「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗

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47.彼女からの提案

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「さてと、もう少し二人と楽しい会話をしていたい所ですけれど、そろそろ本題に入らなければなりませんね」

 ルナーラ様は、そう言ってため息をついた。
 王位を継承してから、彼女は当然忙しくしている。そんな中で、和やかに話せる時間というものは貴重なのかもしれない。
 とはいえ、これに関しては仕方ないことだといえるだろう。今この国は、変革の時を迎えている。気を張らなければならない時期だ。

「まずフェルーナに頼みたいことがあります。あなたには聖女になってもらいたいのです」
「聖女、ですか……」
「ええ、この国で聖女が務まるとしたら、私かあなたくらいでしょう。今は私がなんとかその業務を担っていますが、正直な所辛いのです。あなたに手伝ってもらいたい」
「……ルナーラ様がそう仰るのなら」

 私は、ルナーラ様からの提案を受け入れることにした。
 彼女の元でなら、働いても良いと思っている。王城で働く魔法使い達は、結構味方になっていることだし、以前のようにはならないだろう。
 心配なのは、その魔法使い達とどう接するかだが、これは贅沢な悩みというものだ。慕ってくれているのだし――いや、やはり少し困るというのが正直な所なのだが。

「あなたに受け入れてもらえて、本当に安心しています」
「まあ、ルナーラ様にとっては大変な日々でしたでしょうしね……でも、大丈夫です。これから私が聖女として頑張りますから」
「それもあるのですけれど、他にも色々と都合が良いことがあって……まあ、それについては受けてもらわなくてもなんとかはしましたが」
「えっと……」

 ルナーラ様は、ゆっくりとため息をついた。
 その安心しきった顔は、なんというか既に話が終わったかのようである。
 だけど、ラベルグ様にも言うべきことはあるはずだ。状況から考えると、それは絶対に。

「ラベルグお兄様には、ドルメア公爵家を継いでもらいます。元々そういう話でしたよね。それは、お兄様も受け入れていたはずです」
「……仕方ありませんか」

 ルナーラ様とラベルグ様のやり取りは、非常に短いものだった。
 どうやら、こうなることは事前に取り決められていたことであるらしい。
 それはきっと、私と出会う前から決められていたことなのだろう。だからルナーラ様は安心していたのだ。ラベルグ様が、約束を違えることはないと思っていたのだろう。

「それからお兄様とフェルーナには婚約していただきたいのですけれど、構いませんか?」
「……うん?」
「え?」

 先程までとは変わらない調子で言葉を発するルナーラ様に、私とラベルグ様は顔を見合わせることになった。
 その言葉が、すぐには受け止め切れない。一体ルナーラ様は、何を言っているのだろうか。私達は困惑するのだった。
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