不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗

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52.意気揚々と

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「それで実際の所、どうなんですか?」
「えっと、どうとはどういうことでしょうか?」
「マグナード様のことです」

 紅茶とビスケットを用意してから、私はミレリア嬢と話を始めていた。
 そこで彼女が聞いてきたのは、マグナード様のことである。
 もしかして今回の訪問は、真面目な話をする場だったのだろうか。先日のマグナード様の様子を思い出して、私は思わず面食らってしまう。

「前々から気になってはいたんです。でも、色々とあってお聞きする暇がなくて、ずばりお二人は親密な仲なのですか?」
「え?」

 続くミレリア嬢の言葉に、私は変な声を出してしまった。
 彼女が何を言っているのかは、理解することができる。要するに、私とマグナード様が恋仲かどうかを聞いているのだろう。
 しかし、どうしてそうなったのかが私にはわからない。ミレリア嬢は、急に一体どうしたというのだろうか。

「ミレリア嬢? 私とマグナード様は、ただの友人ですよ?」
「ただの友人? まさか、そんな訳……」
「あの、ミレリア嬢? なんでそんなに楽しそうなのですか?」

 ミレリア嬢は、今まで見たことがないような蕩けた笑みを浮かべていた。
 もしかして、彼女は恋愛の話などが好きなタイプなのだろうか。それは初めて知ることだったため、私は少し驚いていた。
 とはいえ、私も別にそういった話が嫌いという訳ではない。もっとも、その話の当事者が自分であるとなると、話は大いに変わってくるのだが。

「言っておきますが、私とマグナード様は本当になんでもありませんからね?」
「本当ですか? でも、お二人は仲良くされているではありませんか」
「私と彼とでは、身分が違い過ぎます。子爵家と公爵家なのですから、恋愛が成立するような関係性ではないのです」
「同じ貴族なのですから、そんなことはないと思いますけれど」
「貴族の中にも身分の差はあります。私と彼とでは、それが釣り合いません」

 ミレリア嬢からの質問を、私はなんとか躱そうとしていた。
 この話は、できれば続けたくない。なんというか、気持ちがざわざわとする。

「それなら、もしもの話をしましょうか。仮にマグナード様が子爵家の人間だったとして、お二人の身分が釣り合っている場合は、どうなのでしょうか?」
「え?」
「それでもイルリア嬢は、マグナード様には興味がないと仰るのでしょうか? そこの所、本音を聞かせてもらえませんか?」
「そ、それは……」

 ミレリア嬢からの質問に、ゆっくりと目をそらすことになった。
 その質問には、とても答えずらい。なぜならそれは、私がずっと考えないようにしていたことだからだ。
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