういった点も考慮して、ラベルグ様の提案は受け入れられたのかもしれない。何も仕事をさせないというのも、問題ではあるだろうし。
何にしても、私にとってそれはありがたいことだった。
数少ない味方であるラベルグ様が、傍についてくれているならとりあえずは安心だ。
「だからこそ、王城の方も手出しすることはできずにいるのだろう。下手に嫌がらせでもしたら、自分達の業務が増えるだけだ」
「……それは、ニルーア様の思惑からは外れているのでしょうか?」
「実際に彼女と接しているのはあなただ。どう思うかは、あなたが判断するべきだろう」
「そうですね……」
上司ということもあって、ニルーア様とは毎日顔を合わせている。
最初の方は、激務で疲労する私を見て満足そうにしていたとは思う。ただ、最近はどうだろうか。結構、不満そうな表情をしている気がする。
「不満が溜まっていたように思います、ね……」
「なるほど、彼女は今のあなたに満足していないということか。何か失敗を望んでいると、考えた方が良いかもしれない。俺の護衛についても、快く思わなかったらしいからな」
「何かを仕掛けてくるかもしれませんね」
「外部からの物理的妨害は、俺が防ぐことはできる。魔法的な干渉などについては、どうなのだ?」
「問題ありません。その程度では、私は揺らぎませんから」
物理的でも魔法でも、妨害に対する対策は万全だ。
余程のことがなければ、大丈夫だとは思う。もちろん、油断は禁物ではあるが。
441
あなたにおすすめの小説
聖女の妹、『灰色女』の私
ルーシャオ
恋愛
オールヴァン公爵家令嬢かつ聖女アリシアを妹に持つ『私』は、魔力を持たない『灰色女(グレイッシュ)』として蔑まれていた。醜聞を避けるため仕方なく出席した妹の就任式から早々に帰宅しようとしたところ、道に座り込む老婆を見つける。その老婆は同じ『灰色女』であり、『私』の運命を変える呪文をつぶやいた。
『私』は次第にマナの流れが見えるようになり、知らなかったことをどんどんと知っていく。そして、聖女へ、オールヴァン公爵家へ、この国へ、差別する人々へ——復讐を決意した。
一方で、なぜか縁談の来なかった『私』と結婚したいという王城騎士団副団長アイメルが現れる。拒否できない結婚だと思っていたが、妙にアイメルは親身になってくれる。一体なぜ?
追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜
三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。
「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」
ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。
「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」
メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。
そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。
「頑張りますね、魔王さま!」
「……」(かわいい……)
一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。
「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」
国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……?
即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。
※小説家になろうさんにも掲載
捨てられた元聖女ですが、なぜか蘇生聖術【リザレクション】が使えます ~婚約破棄のち追放のち力を奪われ『愚醜王』に嫁がされましたが幸せです~
鏑木カヅキ
恋愛
十年ものあいだ人々を癒し続けていた聖女シリカは、ある日、婚約者のユリアン第一王子から婚約破棄を告げられる。さらには信頼していた枢機卿バルトルトに裏切られ、伯爵令嬢ドーリスに聖女の力と王子との婚約さえ奪われてしまう。
元聖女となったシリカは、バルトルトたちの謀略により、貧困国ロンダリアの『愚醜王ヴィルヘルム』のもとへと強制的に嫁ぐことになってしまう。無知蒙昧で不遜、それだけでなく容姿も醜いと噂の王である。
そんな不幸な境遇でありながらも彼女は前向きだった。
「陛下と国家に尽くします!」
シリカの行動により国民も国も、そして王ヴィルヘルムでさえも変わっていく。
そしてある事件を機に、シリカは奪われたはずの聖女の力に再び目覚める。失われたはずの蘇生聖術『リザレクション』を使ったことで、国情は一変。ロンダリアでは新たな聖女体制が敷かれ、国家再興の兆しを見せていた。
一方、聖女ドーリスの力がシリカに遠く及ばないことが判明する中、シリカの噂を聞きつけた枢機卿バルトルトは、シリカに帰還を要請してくる。しかし、すでに何もかもが手遅れだった。
婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。
三葉 空
恋愛
ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……
出来損ないと言われて、国を追い出されました。魔物避けの効果も失われるので、魔物が押し寄せてきますが、頑張って倒してくださいね
猿喰 森繁
恋愛
「婚約破棄だ!」
広間に高らかに響く声。
私の婚約者であり、この国の王子である。
「そうですか」
「貴様は、魔法の一つもろくに使えないと聞く。そんな出来損ないは、俺にふさわしくない」
「… … …」
「よって、婚約は破棄だ!」
私は、周りを見渡す。
私を見下し、気持ち悪そうに見ているもの、冷ややかな笑いを浮かべているもの、私を守ってくれそうな人は、いないようだ。
「王様も同じ意見ということで、よろしいでしょうか?」
私のその言葉に王は言葉を返すでもなく、ただ一つ頷いた。それを確認して、私はため息をついた。たしかに私は魔法を使えない。魔力というものを持っていないからだ。
なにやら勘違いしているようだが、聖女は魔法なんて使えませんよ。
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
孤島送りになった聖女は、新生活を楽しみます
天宮有
恋愛
聖女の私ミレッサは、アールド国を聖女の力で平和にしていた。
それなのに国王は、平和なのは私が人々を生贄に力をつけているからと罪を捏造する。
公爵令嬢リノスを新しい聖女にしたいようで、私は孤島送りとなってしまう。
島から出られない呪いを受けてから、転移魔法で私は孤島に飛ばさていた。
その後――孤島で新しい生活を楽しんでいると、アールド国の惨状を知る。
私の罪が捏造だと判明して国王は苦しんでいるようだけど、戻る気はなかった。
無能だと言われ続けた聖女は、自らを封印することにしました
天宮有
恋愛
国を守る聖女として城に住んでいた私フィーレは、元平民ということもあり蔑まれていた。
伝統だから城に置いているだけだと、国が平和になったことで国王や王子は私の存在が不愉快らしい。
無能だと何度も言われ続けて……私は本当に不必要なのではないかと思い始める。
そうだ――自らを封印することで、数年ぐらい眠ろう。
無能と蔑まれ、不必要と言われた私は私を封印すると、国に異変が起きようとしていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる