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119.お互いの思い
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「それでは、ルミーネの事件はそれで終わったんですね?」
「ええ、そうなんです」
事件が終わって、私はアルヴェルド王国のグランゼンまで戻って来ていた。
今私がいるのは、ナルキアス商会の屋敷である。そこで、スライグさんと話しているのだ。
「無事に終わって、何よりです。あなたがこうして帰って来てくれて、本当に良かった」
「ええ、正直、私も安心しています」
スライグさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
本当に、全てが無事に終わって良かったと思う。こうして、またこの町に帰って来られたことは、何よりも幸福なことである。
「それにしても、彼女は人の命を奪う気はなかったのですね……」
「ええ、そうみたいです」
「僕に対して、あの忠告だけで済ませたのも、それが理由だったのでしょうか?」
「多分、そうだと思います」
ルミーネは、スライグさんに幻影によって忠告した。それは、スライグさんを傷つけないための措置だったのだ。
根本的に、彼女は優しい人間だったのかもしれない。長い年月で狂ってしまったようだが、命を奪う一線は守っていた所から、そのように考えられるだろう。
「彼女は、どうなるんですか?」
「わかりません……ケルディス様も、諸々の事情を考慮するとは言っていましたが、どうなるかはわかりません」
「そうですか……」
ルミーネの身柄は、現在ケルディス様が預かっている。
彼は、寛大な王族だ。ルミーネの事情に対しても、ある程度の理解は示してくれるだろう。
ただ、それを考慮しても、彼女には確かな罪がある。どうなるかは、まだわからないのだ。
「……それで、ルルメアさんは、これからどうされるつもりなんですか?」
「ああ、私は元の生活に戻ろうと思っています……まあ、元に戻るといっても、あの生活はかなり短い間だった訳ですけど……」
「そうですか」
私は、トゥーリンの定食屋で働くつもりである。
トゥーリンさんやナーゼスさんは、私を待つと言ってくれていた。そんな二人の思いに応えるためにも、私はあそこに戻ろうと思っている。
ケルディス様から、アルヴェルド王国の魔法関連の重役に就かないかともいわれたが、それは断った。私はもう、高い地位など必要としていないのである。
「ルルメアさん、一つ言わせていただけませんか?」
「はい、なんですか?」
「あなたが、元の生活に戻る。それはきっと、一番いい結末でしょう。ですが、そんなあなたに僕は伝えたいんです。この思いを……」
「思い……?」
スライグさんの言葉に、私はゆっくりと息を呑んだ。
思いを伝えたい。そこから何が始まるかは予想できる。予想できるからこそ、私はとても緊張してしまっているのだ。
「ルルメアさん、あなたに僕の妻になってもらいたいのです」
「スライグさん、それは……」
予想していたこととはいえ、スライグさんの口から出たその言葉に、私は驚きを隠せなかった。
妻になってもらいたい。それは愛の告白だ。まさか、彼からそんなことを言われるとは思ってもいなかったことである。
「最近、僕はあなたのことばかり考えていました……それがどういうことなのか、ずっと考えて、結論が出たのです。僕は、あなたのことを愛しているのだと」
「そうだったんですね……」
「……思えば、最初に出会ったあの時から、僕はあなたに惹かれていたのかもしれません。本当に、あの時声をかけたのはナンパだったのではないかと最近では思っています」
スライグさんは、穏やかな笑みを浮かべていた。
そんな彼の表情を見ながら、私は少し考える。この告白をどう受け止めるべきなのかを。
答えは、すぐに出てきた。今までの彼とのやり取りを考えると、自然と答えは出てきたのである。
「……スライグさん、私もあなたのことが好きなんだと思います」
「そ、そうなんですか?」
「あなたの優しさに、私は何度も救われてきました……そんなあなたに、私は惹かれていたんです」
私は、スライグさんにゆっくりと答えを告げた。
彼の優しさに、私は今まで何度も救われてきた。その度に、私は彼のことを素晴らしい人だと思ったものだ。
「ありがとうございます……あなたにそう言ってもらえて、とても嬉しいです」
「私の方こそ、ありがとうございます。それとこれから、よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
