12 / 22
第12話 王子不在
しおりを挟む
私達は、スルーガ様の執務室に来ていた。
彼は、普段は大抵ここにいる。ろくに執務はしていないが、一応そこにはいるのだ。
「いない? どういうことですか?」
「実は、つい先程出かけてしまったのです。なんでも、ディルトレイという町に向かうらしくて……」
しかし、スルーガ様の執務室はもぬけの殻だった。
それどころか、彼はこの王城にもいないらしい。
そんな彼が向かっている場所には聞き覚えがある。私は、マルグと顔を見合わせる。ディルトレイという町は、彼が今住んでいる町だからだ。
「マルグ、スルーガ様がその町に向かったことに関して、何か心当たりはある?」
「いや、申し訳ないが、特に思いつかない。あの町は普通の町だ。王族がわざわざ行く理由なんて、見当もつかない」
「……なんだか、嫌な予感がします。彼は、何かおかしなことを考えているかもしれません」
「おかしなこと?」
セルトス様は、少し暗い表情をしていた。
その表情から、何か不安のようなものが読み取れる。
「ディルトレイという町には、特に問題がある訳ではありません。ですが、その周辺にある場所が僕は気になっています」
「周辺になる場所……まさか」
「ええ、禁断の地に、彼は踏み入ろうとしているのかもしれません」
セルトス様の言葉に、私はとても驚いた。
禁断の地というのは、このレバデイン王国にいくつか存在しているとても重要な場所である。ある程度の権限を持っていないと、その場所には入れない。権限を持っていても、ほとんどの人は入ろうとしない場所だ。
「いくら、スルーガ様でも、あそこに足を踏み入れるのでしょうか?」
「僕も、考えたくはありません。ですが、今の彼なら、そこに足を踏み入れてもおかしくはないと思ってしまうのです」
「そんな……」
禁断の地に足を踏み入れるなど、いくらなんでもあり得ない。私は、そう思っていた。
悪人であっても、あの場所には入ろうとしない。狂った者くらいしか、入ろうとしない場所なのだ。
だが、今のスルーガ様は正気ではないのかもしれない。愛する者に振られて、狂っている可能性は充分あるだろう。
「もし……彼があの場所で、目覚めさせようとしているのなら、絶対に止めなければなりません。最早、それは個人の問題ではなく、国として」
「……」
「何人たりとも、魔神を目覚めさせることなど……許されません」
セルトス様は、深刻な顔をしていた。
その顔をする理由は、よくわかる。
スルーガ様が魔神を目覚めさせようとしているなら、それは止めなければならない。彼を殺してでも。
彼は、普段は大抵ここにいる。ろくに執務はしていないが、一応そこにはいるのだ。
「いない? どういうことですか?」
「実は、つい先程出かけてしまったのです。なんでも、ディルトレイという町に向かうらしくて……」
しかし、スルーガ様の執務室はもぬけの殻だった。
それどころか、彼はこの王城にもいないらしい。
そんな彼が向かっている場所には聞き覚えがある。私は、マルグと顔を見合わせる。ディルトレイという町は、彼が今住んでいる町だからだ。
「マルグ、スルーガ様がその町に向かったことに関して、何か心当たりはある?」
「いや、申し訳ないが、特に思いつかない。あの町は普通の町だ。王族がわざわざ行く理由なんて、見当もつかない」
「……なんだか、嫌な予感がします。彼は、何かおかしなことを考えているかもしれません」
「おかしなこと?」
セルトス様は、少し暗い表情をしていた。
その表情から、何か不安のようなものが読み取れる。
「ディルトレイという町には、特に問題がある訳ではありません。ですが、その周辺にある場所が僕は気になっています」
「周辺になる場所……まさか」
「ええ、禁断の地に、彼は踏み入ろうとしているのかもしれません」
セルトス様の言葉に、私はとても驚いた。
禁断の地というのは、このレバデイン王国にいくつか存在しているとても重要な場所である。ある程度の権限を持っていないと、その場所には入れない。権限を持っていても、ほとんどの人は入ろうとしない場所だ。
「いくら、スルーガ様でも、あそこに足を踏み入れるのでしょうか?」
「僕も、考えたくはありません。ですが、今の彼なら、そこに足を踏み入れてもおかしくはないと思ってしまうのです」
「そんな……」
禁断の地に足を踏み入れるなど、いくらなんでもあり得ない。私は、そう思っていた。
悪人であっても、あの場所には入ろうとしない。狂った者くらいしか、入ろうとしない場所なのだ。
だが、今のスルーガ様は正気ではないのかもしれない。愛する者に振られて、狂っている可能性は充分あるだろう。
「もし……彼があの場所で、目覚めさせようとしているのなら、絶対に止めなければなりません。最早、それは個人の問題ではなく、国として」
「……」
「何人たりとも、魔神を目覚めさせることなど……許されません」
セルトス様は、深刻な顔をしていた。
その顔をする理由は、よくわかる。
スルーガ様が魔神を目覚めさせようとしているなら、それは止めなければならない。彼を殺してでも。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
醜貌の聖女と呼ばれ、婚約破棄されましたが、実は本物の聖女でした
きまま
恋愛
王国の夜会で、第一王子のレオンハルトから婚約破棄を言い渡された公爵令嬢リリエル・アルヴァリア。
顔を銀の仮面で隠していることから『醜貌の聖女』と嘲られ、不要と切り捨てられた彼女は、そのまま王城を追われることになる。
しかし、その後に待ち受ける国の運命は滅亡へと向かっていた——
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。
藍川みいな
恋愛
ある日私は、銀貨一枚でスコフィールド伯爵に買われた。母は私を、喜んで売り飛ばした。
伯爵は私を養子にし、仕えている公爵のご子息の治療をするように命じた。私には不思議な力があり、それは聖女の力だった。
セイバン公爵家のご子息であるオルガ様は、魔物に負わされた傷がもとでずっと寝たきり。
そんなオルガ様の傷の治療をしたことで、セイバン公爵に息子と結婚して欲しいと言われ、私は婚約者となったのだが……オルガ様は、他の令嬢に心を奪われ、婚約破棄をされてしまった。彼の傷は、完治していないのに……
婚約破棄をされた私は、役立たずだと言われ、スコフィールド伯爵に邸を追い出される。
そんな私を、必要だと言ってくれる方に出会い、聖女の力がどんどん強くなって行く。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません
冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」
アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。
フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。
そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。
なぜなら――
「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」
何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。
彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。
国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。
「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」
隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。
一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。
酔って婚約破棄されましたが本望です!
神々廻
恋愛
「こ...んやく破棄する..........」
偶然、婚約者が友達と一緒にお酒を飲んでいる所に偶然居合わせると何と、私と婚約破棄するなどと言っているではありませんか!
それなら婚約破棄してやりますよ!!
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる