甘やかされて育ってきた妹に、王妃なんて務まる訳がないではありませんか。

木山楽斗

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40.出会えた幸運

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 お父様が連行されたことによって、私は実質的にエルバラス侯爵家を手に入れられた。
 まだ不安はあるが、ここから情勢が覆ることはほぼないと考えていいだろう。つまり私の戦いは、ほぼ終わったのである。

「ナルギス、ありがとう。ここまで来られたのは、あなたのおかげだわ」
「いや、これ程のことを成し遂げられたのは、あなた自身の努力の賜物だ。俺は少しばかり助力したに過ぎない」
「いいえ、あなたがいなかったらきっと私は折れていたわ」

 ナルギスとの出会いは、私にとってとても幸運なものだった。
 彼がもしも私に協力してくれなかったら、きっとお父様に負けていただろう。ここまで成し遂げられたからこそ、私はそれを改めて実感していた。

「これからも、色々と大変なことはあるだろうけれど、それでもあなたと一緒なら乗り越えられるような気がするわ」
「そう言ってもらえると、俺としてもありがたい。俺はこれからも、あなたを守っていきたいとそう思っているからな」

 どこまでも真っ直ぐに、ナルギスは私のことを見つめてきていた。
 彼がこうして私について来てくれる理由は、知っている。しかしその辺りに関して、私は敢えてぼかしていた。
 我ながらそれは、卑怯なことだったと思う。私は彼に対して誠実ではなかったような気がする。

「改めて言っておくべきよね。ナルギス、あなたには私の夫になってもらいたいの」
「俺とあなたとの婚約は、これまで通りということか」
「いいえ、これまで通りという訳ではないわ」
「む? ああいや、それもそうか。エルバラス侯爵を失脚させた今、以前と同じという訳にはいかないか」

 ナルギスに対して、私は中々決定的な言葉を口にできなかった。
 彼がいとも簡単に言っていたことを、私はまったく言えなかった。それがとてももどかしい。

「ああそういえば、王城の方はどうなっているのだろうか?」
「え?」
「今回の件で力を貸してくれた第一王女にも、お礼を述べておかなければならないな。あなたのことを彼女は救ってくれた訳だろう?」
「まあ、それはそうなのだけれど……」

 私が手をこまねいている内に、ナルギスは別の話をし始めてしまった。
 それによって、私はタイミングを失った。話の流れを強引に戻せる程の勇気を、私は残念ながら持っていなかったのだ。

「こちらの報告も兼ねて、王城を訪ねるということでいいだろうか?」
「え、ええ、そうね。そうしておいた方がいいかしら」

 私はナルギスの言葉にゆっくりと頷いた。
 彼の言う通り、王城の様子は見に行く必要がある。
 私の想いを告げるのは、その後にするとしよう。私はとりあえずそう決めるのだった。
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