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29.王位を巡って(モブside)
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ディオート王国の玉座の間には、王族達が集まっていた。
ディオート王とその息子二人は、訪ねて来た姪またはいとこのことを、鋭い視線で睨みつけている。
「ルナーラ、私はお前が今何を言ったかわからない」
「王位を渡せと言っているのです」
ドルメア公爵家の令嬢ルナーラは、伯父である王に対して睨み返していた。
彼女の要求は端的だった。王に退位してもらい、自分が新たなる王になる。それを三人に伝えたのだ。
当然のことながら、良い顔はされなかった。彼女には王位の継承権はあるが、優先順位は低い。故に特に、次期国王筆頭である第一王子ダルケンは表情を歪めていた。
「ルナーラ、急に訪ねて来たと思ったらどういうつもりだ? 王位を渡せなんて、甚だ無礼なものだな?」
「この国が揺れていることは、ご存知でしょう? それをあなた達は未だに解決することができていない。あなた方にはこの国の支配者としての能力が欠けている」
「なんだと?」
ルナーラにとって、伯父を始めとした王族は忌むべきものであった。
彼らは、ニルーアと変わらない性格をしている。他者を省みず、自分達の欲望のままに生きる王族にルナーラは深く失望していた。
「ふざけたことを抜かす。そのことについては、ニルーアが既に対処にあたっている。準備は万全だ……そもそも、お前ならこの状況をなんとかできるのか?」
「ドルメア公爵家は、民からも慕われています」
「それがなんだというのだ!」
「あなた達とは違うということですよ」
妾との間に子供を作ったとはいえ、ルナーラは自らの父親を貴族としては尊敬していた。彼は民のことを思う、この国おいては珍しい貴族であったからだ。
民あっての自分達である。ルナーラは父親から常にそのことを言い聞かされていた。その意識はここにいる三人にはない。彼らは自らが選ばれし者だと思い込んでいるのだ。
「はははっ! 愚かな叔父上のことを尊敬しているのか? あんなのは貴族として、低俗だということをわかっていないらしい」
「ドルガスの言う通りだ。民などというものは、利用するべきものだ。尊重なんてする必要はない。代わりなどはいくらでもいるのだからな。民というものはすぐに湧き出て来る」
「兄上の言う通りだ。それをお前もお前の父親もわかっていない。今回のことだってそうだ。騒いでいる民なんて、黙らせてしまえばいい。そうだな。僕がトップを務める騎士団に切り裂かせよう。それで騒ぎなんてものは収まるさ」
第二王子であるドルガスは兄とともに笑みを浮かべていた。
彼はそのままルナーラの方に近づき、彼女に対してその顔を近づける。それはルナーラにとって、とても不愉快なものだった。
「いいか、お前は屑だ。次期国王なんてあり得ない。精々、僕達のために尽くせばいいのさ。そうだなぁ、頭を垂れたら、僕がお前を貰ってやってもいい。ドルメア公爵家は僕が貰い受けよう。精々可愛がってやるよ」」
「……話になりませんね」
「え? あつっ――」
下卑たことを言ったドルガスの上半身は、突如炎に包まれた。
その炎はどんどんと燃え広がり、ドルガスの全身を包み込む。しかし、何故かそれ以上は燃え移らない。炎はドルガスだけを的確に燃やしていたのだ。
ディオート王とその息子二人は、訪ねて来た姪またはいとこのことを、鋭い視線で睨みつけている。
「ルナーラ、私はお前が今何を言ったかわからない」
「王位を渡せと言っているのです」
ドルメア公爵家の令嬢ルナーラは、伯父である王に対して睨み返していた。
彼女の要求は端的だった。王に退位してもらい、自分が新たなる王になる。それを三人に伝えたのだ。
当然のことながら、良い顔はされなかった。彼女には王位の継承権はあるが、優先順位は低い。故に特に、次期国王筆頭である第一王子ダルケンは表情を歪めていた。
「ルナーラ、急に訪ねて来たと思ったらどういうつもりだ? 王位を渡せなんて、甚だ無礼なものだな?」
「この国が揺れていることは、ご存知でしょう? それをあなた達は未だに解決することができていない。あなた方にはこの国の支配者としての能力が欠けている」
「なんだと?」
ルナーラにとって、伯父を始めとした王族は忌むべきものであった。
彼らは、ニルーアと変わらない性格をしている。他者を省みず、自分達の欲望のままに生きる王族にルナーラは深く失望していた。
「ふざけたことを抜かす。そのことについては、ニルーアが既に対処にあたっている。準備は万全だ……そもそも、お前ならこの状況をなんとかできるのか?」
「ドルメア公爵家は、民からも慕われています」
「それがなんだというのだ!」
「あなた達とは違うということですよ」
妾との間に子供を作ったとはいえ、ルナーラは自らの父親を貴族としては尊敬していた。彼は民のことを思う、この国おいては珍しい貴族であったからだ。
民あっての自分達である。ルナーラは父親から常にそのことを言い聞かされていた。その意識はここにいる三人にはない。彼らは自らが選ばれし者だと思い込んでいるのだ。
「はははっ! 愚かな叔父上のことを尊敬しているのか? あんなのは貴族として、低俗だということをわかっていないらしい」
「ドルガスの言う通りだ。民などというものは、利用するべきものだ。尊重なんてする必要はない。代わりなどはいくらでもいるのだからな。民というものはすぐに湧き出て来る」
「兄上の言う通りだ。それをお前もお前の父親もわかっていない。今回のことだってそうだ。騒いでいる民なんて、黙らせてしまえばいい。そうだな。僕がトップを務める騎士団に切り裂かせよう。それで騒ぎなんてものは収まるさ」
第二王子であるドルガスは兄とともに笑みを浮かべていた。
彼はそのままルナーラの方に近づき、彼女に対してその顔を近づける。それはルナーラにとって、とても不愉快なものだった。
「いいか、お前は屑だ。次期国王なんてあり得ない。精々、僕達のために尽くせばいいのさ。そうだなぁ、頭を垂れたら、僕がお前を貰ってやってもいい。ドルメア公爵家は僕が貰い受けよう。精々可愛がってやるよ」」
「……話になりませんね」
「え? あつっ――」
下卑たことを言ったドルガスの上半身は、突如炎に包まれた。
その炎はどんどんと燃え広がり、ドルガスの全身を包み込む。しかし、何故かそれ以上は燃え移らない。炎はドルガスだけを的確に燃やしていたのだ。
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