身分違いの恋に燃えていると婚約破棄したではありませんか。没落したから助けて欲しいなんて言わないでください。

木山楽斗

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39.悪手ばかり

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 私の目の前には、ボロボロの服を着た薄汚れた男がいる。
 その人物は、ランドラ・アルガール。私の元婚約者であり、没落した侯爵である。

「……お願いだ。助けてくれ」

 私が彼の対面に座ってから、彼はゆっくりとそう呟いた。
 彼は真剣な顔をしている。今までは見たことがない表情だ。それだけ、今回の出来事が彼に影響を与えたということなのだろう。

「……もう一度成り上るために、金を借りたんだ」
「……なんですって?」
「危ない所から、金を借りたんだよ。返さないと……大変なことになる」
 
 ランドラ様の言葉に、私は何も言い返せなくなってしまう。
 危ない所からお金を借りる。それは言うまでもなく愚行だ。

「借金があるんだよ……返さないと何をされるかわからない」
「……そうでしょうね」
「頼む、助けてくれ……このままでは、僕は死ぬかもしれない」

 ランドラ様は、私に必死に頼んできた。
 それを見ていると、助けたいという気持ちが少しだけ湧いてくる。
 だが、まだ判断することはできない。彼には、色々と聞きたいことがある。その状況に陥るまでに、一体何があったのだろうか。

「奥様……ルーフィアさんは、どうされたのですか?」
「……彼女は、田舎に帰ったよ。僕がもう一度成り上ると言った時、彼女は反対したんだ。一緒に田舎に帰ろうと言ってきた」
「……それをどうして受け入れなかったのですか?」
「僕は、貴族だ。平民の生活なんて耐えられない」
「……」

 ランドラ様の発言に、私は呆れていた。
 彼は、身分違いの恋に燃えていると私と婚約破棄した。そんな彼が平民の暮らしが耐えらないなんて口にするなんて、どういう了見であるのだろうか。呆れ過ぎて言葉も出ない。
 ルーフィアと一緒に田舎で平和に暮らす選択をすることを選んだのなら、どれだけ良かっただろうか。それなら、私もまだ彼を許せたかもしれないのに。

「だが、今度こそやり直す。僕は生まれ変わるんだ。生まれ変わればきっと彼女も受け入れてくれる。三人で暮らせるんだ」
「三人?」
「あ、ああ……子供ができたんだ」
「……なんですって?」

 先程からランドラ様の言葉には驚かされてばかりだ。
 まさか、二人の間に既に子供ができていたなんて思っていなかった。それでこの選択をしているなんて信じられない。
 どうやら、彼は私が思っていた以上に愚行を重ねていたようである。今は反省をして生まれ変わると言っているが、それも信用できない。
 少しだけ湧いていた同情心も、既に消えてしまっている。最早、彼を助けようという気持ちは私の中には残っていない。つまり、結論が出たのである。
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