7 / 21
7.信じられない主張
しおりを挟む
「龍などという存在が、本当にいる訳がないだろう」
私は、王都に巨大な龍が近づいているという主張をした。
しかし、その主張は多くの人から受け入れられなかった。
龍などという存在は、おとぎ話の存在。実際にはあり得ない。その主張に、私の意見は押し潰されてしまうのだ。
「本当なんです。信じてください」
「信じられる根拠が何もないではないか」
「私は、確かにこの目で見たのです。この王都に近づいて来る龍の姿を……」
「残念ながら、そのようなものは監視網も確認していない」
私は、国王様に直談判していた。
だが、彼も他の者達と同じ意見のようだ。
悲しいことではあるが、私だけの意見は信じられないようである。私は、この国で最も強力な魔法使い、聖女であるというのに。
「このままでは、王都は大変なことになります。戦いの準備をしてください」
「……どうやら、お主は疲れているようじゃな」
「そんなことはありません」
「少し休んだらどうじゃ。そうだのう……一週間程、お主には休息する時を与えよう」
「一週間……」
国王様は、私に休暇を言い渡してきた。
私が疲れで幻覚を見ている。暗にそう言いたいのだろう。
しかし、私は正気である。決して疲れている訳ではない。一週間も休んでいる場合ではないのである。
「国王様、このままでは大変なことになります。何か対策をしなければならないのです」
「まさか、お主がそのような世迷いごとをいうようになるとは……」
「世迷いごとではありません……いいえ、例えそう思っていても構いません。せめて、最低限の戦の準備だけは進めておいてください」
「うむ……」
私の言葉は、国王様に届いていないような気がした。
一応返事はしているが、実際に何か対策をする気はない。そのように聞こえるのだ。
龍というものは、空想上の生き物。そんな考えが、国王様の頭の中にはあるのだろう。
だが、だからといって、ここまで信じられないものなのだろうか。私が多大な魔力を持っていることは、国王様も知っているはずなのに。
結局、私の主張は一切受け入れられることはなかった。
誰も、私を信じてはくれなかったのである。
それがどうしたなのか、この時の私には少しわからなかった。
聖女という偉大な地位に就いている私の言葉に、信憑性がない。その状況には、どうにも少しだけ違和感があった。
それがわかったのは、この少し後のことである。
それには、私という人間の森で生まれ育ったという特別な出自が関係していたのだ。
私は、王都に巨大な龍が近づいているという主張をした。
しかし、その主張は多くの人から受け入れられなかった。
龍などという存在は、おとぎ話の存在。実際にはあり得ない。その主張に、私の意見は押し潰されてしまうのだ。
「本当なんです。信じてください」
「信じられる根拠が何もないではないか」
「私は、確かにこの目で見たのです。この王都に近づいて来る龍の姿を……」
「残念ながら、そのようなものは監視網も確認していない」
私は、国王様に直談判していた。
だが、彼も他の者達と同じ意見のようだ。
悲しいことではあるが、私だけの意見は信じられないようである。私は、この国で最も強力な魔法使い、聖女であるというのに。
「このままでは、王都は大変なことになります。戦いの準備をしてください」
「……どうやら、お主は疲れているようじゃな」
「そんなことはありません」
「少し休んだらどうじゃ。そうだのう……一週間程、お主には休息する時を与えよう」
「一週間……」
国王様は、私に休暇を言い渡してきた。
私が疲れで幻覚を見ている。暗にそう言いたいのだろう。
しかし、私は正気である。決して疲れている訳ではない。一週間も休んでいる場合ではないのである。
「国王様、このままでは大変なことになります。何か対策をしなければならないのです」
「まさか、お主がそのような世迷いごとをいうようになるとは……」
「世迷いごとではありません……いいえ、例えそう思っていても構いません。せめて、最低限の戦の準備だけは進めておいてください」
「うむ……」
私の言葉は、国王様に届いていないような気がした。
一応返事はしているが、実際に何か対策をする気はない。そのように聞こえるのだ。
龍というものは、空想上の生き物。そんな考えが、国王様の頭の中にはあるのだろう。
だが、だからといって、ここまで信じられないものなのだろうか。私が多大な魔力を持っていることは、国王様も知っているはずなのに。
結局、私の主張は一切受け入れられることはなかった。
誰も、私を信じてはくれなかったのである。
それがどうしたなのか、この時の私には少しわからなかった。
聖女という偉大な地位に就いている私の言葉に、信憑性がない。その状況には、どうにも少しだけ違和感があった。
それがわかったのは、この少し後のことである。
それには、私という人間の森で生まれ育ったという特別な出自が関係していたのだ。
