妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?

木山楽斗

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38.揺さぶりをかけて

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「リオネル様、トゥーリア嬢の様子が変です」
「変?」
「彼女がチャルリオ様に抱いている恐怖は、普通とは性質が少し異なっているような気がします」

 私は、リオネル様にそっと耳打ちする。
 トゥーリア嬢の様子は、重要なことだ。これは、チャルリオ様に揺さぶりをかけられる足掛かりとなる。

「言われてみれば、そうかもしれませんね。なんというか、異様な雰囲気を感じます」
「……このまま見ていても、チャルリオ様は逃げるだけです。それなら揺さぶりをかける方が良いのではありませんか?」
「ええ、そうですね……」

 私とリオネル様は、頷き合ってから再びチャルリオ様とトゥーリア嬢の方を見る。
 チャルリオ様は、その場を動いていない。まだ私達と話したいことがあるということだろうか。それならこちらとしてもありがたいものである。

「チャルリオ様、あなたはトゥーリア嬢のことを嫌っているという訳ではないのですね?」
「藪から棒になんだ?」
「あなたはレメティア嬢という偽りの妹を作っていました。それはトゥーリア嬢に対する何かしらの当てつけだったのでしょうか? 実の所、私達はそれが気になっているのです」
「レメティア……彼女のことか」

 私の質問に対して、チャルリオ様の表情は少し暗くなった。
 レメティア嬢のことは、触れられたくなかったのだろうか。しかしそれは、そもそもの始まりだ。こちらとしても、純粋に気になっていることでもある。

「レメティア嬢に対するあなたの愛は、はっきりと言って異常です。それは彼女が、あなたにとって理想の妹だったから、ということですか? トゥーリア嬢は、そういったものではなかったということなのでしょうか?」
「……いや、そうではない」

 チャルリオ様は、強い否定の言葉を口にしていた。
 彼の視線は、腕の中にいるトゥーリア嬢に向いている。それに対して彼女は、目を瞑っている。それはなんというか、苦悶の表情であるように思えた。

「確かに一時はレメティアに対して、深い愛情を抱いていた。いや、それは今でも変わってはいない。彼女は大切な妹だと思える。しかし、それ以上に思うことはできなかった」
「それ以上?」
「故に理解することになった。より鮮明にわかったのさ。自分の気持ちがね……」
「チャルリオ様、あなたはまさか……」

 チャルリオ様の熱を帯びた視線は、実の妹に向けるべき視線として適切とは言えなかった。
 そこには、家族を越えた感情が隠れている気がしてならない。
 その事実に、私はゆっくりと息を呑んだ。つまりそれが、彼がずっと抱えていた気持ちだということなのだろう。
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