私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。

木山楽斗

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35.お互いの想いは

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「アルティア嬢、僕の気持ちは変わっていません。あなたを支えたいと思っています」
「フレイル様、あなたのその気持ちは嬉しく思います」
「それはその……なんというか」

 お母様とバルフェルト伯爵家の面々が去った後、フレイル様はゆっくりと切り出してきた。
 私を支える。彼のその言葉には、迷いがない。ただその後の言葉には、躊躇いがある。それは先程、両親から言われたことを思い出したからだろう。

「フレイル様、あなたの気持ちを聞かせていただけますか?」
「……そうですね。ここではぐらかすというのは、失礼なことですからね。バルフェルト伯爵家の血を引く者として、恥じないようにしなければなりません」

 私の質問に、フレイル様は目を瞑った。
 次に目を開けた時、彼の表情は引き締まっていた。それはつまり、覚悟を決めたということだろうか。
 私はゆっくりと息を呑む。私の方も、覚悟を決めなければならなかったからだ。

「アルティア嬢、僕はあなたに惹かれています」
「フレイル様……」
「あなたの誇り高き様に、僕は惹かれました。僕はあなたのことが好きなんです」

 フレイル様の言葉は、端的で真っ直ぐなものだった。それはなんとも、彼らしいものであるといえる。
 それは私にとって、嬉しい言葉だ。そうであれば良いと、思っていた。

 そうだと思える部分も、ないという訳ではなかった。支えると口にしてくれた時に、それが感じられなかったと言えば嘘になる。
 ただ実際にそう言われると、なんとも肩から力が抜けた。そう言ってもらえるだけで、ここまで安心できるなんて驚きだ。

 それなら私の方も、答えを返さなければならないだろう。
 フレイル様がそれで安心してくれるのかはわからないが、それでも私は決意する。自分の気持ちを素直に述べることを。

「フレイル様、私も同じ気持ちです。あなたのことをお慕いしています。フレイル様とともに、これからを歩んでいきたいと、思っているんです」
「……ありがとうございます。あなたにそう言ってもらえて光栄です」

 私の言葉に、フレイル様は笑顔を返してくれた。
 その笑顔からは、彼がどう思っているのかが伝わってくる。どうやら彼も、私と同じように安心してくれたようだ。

 今私達が述べたのは、家とかそういったことは関係がない領域の話である。
 そういった感情を抑えなければならないのが、貴族だ。だけれど今は、その感情に従っても良い状況にある。周りの人達が、そう取り計らってくれたのだ。
 それならこれが、一番良いということなのだろう。私はそう理解した。
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