誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗

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17.逃げまとう人々

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「……あれは」

 空に飛び立った私は、魔力を集中させて遥か遠くのエルドー王国の王都を見ていた。
 そこには、かつて夢で見た光景が広がっている。燃え盛る町、逃げまとう人々。それは、驚くべき程に夢と合致している。

「……」

 私は、エルドー王国に対して恨みを抱いている。
 この精霊の森を汚したことは、絶対に許せないことだ。

 だが、それでもこの光景に何も思わない訳ではない。
 流石に、心が痛んでしまうのだ。

 あの国でただ暮らしている人々が、ここまで痛めつけられていいのだろうか。
 私は、そんなことを思い始めていた。

 いや、それはもしかしたら、ずっと思っていたことなのかもしれない。
 私は、確かに信じてもらえなかった。精霊の森で生まれ育った。それを理由に、馬鹿にされたりしたことは、紛れもない事実である。

 ただ、それでも、振り返ってみれば、あの国の人々に救われたこともあったはずだ。
 例えば、この森で私を見つけた兵士達は、私をどのように扱っただろうか。森に捨てられた少女を、彼らはただ必死に助けようとしただけである。
 その少女は、丁重に扱われた。それは、大きな魔力を持っていたからだ。だが、私に教育をしてくれた人達は、私に対して下心だけ接していただろうか。

「あの国を許すことはできない……あそこは、私が生きるべき場所ではない。でも……私がもらったあの優しさの分だけには、報いるべきなのかもしれない。それに、何より……」

 私にとって、あの国は恨むべき国だ。
 だが、その全てを否定することはできない。中には許せない人もいるが、だからといってここまでの報いを受けていい訳ではないだろう。

 それに、私にはもう一つあの国を助ける理由があった。
 いや、それは正確には正しくない。私にあるのは、あの龍を止める理由だ。

 怒りに任せて、全てを破壊する。そんなことをして、あの龍は本当に満足するだろうか。
 そんなはずはないと私は思っている。ただ、虚しい気持ちになるだけのはずだ。

 彼の根底には、確かな優しさがある。あの大樹に対する大きな愛がある。それは、まず間違いない。
 復讐そのものは否定しようとは思わない。だが、今の彼はただ無差別に破壊をしているだけだ。それはいずれ、彼に後悔の念を抱かせることになるだろう。

「止めなければならない……そうだよね、お母さん。だって、あの龍は、私の……お父さんなんだから」

 私の言葉に、誰かが頷いてくれたような気がした。
 それを認識してから、私は進む。目指すは、あの龍である。私は、父を止めるのだ。
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