不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗

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11.両親からの手紙

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『なるほど、中々に大変なことになっているようですね』

 私の話を聞き終えたマグナード様は、そのような言葉を返してきた。
 それはとても、単純な返答である。まあ話を聞いてすぐに言えるのは、そんなものだろう。
 それからマグナード様は、考えるような仕草をした。私に対するアドバイスを考えてくれていたのだろう。

『……まずはご両親に相談することから始めるべきでしょうね』
『両親は、この婚約の変更に関して、反対するとは思えませんが……』
『どのようなことになるとしても、連絡はした方がいいでしょう?』
『まあ、それはそうですね』

 マグナード様は、まずとても初歩的な考えを述べてくれた。
 彼の言う通り、どうなるにしても両親への連絡は必須だ。例えエムリーが連絡するとしても、それは変わらない。

『考えるべきは、それからになるでしょうか。そして抗議するべき所は抗議するべきです。重要なのは、ルヴィード子爵家をエムリー嬢に明け渡さないことですから』
『ロダルト様が家を継ぐという前提を覆すことはできるのでしょうか……』
『相手の家が反発するかもしれないと考えている訳ですか。しかしですね、ロダルト子爵令息の行動は普通に失礼です。彼から提案したということは、彼の非を追及することができる』
『なるほど、言われてみればそうですよね……』

 マグナード様の助言によって、私は今回の件における重要なことに思い至った。
 エムリーの策略が同情を煽っただけというなら、この件の責任は全てロダルト様に被せることができる。
 私もエムリーも彼の蛮行に振り回された。そういうことになれば、今の状況を覆すことは充分可能であるだろう。

『ありがとうございます、マグナード様。お陰で活路が見出せた気がします』
『いえ、僕の助言なんて大したものではありませんよ』

 マグナード様は、本当に私のクラスメイトとして話に応じてくれた。
 ルヴィード子爵家を公爵家の立場で利用しようとしている。そう考えてしまったことが申し訳なくなるくらい、彼の助言はありがたかった。

「まあ、両親がどう判断するかは、わからないけれど……」

 私は、両親から届いてきた手紙の封を開けながら、そんなことを呟いていた。
 マグナード様の助言通り両親に連絡を取って、その返信が来たのである。
 それを読むのには、少々勇気が必要だった。その手紙によって、私の運命は左右されるからだ。

「……え?」

 そして手紙を開いた私は、ひどく動揺することになった。
 手紙に書かれている事柄が、信じられないことであったからだ。

 ただそれは、私にとって悪い情報という訳ではない。むしろこれは、有益な情報である。
 どうやら風向きは、こちらに向いているようだ。そう思って、私は少しだけ笑みを浮かべるのだった。
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