最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか

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弟四章『地下に煌めく悪意の星々』

エピローグ

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 エピローグ


 ウーエイたちを逃した二日後、俺たちはウータムにある王城に召喚されていた。
 謁見の間に並ぶ俺たちに、並んで座るハイン国王とエルサ姫が真っ直ぐな目を向けていた。
 すでに俺たちと同行した騎士から話を聞いていたのだろう、ハイン国王は厳しい表情ながらも穏やかに告げた。


「クラネス・カーターを初めとした、勇敢なる者たちよ。此度の件、大義であった。逃がした者たちがいるとのことだが、それでも何人かを捕まえることができたのは、御主らの活躍があってのことだ」


「ありがとうございます。ただ、大物を取り逃したのは悔やまれます。これで諦めるとは思えませぬので、老婆心ながら申し上げますが、くれぐれも警戒を怠ることがなきよう、お願い申し上げます」


「ふむ。クラネスの忠告、わたしも同意見だ。二度と巫山戯た真似が出来ぬよう、奴らの侵入を防いでみせよう。それで、だ。そのためにも是非に、御主らの協力を願いたい。そのためにも、このウータムの近くにある土地を、新たな領地として譲渡をしようと考えておるが――受けてくれるか?」


「……それは」


 俺に商人を辞めて、貴族として国を護れってことだ。
 だけど、それは――今まで拒否し続けてきたことでもある。国王に対し、俺の意見は――不敬に当たるのだろうけど、ここで自分の願望を挫くのは、転生した命とはいえ――いや、転生した命だからこそ、自分の意志を曲げたくない。
 俺は国王へ深々と頭を下げながら、口を開いた。


「折角のお誘いではありますが……わたしには荷が勝ちすぎます。ですが、その役目は、共に戦ってくれたエリー――フォンダント侯爵家の末娘こそ相応しいと考えます」


「クラネス……さん。それは――」


 なにかを言いかけたエリーさんの発言を、俺は片手で制した。


「わたくしは、今後も助力を惜しみはしません。旅をすることで、情報収集をすることも可能でしょう」


「ふむ……なるほどな。フォンダント侯爵家の御令嬢殿。そなたの考えを聞きたい」


「わたくしは――」


 言葉を途切れさせたエリーさんは、姿勢を正した。


「確かに、フォンダント侯爵家を存続させるためには、クラネスさんや国王様の案が最良なのでしょう。ですが、わたくしとしては、このままクラネスさんの隊商に同行したいと思っております。チャーンチの同行を探るため――わたくしの魔術は有用でしょう。ここラオン国は、わたくしが逃げ落ちた場所ではありますが、今やチャーンチの魔の手から身を護れる、安住の土地となりました。そのための努力を、続けさせて下さい」


 エリーさんの返答に、ハイン国王は唸り声をあげた。
 重く苦しい空気を払うように、国王の隣でエルサ姫がポンと手を打った。


「エレノア・フォンダント様の決意、このエルサは感服致しましたわ。逃げたチャーンチの動向も気になりますし、情報収集は国を護ることの要となりましょう。お父様――ここはむしろ、彼らを協力するべきだと思いますわ」


 エルサ姫の意見を聞いて、ハイン国王は複雑な顔をした。
 国防、人材の確保、そして恩義と忠誠心――それらを頭の中で天秤にかけたのだろう、ハイン国王は大きな溜息を吐いた。


「わかった。御主らの意志を尊重しよう。だが、奴らの動向は探ってもらうぞ。定期連絡の手段は、ミロス公爵から伝えさせよう」


「ありがとうござます。あともう一つ、お願いが御座います」


「……なんだ、申してみよ」


「はい。周辺国だけでなく、一つでも多くの国に、チャーンチや彼らの工作内容を伝えて欲しいのです。それにより、チャーンチ自体の活動を封じ込めることができるかもしれません」


「ふむ……要するに、チャーンチのことを周知させることで、共同で警戒をすることができると?」


「はい。ほかにも、多くの国が共同で、チャーンチに圧力をかけることもできるでしょう」


「なるほどな。巧くいくかはわからぬが、やってみる価値はあろう」


 ハイン国王が小さく頷くと、報酬らしい革袋が渡されたことで、俺たちとの謁見が終わった。
 さて――有言実行をしなくちゃな。俺は一種の覚悟を旨に、王城をあとにした。

   *

 夜の帳が降りた森の中を、一人の男が歩いていた。
 王城の使用人が着ている服装が、泥や植物の汁で汚れている。疲労の濃い顔には、狂気の色が宿っていた。
 頭髪の薄い、小太りの男は、木の幹に凭れながら、虚空を睨んだ。


「ダナ――ダナめ! このダレスが、仲間たちの恨みを――そうだ、このダレスが恨みを晴らしてやる!」


 暗がりの中、男の口には狂気じみた笑みが浮かんでいた。


                                    完

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本作を読んで頂き、誠にありがとうございます!

わたなべ ゆたか です。

というわけで、エピローグでございます。次回は……これからプロットを作りますので、でき次第となります(滝汗
二週間前後お待ちください

自国で活動している工作員――スパイなどを警戒、むしろ捕縛や暗殺までするのが、国防としては正常な対応ですね。そのための要員を確保するのも重要になります。

情報戦の一つですね。

情報戦として効果の高いものは、同じことを繰り返して喧伝する――ことですね。現代ではマスメディアを通して行われます。

これはマスメディアを使えば、大勢の思考を、無意識に特定の方向へ誘導できますから。工作活動としては、もっとも簡単で、効果のある方法です。

これを得意としているのは、現実世界では隣の赤い国とその近隣の国なんですが。自国だけじゃなく、他国のマスコミや映像制作会社に自国の人間を送り込み、資金提供をし――ってやってたりします。

マーベルなんかもスポンサードになってたからか、中国推しな作品も多くなってましたしね。

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

次回もよろしくお願いします!
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