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1.取材の依頼
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取材を受けるのは、初めてという訳ではない。
だが、慣れているという程ではないので、私は少し緊張していた。
「え、えっと……きょ、今日はよろしくお願いします」
しかしながら、私の緊張は結果的にすぐ和らぐことになった。
目の前にいる記者が、私なんかよりも明らかに緊張していたからだ。
その様子に、私は苦笑いを浮かべてしまう。ただ、すぐに意識を切り替える。
「こちらこそよろしくお願いします。えっと、取材を申し出てきた方は男性だったと思いますが……」「あ、その、バーキントンさんは、体調不良を起こしてしまいまして……代わりに私が、取材に来た次第であります」
「体調不良?」
「こ、高齢ですから倒れてしまったみたいで……あ、申し訳ありません。これは、余計なことでしたね……」
「え、ええ……」
取材したいと言ってきた人が倒れたという事実に、私はとても驚いていた。
それは、本当に大丈夫なのだろうか。なんだか心配になってくる。
もっとも、それは取材をするなら私に言うべきではなかったことであるだろう。先程から彼女は少々迂闊だ。もしかして、新人さんなのだろうか。
「自己紹介がまだでしたね。私は、オルマナ・ヘレイナと申します」
「新人さんなのかしら?」
「あ、はい……実は、そうなんです。先月入社したばかりで。本来なら取材にあたることはないんですが、今日は少し事情があったので……」
「そ、そうなのね……」
オルマナの説明によって、彼女の態度とどうしてこんな所に立たされているのかを理解した。
上司が倒れて、その穴を埋めるためにここに来させられた。それは、なんとも同情できる状況である。
普通に考えれば、新人である彼女は先輩に同行させるなどするべきなのではないだろうか。彼女の様子に、私はそんなことを思っていた。
もちろん、取材対象である私がそんな事情を考慮する必要はないのだが、まだ右も左もわかっていない少女を虐める趣味は私にはない。
ここは、寛大な心を持つとしよう。もっとも、彼女の所属する会社は少々怪しい気もするので、今後付き合うのは控えるが。
「そ、それでですね。早速お話を聞かせていただきたいのですが……」
「ええ、構わないわよ。えっと、あなたはバーキントンさんの代理なのよね? ということは、彼が取材したいと言っていたことを引き継いでいるという認識でいいのかしら?」
「あ、はい。そうなんです。実は、アルシエラさんの半生を聞きたくて……」
「私の半生ね……何から聞きたいのかしら?」
「えっと、アルシエラさんが……貴族の令嬢だった時のことから」
オルマナの言葉に、私は少しだけ笑ってしまった。
私の半生、それは自分で言うのもなんだが、中々に壮絶なものである。それを話すのには、それなりに時間がかかりそうだ。
そんなことを思いながら、私はため息をついた。長い話になるため、力を溜める必要があったのだ。
そして私は話し始める。私の数奇な半生のことを。
だが、慣れているという程ではないので、私は少し緊張していた。
「え、えっと……きょ、今日はよろしくお願いします」
しかしながら、私の緊張は結果的にすぐ和らぐことになった。
目の前にいる記者が、私なんかよりも明らかに緊張していたからだ。
その様子に、私は苦笑いを浮かべてしまう。ただ、すぐに意識を切り替える。
「こちらこそよろしくお願いします。えっと、取材を申し出てきた方は男性だったと思いますが……」「あ、その、バーキントンさんは、体調不良を起こしてしまいまして……代わりに私が、取材に来た次第であります」
「体調不良?」
「こ、高齢ですから倒れてしまったみたいで……あ、申し訳ありません。これは、余計なことでしたね……」
「え、ええ……」
取材したいと言ってきた人が倒れたという事実に、私はとても驚いていた。
それは、本当に大丈夫なのだろうか。なんだか心配になってくる。
もっとも、それは取材をするなら私に言うべきではなかったことであるだろう。先程から彼女は少々迂闊だ。もしかして、新人さんなのだろうか。
「自己紹介がまだでしたね。私は、オルマナ・ヘレイナと申します」
「新人さんなのかしら?」
「あ、はい……実は、そうなんです。先月入社したばかりで。本来なら取材にあたることはないんですが、今日は少し事情があったので……」
「そ、そうなのね……」
オルマナの説明によって、彼女の態度とどうしてこんな所に立たされているのかを理解した。
上司が倒れて、その穴を埋めるためにここに来させられた。それは、なんとも同情できる状況である。
普通に考えれば、新人である彼女は先輩に同行させるなどするべきなのではないだろうか。彼女の様子に、私はそんなことを思っていた。
もちろん、取材対象である私がそんな事情を考慮する必要はないのだが、まだ右も左もわかっていない少女を虐める趣味は私にはない。
ここは、寛大な心を持つとしよう。もっとも、彼女の所属する会社は少々怪しい気もするので、今後付き合うのは控えるが。
「そ、それでですね。早速お話を聞かせていただきたいのですが……」
「ええ、構わないわよ。えっと、あなたはバーキントンさんの代理なのよね? ということは、彼が取材したいと言っていたことを引き継いでいるという認識でいいのかしら?」
「あ、はい。そうなんです。実は、アルシエラさんの半生を聞きたくて……」
「私の半生ね……何から聞きたいのかしら?」
「えっと、アルシエラさんが……貴族の令嬢だった時のことから」
オルマナの言葉に、私は少しだけ笑ってしまった。
私の半生、それは自分で言うのもなんだが、中々に壮絶なものである。それを話すのには、それなりに時間がかかりそうだ。
そんなことを思いながら、私はため息をついた。長い話になるため、力を溜める必要があったのだ。
そして私は話し始める。私の数奇な半生のことを。
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