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40.隙を作るために
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「僕のことを侮辱するのか……僕がどのような気持ちでここに立っていると思っているんだ!」
「そんなの知りませんよ。知りたくもありません。大体、あなたは履き違えている。問題はあなたが妹に対してどういった思いを抱いていたかではありません。あなたがその感情によって、どういった行動をしているか、ということです」
リオネル様がその場からいなくなったことに、チャルリオ様は気付いていないようだった。
私との会話に、夢中になっているようだ。そういうことなら、こちらとしても都合が良い。もう少し彼のことを引きつけておくとしよう。
幸いなことに、言いたいことはいくらでもあった。私に怒りを向けている間は、トゥーリア嬢に危害を加えることもないだろうし、今はとことん怒らせるとしよう。
「トゥーリア嬢に拒絶された時点で、あなたはもう終わったのです。いえ、そもそもそんな気持ちなんて墓場まで持っていくべきでしたね……というか、伯爵家の令息として生まれているというのに、自分を律することもできなかったんですか? 貴族が自由に恋愛できるなんてないと、わかっているでしょうに」
「ぐぬっ……」
私の言葉に、チャルリオ様は表情を歪めていた。
彼の目には、明確な敵意が宿っている。今にでもこちらに、飛び掛かってきそうな雰囲気だ。
ただそのためには、トゥーリア嬢を離さなければならない。この状況で人質を失ったらどうなるか、彼もわかってはいるのだろう。
しかしこちらとしては、トゥーリア嬢を解放してもらいたい所だ。
時間的に考えて、リオネル様は既に屋敷の外に辿り着いているだろう。今はきっと、タイミングを見計らっているはずだ。
「……お兄様」
「トゥーリア? どうかしたのか?」
「アルリア嬢の言っていることなど、気にする必要はありません。私は……お兄様について行きますから」
「……何?」
そこでトゥーリア嬢は、チャルリオ様に言葉をかけた。
それは普通に考えれば、信じられない言葉である。だが私にはすぐにわかった。その言葉が、チャルリオ様を欺く嘘であるということが。
事実として、彼は今呆気に取られている。それは大きな隙であった。トゥーリア嬢に対する拘束が、少し弱まったのだ。
「――トゥーリア!」
「うぐっ……」
「トゥーリア嬢!」
次の瞬間、トゥーリア嬢は一気にしゃがみ込んで、その拘束から逃れようとした。
それは上手くいっているように思えた。ただ私は、辺りに飛び散る赤いものを見て息を呑んだ。
トゥーリア嬢は、チャルリオ様から逃れてはいる。しかしその際に、どこかをナイフが掠めたらしい。それはきっと、チャルリオ様からしても予想外のことだったのだろう。彼も目を丸めている。
「チャルリオ!」
「何っ――!」
そんな風に彼が呆気に取られている間に、屋敷の玄関の戸が一気に開かれた。
そこから入って来たのは、リオネル様だ。やはり彼は既に裏に回っていた。そこでチャルリオ様の隙を、伺っていたのだ。
「そんなの知りませんよ。知りたくもありません。大体、あなたは履き違えている。問題はあなたが妹に対してどういった思いを抱いていたかではありません。あなたがその感情によって、どういった行動をしているか、ということです」
リオネル様がその場からいなくなったことに、チャルリオ様は気付いていないようだった。
私との会話に、夢中になっているようだ。そういうことなら、こちらとしても都合が良い。もう少し彼のことを引きつけておくとしよう。
幸いなことに、言いたいことはいくらでもあった。私に怒りを向けている間は、トゥーリア嬢に危害を加えることもないだろうし、今はとことん怒らせるとしよう。
「トゥーリア嬢に拒絶された時点で、あなたはもう終わったのです。いえ、そもそもそんな気持ちなんて墓場まで持っていくべきでしたね……というか、伯爵家の令息として生まれているというのに、自分を律することもできなかったんですか? 貴族が自由に恋愛できるなんてないと、わかっているでしょうに」
「ぐぬっ……」
私の言葉に、チャルリオ様は表情を歪めていた。
彼の目には、明確な敵意が宿っている。今にでもこちらに、飛び掛かってきそうな雰囲気だ。
ただそのためには、トゥーリア嬢を離さなければならない。この状況で人質を失ったらどうなるか、彼もわかってはいるのだろう。
しかしこちらとしては、トゥーリア嬢を解放してもらいたい所だ。
時間的に考えて、リオネル様は既に屋敷の外に辿り着いているだろう。今はきっと、タイミングを見計らっているはずだ。
「……お兄様」
「トゥーリア? どうかしたのか?」
「アルリア嬢の言っていることなど、気にする必要はありません。私は……お兄様について行きますから」
「……何?」
そこでトゥーリア嬢は、チャルリオ様に言葉をかけた。
それは普通に考えれば、信じられない言葉である。だが私にはすぐにわかった。その言葉が、チャルリオ様を欺く嘘であるということが。
事実として、彼は今呆気に取られている。それは大きな隙であった。トゥーリア嬢に対する拘束が、少し弱まったのだ。
「――トゥーリア!」
「うぐっ……」
「トゥーリア嬢!」
次の瞬間、トゥーリア嬢は一気にしゃがみ込んで、その拘束から逃れようとした。
それは上手くいっているように思えた。ただ私は、辺りに飛び散る赤いものを見て息を呑んだ。
トゥーリア嬢は、チャルリオ様から逃れてはいる。しかしその際に、どこかをナイフが掠めたらしい。それはきっと、チャルリオ様からしても予想外のことだったのだろう。彼も目を丸めている。
「チャルリオ!」
「何っ――!」
そんな風に彼が呆気に取られている間に、屋敷の玄関の戸が一気に開かれた。
そこから入って来たのは、リオネル様だ。やはり彼は既に裏に回っていた。そこでチャルリオ様の隙を、伺っていたのだ。
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