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10.刷り込みで母親に?⑥
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「所で、その子は触っても平気なの?」
「え? あ、どうかな?」
そこで、ミルーシャが私に近づいてきた。目的は、この子だ。多分、触ってみたいのだろう。
好奇心もあるとは思うが、ミルーシャは小動物が結構好きだ。単純に、可愛いこの子と触れ合いたいのだろう。
「ピィ……」
「うっ……なんだか、不安そうね」
「うん、多分、まだ慣れていないからかな?」
ミルーシャの言う通り、この子は明らかに不安そうにしていた。まだ触れ合うのは、無理そうである。
もしかして、私が先程声を荒げてしまったので、二人のことを警戒しているのだろうか。これは、二人に対して悪いことをしてしまったかもしれない。
「まあ、お母さんがあんな感じだったからね。しばらく、仲良く話していれば、私みたいになるんじゃない?」
「うん? お母さん?」
「あ、うん。推測なんだけど、この子は私のことを親だと思っているみたいで……実は、この子が卵からかえる時に丁度居合わせたんだ。それで、刷り込みか何かが起こったんじゃないかって……」
「へえ……」
私の説明に、ミルーシャは口の端を歪めた。なんだか、愉快そうにしている。
「フェリナ、その年でもうお母さんなんだ」
「なっ……」
「姉さん、そういう含みのある言い方はよくないよ」
「別に、何も含んでなんかないけど?」
ミルーシャは、にやにやとしていた。私をからかえると思っているのだろう。その表情に、それが現れている。
「ピィ……」
「え?」
「あっ……」
そんなミルーシャに対して、私の胸に抱かれている竜かもしれない子が声をあげた。
それは、今までとは少し違う声だ。唸っているというか、明らかに威嚇しているような声なのである。
「な、なんだか、怒っているわね……」
「姉さんが、フェリナさんを虐めるから、お母さんを守ろうとしているんじゃないかな?」
「べ、別に虐めるつもりなんて、ないんだけど……」
「この子から見たら、そういうことになるんじゃないかな?」
メルラムの言う通り、この子はミルーシャを敵だと思っているのだろう。いや、彼女だけではない。恐らく、メルラムのこともそう思っているはずだ。
先程から、私達は色々と言い合っていた。その光景だけ見ていると、そう思うのも無理はないだろう。
だが、きちんとわかってもらわなければならない。二人が、私の友達であるということを。
「あのね……あなたは勘違いしているかもしれないけど、二人は敵じゃないよ」
「ピィ……」
「二人は、私の友達なの。ああいう風に言い合うのは、友情の証というか、そういうことなんだ」
「ピィ……」
「でも、私のために怒ってくれたんだよね? それは、ありがとう。怖がりだと思っていたけど、結構勇気があるんだね」
「ピィ……」
私は、小さな子の頭を撫でながら、ゆっくりと言い聞かせた。なんとなく、鳴き声だけでこの子が何を言っているかわかった。恐らく、あちらも同じなのではないだろうか。
私が言ったことは、理解してもらえている。不思議と、そう思えた。言葉が通じなくても、私達は通じ合えているような気がする。
「え? あ、どうかな?」
そこで、ミルーシャが私に近づいてきた。目的は、この子だ。多分、触ってみたいのだろう。
好奇心もあるとは思うが、ミルーシャは小動物が結構好きだ。単純に、可愛いこの子と触れ合いたいのだろう。
「ピィ……」
「うっ……なんだか、不安そうね」
「うん、多分、まだ慣れていないからかな?」
ミルーシャの言う通り、この子は明らかに不安そうにしていた。まだ触れ合うのは、無理そうである。
もしかして、私が先程声を荒げてしまったので、二人のことを警戒しているのだろうか。これは、二人に対して悪いことをしてしまったかもしれない。
「まあ、お母さんがあんな感じだったからね。しばらく、仲良く話していれば、私みたいになるんじゃない?」
「うん? お母さん?」
「あ、うん。推測なんだけど、この子は私のことを親だと思っているみたいで……実は、この子が卵からかえる時に丁度居合わせたんだ。それで、刷り込みか何かが起こったんじゃないかって……」
「へえ……」
私の説明に、ミルーシャは口の端を歪めた。なんだか、愉快そうにしている。
「フェリナ、その年でもうお母さんなんだ」
「なっ……」
「姉さん、そういう含みのある言い方はよくないよ」
「別に、何も含んでなんかないけど?」
ミルーシャは、にやにやとしていた。私をからかえると思っているのだろう。その表情に、それが現れている。
「ピィ……」
「え?」
「あっ……」
そんなミルーシャに対して、私の胸に抱かれている竜かもしれない子が声をあげた。
それは、今までとは少し違う声だ。唸っているというか、明らかに威嚇しているような声なのである。
「な、なんだか、怒っているわね……」
「姉さんが、フェリナさんを虐めるから、お母さんを守ろうとしているんじゃないかな?」
「べ、別に虐めるつもりなんて、ないんだけど……」
「この子から見たら、そういうことになるんじゃないかな?」
メルラムの言う通り、この子はミルーシャを敵だと思っているのだろう。いや、彼女だけではない。恐らく、メルラムのこともそう思っているはずだ。
先程から、私達は色々と言い合っていた。その光景だけ見ていると、そう思うのも無理はないだろう。
だが、きちんとわかってもらわなければならない。二人が、私の友達であるということを。
「あのね……あなたは勘違いしているかもしれないけど、二人は敵じゃないよ」
「ピィ……」
「二人は、私の友達なの。ああいう風に言い合うのは、友情の証というか、そういうことなんだ」
「ピィ……」
「でも、私のために怒ってくれたんだよね? それは、ありがとう。怖がりだと思っていたけど、結構勇気があるんだね」
「ピィ……」
私は、小さな子の頭を撫でながら、ゆっくりと言い聞かせた。なんとなく、鳴き声だけでこの子が何を言っているかわかった。恐らく、あちらも同じなのではないだろうか。
私が言ったことは、理解してもらえている。不思議と、そう思えた。言葉が通じなくても、私達は通じ合えているような気がする。
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