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25.視線の先に
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「どこを見ているんですか?」
「ナルネア様の言葉に、応えなさい」
遠くを見つめていることに気付いたのか、ナルネア嬢の取り巻き達が怒り始めていた。
しかし、そんな取り巻き達とは違い、ナルネア嬢は私の視線を追っている。彼女だけは、冷静だったということだろう。
「……あなた!」
「え? あっ……」
「あなたの方こそ、どこを見ていたのですか?」
そこでナルネア嬢は、取り巻きの後方にいた令嬢に詰め寄った。
恐らく、その女性は人が来ないか見る監視役だったのだろう。私を詰める方に夢中になって、その役割が果たせなかった彼女に、ナルネア嬢はかなり怒っているようだ。
しかし、その詰め寄りは長く続かなかった。一人の男性がこの場にやって来たことによって、中断せざるを得なかったのだろう。
「……こんな所で何をしている?」
その男性は、鋭い目つきでナルネア嬢に問いかけた。
それに対して彼女は、罰が悪そうな表情をする。それは当然だ。今彼女の目の前にいるのは、この国でも最も権力を持つ一族の一人なのだから。
「これはこれは、ブライト殿下……」
「挨拶など必要はない。俺が聞いているのは、あなた方が何をしているのか、ということだ」
そこにいるのは、このハルバルド王国の第二王子であるブライト殿下だ。
彼は、ナルネア嬢を真っ直ぐに見つめている。それ以外の令嬢など、まるで目に入っていない。誰がこの場を取り仕切っているのかは、よく理解しているようだ。
「こちらのイルリア嬢と話していただけですよ」
「こんな所で、これだけの人数でか?」
「……何か問題でも?」
ナルネア嬢の声は、少し震えていた。
それは先程までの私と同じ状態だ。自分よりも権力を持つ者に詰め寄られて、どうしようもなくなっているのだろう。
「いや、あなたは随分と臆病だと思ったんだ、ナルネア・オルガー侯爵令嬢……あなたは、自分よりも下の地位の貴族令嬢と話すのにも、お友達が必要なんだな?」
「なっ……」
ブライト殿下は、少し口の端を釣り上げて言葉を発していた。
その馬鹿にしたような口調には、ナルネア嬢も表情を歪めている。流石にその侮辱は、許容することができなかったのだろう。
ただ彼女は、すぐに表情を元に戻した。それでも王子には逆らえない。そう思ったのだろう。
「……行きますよ! 皆さんっ」
「え? あ、ナルネア様?」
「お、お待ちください、ネルネア様」
結局ナルネア嬢は、この場から逃げることを選んだ。
その逃走に、私は少し安心する。どうやらこの場は、無事に切り抜けられたようだ。
「ナルネア様の言葉に、応えなさい」
遠くを見つめていることに気付いたのか、ナルネア嬢の取り巻き達が怒り始めていた。
しかし、そんな取り巻き達とは違い、ナルネア嬢は私の視線を追っている。彼女だけは、冷静だったということだろう。
「……あなた!」
「え? あっ……」
「あなたの方こそ、どこを見ていたのですか?」
そこでナルネア嬢は、取り巻きの後方にいた令嬢に詰め寄った。
恐らく、その女性は人が来ないか見る監視役だったのだろう。私を詰める方に夢中になって、その役割が果たせなかった彼女に、ナルネア嬢はかなり怒っているようだ。
しかし、その詰め寄りは長く続かなかった。一人の男性がこの場にやって来たことによって、中断せざるを得なかったのだろう。
「……こんな所で何をしている?」
その男性は、鋭い目つきでナルネア嬢に問いかけた。
それに対して彼女は、罰が悪そうな表情をする。それは当然だ。今彼女の目の前にいるのは、この国でも最も権力を持つ一族の一人なのだから。
「これはこれは、ブライト殿下……」
「挨拶など必要はない。俺が聞いているのは、あなた方が何をしているのか、ということだ」
そこにいるのは、このハルバルド王国の第二王子であるブライト殿下だ。
彼は、ナルネア嬢を真っ直ぐに見つめている。それ以外の令嬢など、まるで目に入っていない。誰がこの場を取り仕切っているのかは、よく理解しているようだ。
「こちらのイルリア嬢と話していただけですよ」
「こんな所で、これだけの人数でか?」
「……何か問題でも?」
ナルネア嬢の声は、少し震えていた。
それは先程までの私と同じ状態だ。自分よりも権力を持つ者に詰め寄られて、どうしようもなくなっているのだろう。
「いや、あなたは随分と臆病だと思ったんだ、ナルネア・オルガー侯爵令嬢……あなたは、自分よりも下の地位の貴族令嬢と話すのにも、お友達が必要なんだな?」
「なっ……」
ブライト殿下は、少し口の端を釣り上げて言葉を発していた。
その馬鹿にしたような口調には、ナルネア嬢も表情を歪めている。流石にその侮辱は、許容することができなかったのだろう。
ただ彼女は、すぐに表情を元に戻した。それでも王子には逆らえない。そう思ったのだろう。
「……行きますよ! 皆さんっ」
「え? あ、ナルネア様?」
「お、お待ちください、ネルネア様」
結局ナルネア嬢は、この場から逃げることを選んだ。
その逃走に、私は少し安心する。どうやらこの場は、無事に切り抜けられたようだ。
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