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46.理解できないもの
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「ヴォ、ヴォルダン?」
相方が崩れ落ちたのを見て、ムドラス伯爵令息は目を丸めていた。
しかし、彼はすぐに気付いた。今が、驚いている場合ではないということに。
ただ、それでも判断は遅かった。既にブライト殿下は、ムドラス伯爵令息の後ろに回っている。
「あがっ、痛っ……」
「少し大人しくしていろ」
ブライト殿下は、ムドラス伯爵令息を冷静に拘束していた。
その手際は、見事としか言いようがない。彼はマグナード様よりもともすればスマートに、一人の悪漢を制圧したのである。
「……ミレリア嬢!」
それを見た私は、ほぼ反射的にミレリア嬢の方に近寄っていた。
私は身を屈めて彼女に呼びかける。とりあえず意識があるかどうかを、確認しておきたかったからだ。
「んんっ……」
「今、外しますから。どうか落ち着いてください」
私はミレリア嬢が窒息したりしないように、猿轡となっている布を外した。
恐らく、彼女に声を出させないようにするためにこうしていたのだろう。それだけで、ヴォルダン伯爵令息とムドラス伯爵令息の恐ろしさが伝わってくる。
「イルリア嬢……」
「ミレリア嬢、大丈夫ですか?」
「ええ、なんとか……少し殴られたりしただけです」
「ミレリア嬢……」
ミレリア嬢は起き上がったものの、私にゆっくりと体を預けてきた。
その体には、力がない。かなり憔悴しているようだ。
「マグナード様、お願いが……」
「ええ、人を呼んできます」
私が目配せをすると、マグナード様はすぐに意図を理解してくれた。
ヴォルダン伯爵令息の方は、マグナード様が存分に懲らしめてくれたのでしばらくは動けないだろう。多分、一人がこの場を離れても問題はないはずだ。
マグナード様は、迅速に動いてくれた。恐らくすぐに、誰かが来てくれるだろう。
「ちっ! くそがっ!」
「おい、大人しくしろ」
「痛っ……お、お前、少しは……」
「往生際の悪い奴だな……お前もああなりたいのか?」
「ひっ……!」
しばらく暴れていたムドラス伯爵令息も、ブライト殿下が黙らせてくれた。
彼に関しては、実の姉をこんな目に合わせているという観点から、ヴォルダン伯爵令息以上に恐ろしく思えた。
いや理解できないという意味において、この二人に差をつけるというのも愚かな話だ。どちらにしても、理解できない化け物達である。
「ミレリア嬢、大丈夫ですからね。すぐに人が来ますから」
「はい……」
エムリーやロダルト様、ナルネア嬢の時よりも、私は憤っていた。
この化け物達には、厳正な裁きを下さなければならない。ミレリア嬢の体をそっと抱き止めながら、私はそんなことを思うのだった。
相方が崩れ落ちたのを見て、ムドラス伯爵令息は目を丸めていた。
しかし、彼はすぐに気付いた。今が、驚いている場合ではないということに。
ただ、それでも判断は遅かった。既にブライト殿下は、ムドラス伯爵令息の後ろに回っている。
「あがっ、痛っ……」
「少し大人しくしていろ」
ブライト殿下は、ムドラス伯爵令息を冷静に拘束していた。
その手際は、見事としか言いようがない。彼はマグナード様よりもともすればスマートに、一人の悪漢を制圧したのである。
「……ミレリア嬢!」
それを見た私は、ほぼ反射的にミレリア嬢の方に近寄っていた。
私は身を屈めて彼女に呼びかける。とりあえず意識があるかどうかを、確認しておきたかったからだ。
「んんっ……」
「今、外しますから。どうか落ち着いてください」
私はミレリア嬢が窒息したりしないように、猿轡となっている布を外した。
恐らく、彼女に声を出させないようにするためにこうしていたのだろう。それだけで、ヴォルダン伯爵令息とムドラス伯爵令息の恐ろしさが伝わってくる。
「イルリア嬢……」
「ミレリア嬢、大丈夫ですか?」
「ええ、なんとか……少し殴られたりしただけです」
「ミレリア嬢……」
ミレリア嬢は起き上がったものの、私にゆっくりと体を預けてきた。
その体には、力がない。かなり憔悴しているようだ。
「マグナード様、お願いが……」
「ええ、人を呼んできます」
私が目配せをすると、マグナード様はすぐに意図を理解してくれた。
ヴォルダン伯爵令息の方は、マグナード様が存分に懲らしめてくれたのでしばらくは動けないだろう。多分、一人がこの場を離れても問題はないはずだ。
マグナード様は、迅速に動いてくれた。恐らくすぐに、誰かが来てくれるだろう。
「ちっ! くそがっ!」
「おい、大人しくしろ」
「痛っ……お、お前、少しは……」
「往生際の悪い奴だな……お前もああなりたいのか?」
「ひっ……!」
しばらく暴れていたムドラス伯爵令息も、ブライト殿下が黙らせてくれた。
彼に関しては、実の姉をこんな目に合わせているという観点から、ヴォルダン伯爵令息以上に恐ろしく思えた。
いや理解できないという意味において、この二人に差をつけるというのも愚かな話だ。どちらにしても、理解できない化け物達である。
「ミレリア嬢、大丈夫ですからね。すぐに人が来ますから」
「はい……」
エムリーやロダルト様、ナルネア嬢の時よりも、私は憤っていた。
この化け物達には、厳正な裁きを下さなければならない。ミレリア嬢の体をそっと抱き止めながら、私はそんなことを思うのだった。
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