84
あなたにおすすめの小説
彼女を選んだのはあなたです
風見ゆうみ
恋愛
聖女の証が現れた伯爵令嬢のリリアナは聖女の行動を管理する教会本部に足を運び、そこでリリアナ以外の聖女2人と聖騎士達と出会う。
公爵令息であり聖騎士でもあるフェナンと強制的に婚約させられたり、新しい学園生活に戸惑いながらも、新しい生活に慣れてきた頃、フェナンが既婚者である他の聖女と関係を持っている場面を見てしまう。
「火遊びだ」と謝ってきたフェナンだったが、最終的に開き直った彼に婚約破棄を言い渡されたその日から、リリアナの聖女の力が一気に高まっていく。
伝承のせいで不吉の聖女だと呼ばれる様になったリリアナは、今まで優しかった周りの人間から嫌がらせを受ける様になるのだが、それと共に他の聖女や聖騎士の力が弱まっていき…。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっていますのでご了承下さい。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
聖女ですが、大地の力を授かったので、先手を打って王族たちを国外追放したら、国がとってもスッキリしました。
冬吹せいら
恋愛
聖女のローナは、大地の怒りを鎮めるための祈りに、毎回大金がかかることについて、王族や兵士たちから、文句ばかり言われてきた。
ある日、いつものように祈りを捧げたところ、ローナの丁寧な祈りの成果により、大地の怒りが完全に静まった。そのお礼として、大地を司る者から、力を授かる。
その力を使って、ローナは、王族や兵士などのムカつく連中を国から追い出し……。スッキリ綺麗にすることを誓った。
【完】聖女じゃないと言われたので、大好きな人と一緒に旅に出ます!
えとう蜜夏
恋愛
ミレニア王国にある名もなき村の貧しい少女のミリアは酒浸りの両親の代わりに家族や妹の世話を懸命にしていたが、その妹や周囲の子ども達からは蔑まれていた。
ミリアが八歳になり聖女の素質があるかどうかの儀式を受けると聖女見習いに選ばれた。娼館へ売り払おうとする母親から逃れマルクト神殿で聖女見習いとして修業することになり、更に聖女見習いから聖女候補者として王都の大神殿へと推薦された。しかし、王都の大神殿の聖女候補者は貴族令嬢ばかりで、平民のミリアは虐げられることに。
その頃、大神殿へ行商人見習いとしてやってきたテオと知り合い、見習いの新人同士励まし合い仲良くなっていく。
十五歳になるとミリアは次期聖女に選ばれヘンリー王太子と婚約することになった。しかし、ヘンリー王太子は平民のミリアを気に入らず婚約破棄をする機会を伺っていた。
そして、十八歳を迎えたミリアは王太子に婚約破棄と国外追放の命を受けて、全ての柵から解放される。
「これで私は自由だ。今度こそゆっくり眠って美味しいもの食べよう」
テオとずっと一緒にいろんな国に行ってみたいね。
21.11.7~8、ホットランキング・小説・恋愛部門で一位となりました! 皆様のおかげです。ありがとうございました。
※「小説家になろう」さまにも掲載しております。
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
聖女に巻き込まれた、愛されなかった彼女の話
下菊みこと
恋愛
転生聖女に嵌められた現地主人公が幸せになるだけ。
主人公は誰にも愛されなかった。そんな彼女が幸せになるためには過去彼女を愛さなかった人々への制裁が必要なのである。
小説家になろう様でも投稿しています。
無能と罵られた私だけど、どうやら聖女だったらしい。
冬吹せいら
恋愛
魔法学園に通っているケイト・ブロッサムは、最高学年になっても低級魔法しか使うことができず、いじめを受け、退学を決意した。
村に帰ったケイトは、両親の畑仕事を手伝うことになる。
幼いころから魔法学園の寮暮らしだったケイトは、これまで畑仕事をしたことがなく、畑に祈りを込め、豊作を願った経験もなかった。
人生で初めての祈り――。そこで彼女は、聖女として目覚めるのだった。
婚約破棄でも構いませんが国が滅びますよ?
亜綺羅もも
恋愛
シルビア・マックイーナは神によって選ばれた聖女であった。
ソルディッチという国は、代々国王が聖女を娶ることによって存続を約束された国だ。
だがシェイク・ソルディッチはシルビアという婚約者を捨て、ヒメラルダという美女と結婚すると言い出した。
シルビアは別段気にするような素振りも見せず、シェイクの婚約破棄を受け入れる。
それはソルディッチの終わりの始まりであった。
それを知っているシルビアはソルディッチを離れ、アールモンドという国に流れ着く。
そこで出会った、アレン・アールモンドと恋に落ちる。
※完結保証
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる