「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗

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46.玉座の間にて

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「ふふっ……」

 私とラベルグ様の前で玉座に座る女性は、笑みを浮かべていた。
 それはなんというか、堪え切れなかったという反応だ。そう考えると、一応公的な場ということもあって気を張っていたのかもしれない。
 しかしそれは、先程この玉座の間から摘まみ出された二人の令嬢によって、無残にも崩れ去ったようである。それは私としては、結構心外だ。

「ルナーラ様、笑わないでください。私にとっては、結構深刻な問題なのですから」
「ごめんなさい。でも、あなたとあの二人のやり取りがおかしくって……」

 ルナーラ様とルナメリア様によって、王城は敢えなく陥落したそうである。
 その後色々と手を施して、ルナーラ様は新たなる王に就任した。

 彼女の王位継承については、平民には概ね好意的に受け取られている。ドルメア公爵家は、平民の間でも評判だったのだ。
 貴族の間でも、特に反対意見は出ていないそうである。それは、ルナーラ様が真っ当な王位継承権を持っていたからだろうか。はたまた、何か彼女が仕掛けていたということだろうか。それは私達には、よくわからない。

「人とは変わるものなのですね……特にロロアナの変化には驚いています。まさかそんなことになっているとは思いもしませんでした」
「……悪いことではないのですけれど」
「私も、多少なりとも考えを改める必要があるのかもしれませんね。彼女のように自省できる人がいるというなら、その流れに任せてみるのも良いでしょうか」
「どうでしょうかね……」

 ルナーラ様は、いつになく嬉しそうにしていた。
 心の底から国に失望していた彼女にとって、ロロアナ嬢のような変化が起きたことは、相当に嬉しいことなのだろう。
 ルナーラ様も色々と苦労しているので、彼女が喜んでいることは私も嬉しい。でも、笑ったのはひどいと思う。私も色々と苦労しているのだから。

「すみませんでした。でもお姉様なんて……フェルーナの方が、年下でしたよね?」
「それについては、私も困っているんです。あ、そうだ。ラベルグ様が、自分も兄だけどルナーラ様には敬意を抱いていると言っていました」
「ああ、少しわかりました。本当に笑ってすみませんでしたね」
「……ルナーラ様、色々と語弊があると思うのですが」

 私がラベルグ様のことを出すと、ルナーラ様の表情が変わった。
 彼女も、兄から下手に出られるという状態には困っている。私とは事情が少々異なるものの、似通っている部分があると思ったのだろう。
 そんな風に、玉座の間は和やかな雰囲気だった。それは良いことではあるだろう。色々とごたごたがあったが、今の所この国は平和なのである。
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