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1.国王の隠し子
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かつて王城に勤めていた母は、国王様と関係を持ったようだ。
いつそうなって、どうしてそうなったのかは知らないし、知りたくもない。それは真っ当な愛ではないことが、明白だからだ。
私は所謂、隠し子である。国王様の不貞行為により、私は生まれることになった。
それは私にとってはどうでも良いことであったが、王族としてはそういう訳にもいかなかったらしい。私の存在を知った王家は、すぐに私を保護したのだ。
「名目上は保護としているが、実質的には捕獲といった所か。王家としては王族の血を引くお前を野放しにしておきたくはないということだ。せめて監視ができるように手元に置いておく。そう判断した訳だ」
「……それは、私に話して良いことなのですか?」
「どうせわかることだ。それに、これをお前が知った所で何かが変わるという訳でもない」
「それはまあ……その通りですね」
私の兄にあたる第一王子のアゼルト殿下は、赤裸々に事情を話してくれた。
薄々わかっていたことではあるが、私は真っ当に保護された訳ではなかったのだ。
「……王家としては、国王の不貞などという厄介な事柄を公表したくないが故に、お前のことを正式に認知するつもりはない。適当な身分を作り出し、この王城において使用人として働かせる腹積もりだ。凡そ最低だといえる対応だな。わざわざ連れ出しておいて、認めないとは」
「いや、別に私としては一族として認められないことはどうでもいいんですけど……」
「含みのある言い方だな?」
自嘲気味に笑みを浮かべるアゼルト殿下に対して、私はゆっくりと首を振った。
母は私を身籠ってから、すぐに故郷に帰った。故に私は生まれてから十五年間、平民として暮らしてきたのだ。
その自認は、今更覆るようなものではない。だから王家の一員になりたいなんて、思えなかったのである。
「使用人としてやっていける自信がありません。私は田舎で、つつましく暮らしてきたものですから、礼儀や作法なんてからっきしです。無礼を働いて、怒られるのが関の山かと」
「そのような心配をする必要はない。元より体裁として使用人とするだけだ」
「でも、あまりに不出来なら、私の身分はばれるのでは?」
「ばれないという方が無理な話だ。王家にとって重要なのは、明言しないことなのだ。その線引きさえあれば、どこの誰に知られようが構わない」
アゼルト殿下は、なんとも自分勝手な王家というものを私に教えてくれた。
それは私にとって、有益な事実であった。つまり私は、この王城にとりあえずいれば良いということが、よくわかったからだ。
結局の所、私に抗えることもない訳だし、肩の力を抜いて、今の状況を受け入れていくしかないということだろう。それが私がアゼルト殿下の話を聞いて出した結論である。
いつそうなって、どうしてそうなったのかは知らないし、知りたくもない。それは真っ当な愛ではないことが、明白だからだ。
私は所謂、隠し子である。国王様の不貞行為により、私は生まれることになった。
それは私にとってはどうでも良いことであったが、王族としてはそういう訳にもいかなかったらしい。私の存在を知った王家は、すぐに私を保護したのだ。
「名目上は保護としているが、実質的には捕獲といった所か。王家としては王族の血を引くお前を野放しにしておきたくはないということだ。せめて監視ができるように手元に置いておく。そう判断した訳だ」
「……それは、私に話して良いことなのですか?」
「どうせわかることだ。それに、これをお前が知った所で何かが変わるという訳でもない」
「それはまあ……その通りですね」
私の兄にあたる第一王子のアゼルト殿下は、赤裸々に事情を話してくれた。
薄々わかっていたことではあるが、私は真っ当に保護された訳ではなかったのだ。
「……王家としては、国王の不貞などという厄介な事柄を公表したくないが故に、お前のことを正式に認知するつもりはない。適当な身分を作り出し、この王城において使用人として働かせる腹積もりだ。凡そ最低だといえる対応だな。わざわざ連れ出しておいて、認めないとは」
「いや、別に私としては一族として認められないことはどうでもいいんですけど……」
「含みのある言い方だな?」
自嘲気味に笑みを浮かべるアゼルト殿下に対して、私はゆっくりと首を振った。
母は私を身籠ってから、すぐに故郷に帰った。故に私は生まれてから十五年間、平民として暮らしてきたのだ。
その自認は、今更覆るようなものではない。だから王家の一員になりたいなんて、思えなかったのである。
「使用人としてやっていける自信がありません。私は田舎で、つつましく暮らしてきたものですから、礼儀や作法なんてからっきしです。無礼を働いて、怒られるのが関の山かと」
「そのような心配をする必要はない。元より体裁として使用人とするだけだ」
「でも、あまりに不出来なら、私の身分はばれるのでは?」
「ばれないという方が無理な話だ。王家にとって重要なのは、明言しないことなのだ。その線引きさえあれば、どこの誰に知られようが構わない」
アゼルト殿下は、なんとも自分勝手な王家というものを私に教えてくれた。
それは私にとって、有益な事実であった。つまり私は、この王城にとりあえずいれば良いということが、よくわかったからだ。
結局の所、私に抗えることもない訳だし、肩の力を抜いて、今の状況を受け入れていくしかないということだろう。それが私がアゼルト殿下の話を聞いて出した結論である。
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