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15.交流の中で
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民と交流する。それも、聖女の役割の一つだ。
という訳で、私は王都やその他の町から集まった人達と交流している。時には激励したり握手したり、それはそれで中々に大変なことだ。
「聖女様、頑張ってください」
「ありがとうございます」
優しそうなお婆さんと握手をしてから、私は一度深呼吸した。
色々な人と話したからか、少し喉が渇いてきた。これからも喋る訳だし、少し潤いが欲しい。
「アルティア……」
「うん?」
そこで私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。それは、女性の声だ。どこかで聞き覚えがあるような声である。
そもそもの話、ここにいる人達は私のことを聖女と呼ぶ。本名で呼ぶ人、増してや敬称もつけないなんてあり得ない。
ということは、知り合いだろうか。しかし、仮に孤児院の皆とかだったら、すぐにわかるし、心当たりがまったくない。
「アルティア、私よ」
「……あなたは」
目の前に現れた女性の顔を見て、私はその動きをゆっくりと止めることになった。
そこにいる人物の顔を、私は知っている。少し老けてはいるが、それでもその顔を間違えるはずはない。
「あ、あなたは……」
「ええ、あなたのお母さんよ? わかる?」
私に話しかけてきた女性は、ゆっくりとそう言ってきた。
その言葉に、私は固まる。その人物が、私の前に現れるとは思ってもいなかったからだ。
喉が渇いていることもあって、私の口からは言葉が出て来ない。何も言えなくなってしまっている。
「母親?」
「聖女様の?」
「確か、孤児院の出身だって聞いたけど……」
そこで周囲の人々が、口々に話し始めた。
私の出身が孤児院であるということは、周知の事実だ。ただ、どうして孤児院に入ったのかなどは明らかにしていない。
そこまでわかっているからこそ、母親が現れたという事実に、周囲の人々は揺れて始めている。母と名乗る人物の登場に、皆が動揺しているのだ。
「そう……私は、この子の母親です! 事情があって孤児院に預けていましたが、会いにきました。私はこの子の母親ですから!」
その動揺を、母は見逃さなかった。
彼女は、声高々に私の母であることを宣言し始めた。
それは、わざわざ喧伝するようなことではない。故に私は、母が何をしようとしているのかを理解した。
どうやら、彼女は私が聖女になったことによって、その甘い汁を吸いに来たらしい。
彼女がそういう人間であるということはわかっていたことだ。しかし、しばらく離れている間に私はそれを忘れてしまっていたのかもしれない。
私は、判断を誤ったことを悟った。呆気に取られている場合ではなかったのだ。私は母の言葉をすぐさま否定しなかったことを後悔するのだった。
という訳で、私は王都やその他の町から集まった人達と交流している。時には激励したり握手したり、それはそれで中々に大変なことだ。
「聖女様、頑張ってください」
「ありがとうございます」
優しそうなお婆さんと握手をしてから、私は一度深呼吸した。
色々な人と話したからか、少し喉が渇いてきた。これからも喋る訳だし、少し潤いが欲しい。
「アルティア……」
「うん?」
そこで私の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。それは、女性の声だ。どこかで聞き覚えがあるような声である。
そもそもの話、ここにいる人達は私のことを聖女と呼ぶ。本名で呼ぶ人、増してや敬称もつけないなんてあり得ない。
ということは、知り合いだろうか。しかし、仮に孤児院の皆とかだったら、すぐにわかるし、心当たりがまったくない。
「アルティア、私よ」
「……あなたは」
目の前に現れた女性の顔を見て、私はその動きをゆっくりと止めることになった。
そこにいる人物の顔を、私は知っている。少し老けてはいるが、それでもその顔を間違えるはずはない。
「あ、あなたは……」
「ええ、あなたのお母さんよ? わかる?」
私に話しかけてきた女性は、ゆっくりとそう言ってきた。
その言葉に、私は固まる。その人物が、私の前に現れるとは思ってもいなかったからだ。
喉が渇いていることもあって、私の口からは言葉が出て来ない。何も言えなくなってしまっている。
「母親?」
「聖女様の?」
「確か、孤児院の出身だって聞いたけど……」
そこで周囲の人々が、口々に話し始めた。
私の出身が孤児院であるということは、周知の事実だ。ただ、どうして孤児院に入ったのかなどは明らかにしていない。
そこまでわかっているからこそ、母親が現れたという事実に、周囲の人々は揺れて始めている。母と名乗る人物の登場に、皆が動揺しているのだ。
「そう……私は、この子の母親です! 事情があって孤児院に預けていましたが、会いにきました。私はこの子の母親ですから!」
その動揺を、母は見逃さなかった。
彼女は、声高々に私の母であることを宣言し始めた。
それは、わざわざ喧伝するようなことではない。故に私は、母が何をしようとしているのかを理解した。
どうやら、彼女は私が聖女になったことによって、その甘い汁を吸いに来たらしい。
彼女がそういう人間であるということはわかっていたことだ。しかし、しばらく離れている間に私はそれを忘れてしまっていたのかもしれない。
私は、判断を誤ったことを悟った。呆気に取られている場合ではなかったのだ。私は母の言葉をすぐさま否定しなかったことを後悔するのだった。
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