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57.待ち構えていた人
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「お二人とも、どうもこんにちは」
「……」
「……」
ウォンバルト公爵がいる客室から出てきた私とナルギスは、部屋の前で待ち構えていた人物に少し驚いた。
目の前にいるのは、先程公爵と話題にしたエバリス・エルビー公爵だ。よくわからないが、彼はここで私達のことを待っていたらしい。
「あなたは確か、エバリス様でしたよね? どうかされましたか?」
「いえいえ、ウォンバルト公爵の部屋に入るあなた達を見つけたので、少し心配になりましてね」
「心配?」
「あなた方は、王女イムティアの一派でしょう。彼女はウォンバルト公爵と敵対している。そんな人がいる所に一派のあなた達が入っていたら、心配にもなるでしょう」
エバリス様は、私達に対してそんなことを言ってきた。
それが本心であるのかどうかはわからない。私達を惑わすために、こんなことを言っているという可能性もある。
とりあえず私達は、事前に打ち合わせていた通りのことを言うしかない。今回の訪問の理由は、きちんとあるのだ。
「まあ、多少は言い合いになりましたが、それ程問題ではありませんでしたよ。もっとも、ウォンバルト公爵はイムティア様を犯人にすることを諦めていないようですが」
「なるほど、ウォンバルト公爵も強情ですね。王女イムティアが、二人を手にかけるなんて、あり得ないというのに……」
エバリス様の呆れた顔に、私とナルギスは顔を見合わせた。
彼が全てをわかっているのか、そうではないのか、その判断がまったくつかない。
ただここは、彼に協力を求めるべきだろう。味方が少ない私達が、エバリス様に協力を求める。流れとしては、それが一番自然なはずだ。
「エバリス様、あなたがイムティア様が犯人ではないと思っているなら、協力していただけませんか? 真犯人を調べるのを」
「ほう?」
「私達は、味方が欲しいと思っています。イムティア様は、ただでさえ孤立されていますし……」
エバリス様が危険であるということは、私もよく理解することができた。
それなら彼の動きは、私達が牽制するとしよう。協力することによって彼と行動をともにすれば、それが可能だ。
「なるほど、それはもちろん構いませんが……いいのですか? 私が犯人かもしれませんよ」
「え?」
「現状、私が犯人ではないという保証はないでしょう。王女イムティアの味方をしていることは、私が犯人であることを否定するものではない。こうやって、あなた方を油断させる手かもしれません」
エバリス様は、笑みを浮かべていた。
その笑みに、私は少し怯んでしまう。やはり彼は、危険な人であるようだ。私はそれを、肌で実感していた。
「……」
「……」
ウォンバルト公爵がいる客室から出てきた私とナルギスは、部屋の前で待ち構えていた人物に少し驚いた。
目の前にいるのは、先程公爵と話題にしたエバリス・エルビー公爵だ。よくわからないが、彼はここで私達のことを待っていたらしい。
「あなたは確か、エバリス様でしたよね? どうかされましたか?」
「いえいえ、ウォンバルト公爵の部屋に入るあなた達を見つけたので、少し心配になりましてね」
「心配?」
「あなた方は、王女イムティアの一派でしょう。彼女はウォンバルト公爵と敵対している。そんな人がいる所に一派のあなた達が入っていたら、心配にもなるでしょう」
エバリス様は、私達に対してそんなことを言ってきた。
それが本心であるのかどうかはわからない。私達を惑わすために、こんなことを言っているという可能性もある。
とりあえず私達は、事前に打ち合わせていた通りのことを言うしかない。今回の訪問の理由は、きちんとあるのだ。
「まあ、多少は言い合いになりましたが、それ程問題ではありませんでしたよ。もっとも、ウォンバルト公爵はイムティア様を犯人にすることを諦めていないようですが」
「なるほど、ウォンバルト公爵も強情ですね。王女イムティアが、二人を手にかけるなんて、あり得ないというのに……」
エバリス様の呆れた顔に、私とナルギスは顔を見合わせた。
彼が全てをわかっているのか、そうではないのか、その判断がまったくつかない。
ただここは、彼に協力を求めるべきだろう。味方が少ない私達が、エバリス様に協力を求める。流れとしては、それが一番自然なはずだ。
「エバリス様、あなたがイムティア様が犯人ではないと思っているなら、協力していただけませんか? 真犯人を調べるのを」
「ほう?」
「私達は、味方が欲しいと思っています。イムティア様は、ただでさえ孤立されていますし……」
エバリス様が危険であるということは、私もよく理解することができた。
それなら彼の動きは、私達が牽制するとしよう。協力することによって彼と行動をともにすれば、それが可能だ。
「なるほど、それはもちろん構いませんが……いいのですか? 私が犯人かもしれませんよ」
「え?」
「現状、私が犯人ではないという保証はないでしょう。王女イムティアの味方をしていることは、私が犯人であることを否定するものではない。こうやって、あなた方を油断させる手かもしれません」
エバリス様は、笑みを浮かべていた。
その笑みに、私は少し怯んでしまう。やはり彼は、危険な人であるようだ。私はそれを、肌で実感していた。
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