私とスライグさんは、お互いにそのように挨拶した。
こうして、私はスライグさんと思いを伝え合ったのである。
「ええ、そうなんです」
事件が終わって、私はアルヴェルド王国のグランゼンまで戻って来ていた。
今私がいるのは、ナルキアス商会の屋敷である。そこで、スライグさんと話しているのだ。
「無事に終わって、何よりです。あなたがこうして帰って来てくれて、本当に良かった」
「ええ、正直、私も安心しています」
スライグさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
本当に、全てが無事に終わって良かったと思う。こうして、またこの町に帰って来られたことは、何よりも幸福なことである。
「それにしても、彼女は人の命を奪う気はなかったのですね……」
「ええ、そうみたいです」
「僕に対して、あの忠告だけで済ませたのも、それが理由だったのでしょうか?」
「多分、そうだと思います」
ルミーネは、スライグさんに幻影によって忠告した。それは、スライグさんを傷つけないための措置だったのだ。
根本的に、彼女は優しい人間だったのかもしれない。長い年月で狂ってしまったようだが、命を奪う一線は守っていた所から、そのように考えられるだろう。
「彼女は、どうなるんですか?」
「わかりません……ケルディス様も、諸々の事情を考慮するとは言っていましたが、どうなるかはわかりません」
「そうですか……」
ルミーネの身柄は、現在ケルディス様が預かっている。
彼は、寛大な王族だ。ルミーネの事情に対しても、ある程度の理解は示してくれるだろう。
ただ、それを考慮しても、彼女には確かな罪がある。どうなるかは、まだわからないのだ。
「……それで、ルルメアさんは、これからどうされるつもりなんですか?」
「ああ、私は元の生活に戻ろうと思っています……まあ、元に戻るといっても、あの生活はかなり短い間だった訳ですけど……」
「そうですか」
私は、トゥーリンの定食屋で働くつもりである。
トゥーリンさんやナーゼスさんは、私を待つと言ってくれていた。そんな二人の思いに応えるためにも、私はあそこに戻ろうと思っている。
ケルディス様から、アルヴェルド王国の魔法関連の重役に就かないかともいわれたが、それは断った。私はもう、高い地位など必要としていないのである。
「ルルメアさん、一つ言わせていただけませんか?」
「はい、なんですか?」
「あなたが、元の生活に戻る。それはきっと、一番いい結末でしょう。ですが、そんなあなたに僕は伝えたいんです。この思いを……」
「思い……?」
スライグさんの言葉に、私はゆっくりと息を呑んだ。
思いを伝えたい。そこから何が始まるかは予想できる。予想できるからこそ、私はとても緊張してしまっているのだ。
「ルルメアさん、あなたに僕の妻になってもらいたいのです」
「スライグさん、それは……」
予想していたこととはいえ、スライグさんの口から出たその言葉に、私は驚きを隠せなかった。
妻になってもらいたい。それは愛の告白だ。まさか、彼からそんなことを言われるとは思ってもいなかったことである。
「最近、僕はあなたのことばかり考えていました……それがどういうことなのか、ずっと考えて、結論が出たのです。僕は、あなたのことを愛しているのだと」
「そうだったんですね……」
「……思えば、最初に出会ったあの時から、僕はあなたに惹かれていたのかもしれません。本当に、あの時声をかけたのはナンパだったのではないかと最近では思っています」
スライグさんは、穏やかな笑みを浮かべていた。
そんな彼の表情を見ながら、私は少し考える。この告白をどう受け止めるべきなのかを。
答えは、すぐに出てきた。今までの彼とのやり取りを考えると、自然と答えは出てきたのである。
「……スライグさん、私もあなたのことが好きなんだと思います」
「そ、そうなんですか?」
「あなたの優しさに、私は何度も救われてきました……そんなあなたに、私は惹かれていたんです」
私は、スライグさんにゆっくりと答えを告げた。
彼の優しさに、私は今まで何度も救われてきた。その度に、私は彼のことを素晴らしい人だと思ったものだ。
「ありがとうございます……あなたにそう言ってもらえて、とても嬉しいです」
「私の方こそ、ありがとうございます。それとこれから、よろしくお願いします」
「ええ、よろしくお願いします」
私とスライグさんは、お互いにそのように挨拶した。
こうして、私はスライグさんと思いを伝え合ったのである。
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