まさか私が王族の一員であることを知らずに、侮辱していた訳ではありませんよね?

木山楽斗

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20.姫君からの誘い

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「ふははっ!」
「あ、あの……」
「ふふっ……」

 大笑いしているウルティナ姫に、私は恐る恐る話しかけていた。
 一体彼女は、どうしてしまったのだろうか。それがまったくわからない。

 もしかしてウルティナ姫は、変な人なのだろうか。イルガン殿下のこともあって、私の頭にはそんな考えが過っていた。

「ああ、すまないな……別に貴様におかしな点がある訳ではない」
「え、えっと……」
「しかしなんとも、私からすれば都合が良いというだけだ。奴はなんとも、藪蛇をつついたものだ。だがまあ、貴様にとっては災難だったな」
「あ、その……はい」

 ウルティナ姫は、私の肩を叩いてきた。
 そこで私は気付く。彼女の視線が、セディルス様の方に向いているということを。

 先程の笑みは、彼の存在に気付いたからということなのだろうか。彼女はバルキス様の方に集中していたし、その可能性はある。
 ただセディルス様に関して、笑う要素などあるものだろうか。彼はただの騎士見習いであるはずなのだが。

「さて、貴様とは話がしたいと思っていた。丁度いい機会ではあるな」
「話、ですか?」
「ああ」

 そこでウルティナ姫は、表情を少し険しくした。
 それは真剣な話をするということなのだろう。私は少し身構える。イルガン殿下の時のように、疎まれている可能性があるからだ。

「私と組め」
「え?」
「貴様は私の派閥にいる方が良い。少なくともアゼルト兄上の派閥はやめておけ」

 ウルティナ姫の言葉に、私は固まっていた。予想外の言葉が、彼女の口から出てきたからだ。
 派閥というのはつまり、王位争奪に関する派閥ということだろうか。彼女は私を引き入れたいということらしい。
 しかしまず、私がアゼルトお兄様の派閥に所属しているみたいな前提はなんなのだろうか。そんな事実はないのだが。

「あの、私は派閥なんて……」
「アゼルト兄上の世話係を担当していると聞いている。王家の兄妹の中で、貴様が一番親しくしているのはアゼルト兄上だろう?」
「それは……そうですね」
「それを私に変えろと、言っているんだ。私につく方が、貴様にとっても良いはずだ。アゼルト兄上の傍になどいない方がいい」

 ウルティナ姫は、私のことを疎んでいる訳ではないのだろう。彼女の口振りからは、それが伺える。
 ただなんというか、その言葉の節々にある棘が気になった。彼女は先程から、アゼルトお兄様に対してやけに辛辣だ。

 私はアゼルトお兄様のことは、信頼できる人だと思っている。だから彼女の言い分には、納得することができなかった。故に組めと言われても、受け入れられる訳もない。
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