まさか私が王族の一員であることを知らずに、侮辱していた訳ではありませんよね?

木山楽斗

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3.歩いていると

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 王城の廊下を歩く私は、居心地の悪さを覚えていた。
 周囲からの視線を感じる。私が国王様の隠し子であるということは、やはり既に広く知られていることであるようだ。

 王家といえども、完全に情報を秘密にできる訳でもないということなのだろうか。いやもしかしたら、敢えて情報を漏らしている側面もあるのかもしれない。
 色々と事情はあるものの、王家は一応私を守ろうとしている。守るためには、私のことは知られておいた方が良いだろう。それが牽制にもなるのだから。

「それにしても……」

 そのようなことを考えていると、疑問が湧いてきた。王家は私のことを、始末しようなどとは考えなかったのだろうか。
 王家にとって私は、邪魔な存在であるはずだ。それなら命を奪う方が、手っ取り早いような気もしてしまう。
 私を保護するが、王家の一員としては認めないという対応も、不可解といえば不可解だ。なんとも中途半端なような気がする。

「……まあいいか」

 色々と考えていた私だったが、そこで自分の立場を思い出した。
 仮に何か裏の意図があったとしても、私は王家に従う他ない。結局逆らえないのだから、その辺りを推察した所で意味はないだろう。

 とりあえず今は、目の前のことに集中するべきだ。とにかく私は、書庫に辿り着かなければならない。王城は広いため、道筋はきちんと確認しておかなければ。

「そこのあなた」
「……え?」

 物思いに耽っていた私は、周囲のことなんてほとんど気にしていなかった。
 もちろん、最低限人にぶつからないようにとか、そういったことには気を付けていたが、誰がいるかなどはまったく把握できていなかったのである。
 故に明らかに使用人とは異なる格好をした女性のことは、呼びかけられるまでわからなかった。どうやら彼女は、客人であるようだ。

「あ、その、なんでしょうか?」
「なんでしょうか、ではないでしょう? この私とすれ違っておきながら、会釈の一つもないなんて、まったく持って敬意にかけた対応だわ」
「え、えっと……」

 女性は眉間に皺を寄せて、私との距離を詰めてきた。
 言うまでもなく、彼女は怒っているようだ。私が知らぬ内に、無礼を働いていたということだろうか。

「も、申し訳――ふぎゅっ」

 無礼を働いたのだから、まずは謝罪するべきだ。そう思って言葉を発した私だったが、それは最後まで言い切れなかった。
 何故そうなったのか、私は一瞬理解することができなかった。それが理解できたのは、自分が女性に押されて壁に押し付けられたと気付いた時である。
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