婚約破棄されてから義兄が以前にも増して過保護になりました。

木山楽斗

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8.婚約者の条件

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「イルネシア、わかっているとは思うがウェーデル伯爵家を再建するためには、お前の結婚というものは必要不可欠だ。今回は婚約破棄をされてしまったが、それでも新たな婚約が必要だということは変わらない」
「はい。それはもちろん、心得ています」
「マジェンド伯爵家のムドルグに関しては、俺が充分に罰を与えるとしよう。そして今回の件の過失は全て奴に押し付ける」

 カルードお義兄様の言葉に、私は静かに頷く。
 ムドルグ様に対してはほんの少しだけ申し訳ないが、ウェーデル伯爵家のためには、彼が全てにおいて悪かったということにするしかない。
 あれだけのことを言われた相手ではあるが、それでもそうするのは心が少し痛かった。とはいえ私も貴族の端くれだ。その辺りは割り切ることにする。

「そしてお前の新しい婚約であるが、俺がその相手を選ぶとしよう」
「え?」

 カルードお義兄様がとても優しい顔で発した言葉に、課題に取り組み始めていたクレリナ嬢が変な声を出して反応した。
 私とお義兄様は、そちらの方に視線を向ける。すると、目を丸めた彼女の姿が見えた。

「クレリナ、聞いても良いとは言ったが、口を挟んで良いとは言っていないぞ?」
「いやいや、お兄様がとんでもないことを言っているからですよ」
「とんでもないこと? 何の話だ?」
「イルネシアお姉様の婚約者を、お兄様が選ぶなんて……そんなの無理な話ですよ。その厳し過ぎるお眼鏡にかなう人なんて、いる訳ないんですから!」

 クレリナ嬢は、カルードお義兄様のことを力説していた。
 それに私は、少し驚く。カルードお義兄様が、そのことにそんなに悩むような人だとは思っていなかったからだ。

 優秀なお義兄様のことだから、卒なく良い人を紹介してくれるものではないだろうか。
 いや、婚約者を探すということに関しては、そういう訳にもいかないのかもしれない。色々な条件に見合った人がそもそもいるのかもわからないのだし、その可能性はある。

「何を言うかと思えば、下らない心配をするな。俺はすぐにでも、イルネシアに相応しい相手を見つけてやる」
「それじゃあ、抽象的でも良いですから、イルネシアお姉様の相手として適切な人というのを教えてくださいよ」
「少なくとも侯爵家の令息以上の地位は必要であるだろうな。性格は穏やかな方が良い。しかしいざという時に頼りにならない者は駄目だ。まあそれ以外にも必要なことはあるが、とりあえずはそんな所か」
「ほら、すごいこだわりがあるじゃないですか」

 クレリナ嬢の言葉に、カルードお義兄様はつらつらと条件を述べ始めた。
 それに対して、クレリナ嬢は冷たい目を向けている。どうやらカルードお義兄様の主張に、色々と言いたいことがあるらしい。
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