4 / 26
4.親族の訪問
しおりを挟む
私の元にセレント公爵家の親族が来たのは、フライグ様が失踪してから三日後のことだった。
三日間、私は色々と忙しくしていた。様々な人への連絡や警察への対応など、やることが多かったのだ。
しかし、休んでいる暇はない。やって来た親族の方々の対応をしなければならないのだ。
「お初にお目にかかります。僕は、フライグ兄上の弟マディードといいます」
「初めまして、エファーナです」
私は、マディード様とそんなやり取りを交わした。
彼の第一印象は、優しそうな好青年といった感じだ。
その評価は、そこまで間違っていなかったように思える。実際に、彼は優しい人物だったからだ。
「まさか、あなたとこのような形で会うことになるなんて、思ってもいませんでした……兄上から話は聞いていましたが、随分とお若い方なのですね」
「はい……フライグ様とは、それなりに年齢が離れていますね」
「そんな人を置いて、兄上は出て行った訳ですか……はあ、まったく、なんて人だ」
マディード様は、フライグ様に呆れていた。
結婚して早々、彼は逃げ出した。それに対して、そういう反応になるのは当たり前のことだろう。
身内であっても、それは許せないことであるはずだ。いや、身内だからこそ、余計にそうなのだろうか。
「本当に申し訳ありません。セレント公爵家を代表して、謝罪します」
「い、いえ……」
マディード様は、私にゆっくりと頭を下げてきた。
もちろん、その謝罪の意味は、私もわかっていた。身内の不祥事に対して、謝罪するというのは自然な流れである。
「頭を上げてください、マディード様」
だが、目の前で頭を下げる彼に対して、私は頭を上げて欲しいと思った。
そんなことをされても、私の気持ちは晴れない。そう感じたからだ。
結局の所、私はフライグ様の行いによって迷惑をかけられた訳である。
それに対して、他の誰かに謝罪されても、なんだか逆にこちらが申し訳なるだけなのだ。
きっと、本人以外の謝罪に意味はないのだろう。
もっとも、仮に本人に謝罪されたとしても許せるかどうかは、別の問題であるのだが。
「今は、謝罪よりも話すべきことがあるはずです。先に、そちらを話し合いましょう」
「……わかりました」
私の言葉に、マディード様はゆっくりと頷いた。
言っている通り、今は謝罪よりももっと優先しなければならないことがある。
フレイグ様がいなくなった。その影響は、かなり大きい。
これからどうするのか。それは、とても重要なことであるはずだ。
三日間、私は色々と忙しくしていた。様々な人への連絡や警察への対応など、やることが多かったのだ。
しかし、休んでいる暇はない。やって来た親族の方々の対応をしなければならないのだ。
「お初にお目にかかります。僕は、フライグ兄上の弟マディードといいます」
「初めまして、エファーナです」
私は、マディード様とそんなやり取りを交わした。
彼の第一印象は、優しそうな好青年といった感じだ。
その評価は、そこまで間違っていなかったように思える。実際に、彼は優しい人物だったからだ。
「まさか、あなたとこのような形で会うことになるなんて、思ってもいませんでした……兄上から話は聞いていましたが、随分とお若い方なのですね」
「はい……フライグ様とは、それなりに年齢が離れていますね」
「そんな人を置いて、兄上は出て行った訳ですか……はあ、まったく、なんて人だ」
マディード様は、フライグ様に呆れていた。
結婚して早々、彼は逃げ出した。それに対して、そういう反応になるのは当たり前のことだろう。
身内であっても、それは許せないことであるはずだ。いや、身内だからこそ、余計にそうなのだろうか。
「本当に申し訳ありません。セレント公爵家を代表して、謝罪します」
「い、いえ……」
マディード様は、私にゆっくりと頭を下げてきた。
もちろん、その謝罪の意味は、私もわかっていた。身内の不祥事に対して、謝罪するというのは自然な流れである。
「頭を上げてください、マディード様」
だが、目の前で頭を下げる彼に対して、私は頭を上げて欲しいと思った。
そんなことをされても、私の気持ちは晴れない。そう感じたからだ。
結局の所、私はフライグ様の行いによって迷惑をかけられた訳である。
それに対して、他の誰かに謝罪されても、なんだか逆にこちらが申し訳なるだけなのだ。
きっと、本人以外の謝罪に意味はないのだろう。
もっとも、仮に本人に謝罪されたとしても許せるかどうかは、別の問題であるのだが。
「今は、謝罪よりも話すべきことがあるはずです。先に、そちらを話し合いましょう」
「……わかりました」
私の言葉に、マディード様はゆっくりと頷いた。
言っている通り、今は謝罪よりももっと優先しなければならないことがある。
フレイグ様がいなくなった。その影響は、かなり大きい。
これからどうするのか。それは、とても重要なことであるはずだ。
7
あなたにおすすめの小説
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
【完結】【番外編追加】お迎えに来てくれた当日にいなくなったお姉様の代わりに嫁ぎます!
まりぃべる
恋愛
私、アリーシャ。
お姉様は、隣国の大国に輿入れ予定でした。
それは、二年前から決まり、準備を着々としてきた。
和平の象徴として、その意味を理解されていたと思っていたのに。
『私、レナードと生活するわ。あとはお願いね!』
そんな置き手紙だけを残して、姉は消えた。
そんな…!
☆★
書き終わってますので、随時更新していきます。全35話です。
国の名前など、有名な名前(単語)だったと後から気付いたのですが、素敵な響きですのでそのまま使います。現実世界とは全く関係ありません。いつも思いつきで名前を決めてしまいますので…。
読んでいただけたら嬉しいです。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~
Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。
だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと──
公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、
幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。
二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。
しかし、リリーベル十歳の誕生日。
嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、
リリーベルを取り巻く環境は一変する。
リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。
そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。
唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。
そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう……
そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は───
※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』
こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。
めちゃくちゃチートを発揮しています……
【完結】義母が来てからの虐げられた生活から抜け出したいけれど…
まりぃべる
恋愛
私はエミーリエ。
お母様が四歳の頃に亡くなって、それまでは幸せでしたのに、人生が酷くつまらなくなりました。
なぜって?
お母様が亡くなってすぐに、お父様は再婚したのです。それは仕方のないことと分かります。けれど、義理の母や妹が、私に事ある毎に嫌味を言いにくるのですもの。
どんな方法でもいいから、こんな生活から抜け出したいと思うのですが、どうすればいいのか分かりません。
でも…。
☆★
全16話です。
書き終わっておりますので、随時更新していきます。
読んで下さると嬉しいです。
義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!
ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。
貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。
実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。
嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。
そして告げられたのは。
「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」
理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。
…はずだったが。
「やった!自由だ!」
夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。
これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが…
これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。
生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。
縁を切ったはずが…
「生活費を負担してちょうだい」
「可愛い妹の為でしょ?」
手のひらを返すのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる