自発的に失踪していた夫が、三年振りに戻ってきました。「もう一度やり直したい?」そんな都合のいいことがよく言えますね。

木山楽斗

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4.親族の訪問

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 私の元にセレント公爵家の親族が来たのは、フライグ様が失踪してから三日後のことだった。
 三日間、私は色々と忙しくしていた。様々な人への連絡や警察への対応など、やることが多かったのだ。
 しかし、休んでいる暇はない。やって来た親族の方々の対応をしなければならないのだ。

「お初にお目にかかります。僕は、フライグ兄上の弟マディードといいます」
「初めまして、エファーナです」

 私は、マディード様とそんなやり取りを交わした。
 彼の第一印象は、優しそうな好青年といった感じだ。
 その評価は、そこまで間違っていなかったように思える。実際に、彼は優しい人物だったからだ。

「まさか、あなたとこのような形で会うことになるなんて、思ってもいませんでした……兄上から話は聞いていましたが、随分とお若い方なのですね」
「はい……フライグ様とは、それなりに年齢が離れていますね」
「そんな人を置いて、兄上は出て行った訳ですか……はあ、まったく、なんて人だ」

 マディード様は、フライグ様に呆れていた。
 結婚して早々、彼は逃げ出した。それに対して、そういう反応になるのは当たり前のことだろう。
 身内であっても、それは許せないことであるはずだ。いや、身内だからこそ、余計にそうなのだろうか。

「本当に申し訳ありません。セレント公爵家を代表して、謝罪します」
「い、いえ……」

 マディード様は、私にゆっくりと頭を下げてきた。
 もちろん、その謝罪の意味は、私もわかっていた。身内の不祥事に対して、謝罪するというのは自然な流れである。

「頭を上げてください、マディード様」

 だが、目の前で頭を下げる彼に対して、私は頭を上げて欲しいと思った。
 そんなことをされても、私の気持ちは晴れない。そう感じたからだ。

 結局の所、私はフライグ様の行いによって迷惑をかけられた訳である。
 それに対して、他の誰かに謝罪されても、なんだか逆にこちらが申し訳なるだけなのだ。

 きっと、本人以外の謝罪に意味はないのだろう。
 もっとも、仮に本人に謝罪されたとしても許せるかどうかは、別の問題であるのだが。

「今は、謝罪よりも話すべきことがあるはずです。先に、そちらを話し合いましょう」
「……わかりました」

 私の言葉に、マディード様はゆっくりと頷いた。
 言っている通り、今は謝罪よりももっと優先しなければならないことがある。

 フレイグ様がいなくなった。その影響は、かなり大きい。
 これからどうするのか。それは、とても重要なことであるはずだ。
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