不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?

木山楽斗

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70.考えられる可能性

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「部屋の外に誰かがいた、ですか?」
「ええ……」
「そうですか……」

 私は、マグナード様やブライト殿下に何があったのかを伝えていた。
 深夜であるというのに、別荘はかなり騒がしい。仕方ないことではあるのだが、それを引き起こしてしまったのは、少し申し訳ない。

「まずは無事でよかったです」
「ありがとうございます」
「エムリー嬢も、よくぞご無事で」
「いえ、私はお姉様が守ってくださったので……」

 私達が無事だったということは、本当に幸いなことだった。
 結果的に、あの判断は間違っていなかったのだろうか。当初の通りやり過ごそうとなんてしていたら、もっと大変なことになっていたかもしれない。
 もっとも、それはたらればの話だ。とにかく今は、無事を喜ぶことにしよう。

「……叫び声が聞こえてきてから、俺は外に出ていた。侵入者の可能性は予想できたから、念のため外からイルリア嬢の部屋を目指していたんだ。中からはマグナードが行くからな」
「そうでしたか。それで?」
「確かに人影が見えた。恐らく、男だ。中肉中背、得に特徴がない人間だったな。森の方に逃げて行ったが……」

 ブライト殿下は、人影を補足していたようである。
 こういう時の彼は、なんというかとても冷静だ。どんなことにも動じない彼は、王家の器といえるかもしれない。

「……捜索は命じていません。こんな夜中に歩き回るのは危険ですから」
「警戒はしているんだろう? それならまあ、とりあえずは安心だ。まあ、相手が何人いるのかはわからないから、油断はできないか」
「盗賊などの類でしょうか? この辺りは、安全であるとされてきましたが……」
「情勢が変化したのかもしれないな。まあ、単独の変質者かもしれないが」

 別荘とはいえ、この屋敷にはそれなりの人数の使用人がいる。
 腕っぷしがある人もいるみたいなので、恐らくは安全だろう。
 問題は、相手が大きな集団であるという可能性だが、それもないような気がする。そういった団体は、得てして補足されるものだ。影も形もないなんてことが、あるのだろうか。

「……考えるべきは、ムドラス伯爵令息とヴォルダン伯爵令息に関わることです」
「……まあ、不本意ではあるが、その可能性も考えざるを得ないか。こんなことになった以上、俺も反論なんてしないさ」
「何が起こっているのかはわかりませんが、とくにかく警戒する必要がありますね」

 マグナード様の意見に、ブライト殿下も同意した。
 不可解なことがなんども起こっているのだから、流石に例の件には何かしらの関係があると考えるべきだろう。
 だが、犯人が誰かは最早どうでもいいことだ。とにかく安全にこの夜を切り抜ける。それが最も重要なことだ。
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