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26.終わりと始まり(モブ視点)
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ズウェール王国の第三王子であるグーゼスは困り果てていた。王城内で、異変が起こっていたからである。
それが、何かしらの魔法であるということは、すぐにわかった。聖女の部下達が、それを成し遂げたことも、彼は理解していた。曲がりなりにも、聖女の直属の上司だった彼にとって、それを理解するのは簡単だったのだ。
だが、それをどうにかする力は、彼にはなかった。そのため、王城の廊下でただ床に寝転ぶだけなのである。
「はあはあ……どうすればいい」
グーゼスは、ゆっくりと地を這って行く。このまま自分がここにいれば、どうなるかも彼は理解しているからだ。
現在、自分に魔法が行使されているということは、近くにそれを使っている者がいるということである。その者達に、彼は捕まる訳にはいかないのだ。
「おい、あれを見ろ!」
「グーゼスだ!」
「くっ……」
そんなグーゼスの願いも虚しく、彼は見つかってしまった。そのことに、彼は震える。これからどうなるのか、それに恐怖しながら。
◇◇◇
エルーシャとレイオスは、王都の暴動を見つめていた。
彼らは、ついに王城まで入り込んでいる。どうやら、捕まっていた部下達が反逆した結果、王城の門が開かれたようだ。
城の中には、王族達がいる。その者達がどうなるのかを二人は理解していた。
それは、当然のことなのかもしれない。彼らが今までしてきたことを考えれば。
「国の中枢を担う魔法使い達を束ねていた聖女が、あんな形でいなくなったことは、この国の破滅のきっかけとして当然のものだったのかもしれないわね」
「ああ、そうだな……だが、これも無理な発展のつけを払わされているということなのだろう。あの王族達は、部下を道具だと思い過ぎた」
二人も、王族達には恨みがある。だが、この結末に対して喜ぶ気概は湧いてこなかった。
王城内に入っていく人々よりも実害を受けたはずの二人は、そんな感想しか抱けないのである。何故かこの結末に、虚しささえ覚えている程だ。
「まあ、何はともあれ、これで終わったということよね……」
「ああ、そうだな……これでズウェール王国はなくなるだろう。新たなる国が生まれるか、はたまた他の国に取り込まれるか……」
「ええ、そうね……そう考えると、これは終わりというよりも始まりなのかもしれないわね」
二人は、そんな会話を交わしていた。
これからも、ズウェール王国、いやズウェール王国だった国には変化が起こるだろう。二人は、それを見守るつもりである。最後まで見届けることが、自分達の役割だとそう思っているからだ。
それが、何かしらの魔法であるということは、すぐにわかった。聖女の部下達が、それを成し遂げたことも、彼は理解していた。曲がりなりにも、聖女の直属の上司だった彼にとって、それを理解するのは簡単だったのだ。
だが、それをどうにかする力は、彼にはなかった。そのため、王城の廊下でただ床に寝転ぶだけなのである。
「はあはあ……どうすればいい」
グーゼスは、ゆっくりと地を這って行く。このまま自分がここにいれば、どうなるかも彼は理解しているからだ。
現在、自分に魔法が行使されているということは、近くにそれを使っている者がいるということである。その者達に、彼は捕まる訳にはいかないのだ。
「おい、あれを見ろ!」
「グーゼスだ!」
「くっ……」
そんなグーゼスの願いも虚しく、彼は見つかってしまった。そのことに、彼は震える。これからどうなるのか、それに恐怖しながら。
◇◇◇
エルーシャとレイオスは、王都の暴動を見つめていた。
彼らは、ついに王城まで入り込んでいる。どうやら、捕まっていた部下達が反逆した結果、王城の門が開かれたようだ。
城の中には、王族達がいる。その者達がどうなるのかを二人は理解していた。
それは、当然のことなのかもしれない。彼らが今までしてきたことを考えれば。
「国の中枢を担う魔法使い達を束ねていた聖女が、あんな形でいなくなったことは、この国の破滅のきっかけとして当然のものだったのかもしれないわね」
「ああ、そうだな……だが、これも無理な発展のつけを払わされているということなのだろう。あの王族達は、部下を道具だと思い過ぎた」
二人も、王族達には恨みがある。だが、この結末に対して喜ぶ気概は湧いてこなかった。
王城内に入っていく人々よりも実害を受けたはずの二人は、そんな感想しか抱けないのである。何故かこの結末に、虚しささえ覚えている程だ。
「まあ、何はともあれ、これで終わったということよね……」
「ああ、そうだな……これでズウェール王国はなくなるだろう。新たなる国が生まれるか、はたまた他の国に取り込まれるか……」
「ええ、そうね……そう考えると、これは終わりというよりも始まりなのかもしれないわね」
二人は、そんな会話を交わしていた。
これからも、ズウェール王国、いやズウェール王国だった国には変化が起こるだろう。二人は、それを見守るつもりである。最後まで見届けることが、自分達の役割だとそう思っているからだ。
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