龍馬の息子 知識チートで海援隊と共に明治を駆け抜け日露戦争を楽勝にする!

葉山宗次郎

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第一部 日露開戦編

総員第一種戦闘配置

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龍馬の息子 知識チートで海援隊と共に明治を駆け抜け日露戦争を楽勝にする!

 闇夜の中をその艦は進んでいた。
 前方の艦の艦尾灯を頼りに続行し向かうが、現在位置は分からない。
 電波式航法装置で分かってはいるが開発されたばかりで正常に作動しているか、いまいち自信が持てない。
 まして嵐の中での使用だ。故障していないか不安になる。
 目的地に向かっているのか、疑問に思う中、やがて、前方の水平線から光が見え始めた。

「前方に灯火を確認。旅順のロシア艦隊です!」

 ロシア艦隊から放たれる探照灯の光で旅順沖だと分かった。
 これから戦う敵に教えて貰うとは妙な気分だが、敵の所在が分かって丁度良い。

「……長官二二三〇です」

 隣にいたショートカットの女性が無表情に呟いた。予定通りの時刻に到着した。
 配備したばかりの電波航法装置のお陰で、迷うことなく旅順沖に到着できた。
 コンパスと海図だけだとどうしても誤差が出てくるが、各所に作られた電波灯台から出される電波を伝って、航行する方式ならキリの中でもある程度航行出来る。
 開発を強く主張した鯉之助はその成果を実感できて感無量だった。
 だがそのような事は顔には出さず鯉之助は綾波の艦長に頷くと命令する。

「総員第一種戦闘配置! 雷撃戦用意! 敵に対抗するため主砲にも装填。だが命令あるまで撃つな。戦闘旗はいつでも開けるよう固縛してマストに掲げておくんだ」
「了解、総員第一種戦闘配置」

 小さな声だが、彼女の命令を副長が復唱し全艦に通達される。
 床から艦内を乗員が移動する振動が響いてくる。
 一〇〇〇トンクラスの大型駆逐艦だが、乗員の動きは手に取るように分かる。
 先の訓練でこの艦の乗員が十分な技量を持っていることを確認しており鯉之助は、安心して艦の指揮を艦長に任せ敵の様子を把握することに集中できる。
 目的地に近いため、発見されることを恐れたが今日の月齢は二二で、月の出は日付が変わってからだ。
 そのため今は闇夜で見つかる確率は少ない。だが、深夜を過ぎれば月が昇り洋上を明るく照らしてくれる。
 奇襲するにはもってこいの時間だ。
 月が出ていない闇夜に紛れて敵に気づかれず接近し、月の出と共に、月光に浮かび上がる敵を攻撃できる。

「総員戦闘配置完了」

 鯉之助が命令を下してから五分ほどで終わった。
 こうしている間にも艦隊は目的地である旅順に向かっている。

「旅順の様子は?」
「特に変わった様子はない、と伝えてきています」

 通信員が報告した。
 ロシアは小国日本が大国ロシアに戦争を仕掛けることなどいないと侮っている。
 ロシア帝国は日本の最後通牒を交渉を優位に進めるためのブラフに思っているようだ。
 こちらは既にロシアに追い詰められて窮鼠と化し噛み付こうとしているのに、当のロシア人は寝ていてくれるようだ。
 旅順に入ったスパイと大連から漁船に偽装して偵察に出たスパイ船からの無線報告。
 そして鯉之助自身による偵察と記憶では、ロシア太平洋艦隊はほぼ全て旅順外港に停泊している。
 それでも確実ではなく、監視を置いて見張りをさせている。
 だが常時監視できるわけでもなく、配備された無線の調子もイマイチ気まぐれだ。
 投資した分、確実に作動して欲しいのだが、新製品に故障は付きもの。
 これまでの成果を信じて騙し騙し使うしか無い。

「旅順と大連においてある短波無線機は無事に作動していて欲しいんだけどな」

 これまでの報告からも、ロシア艦隊の配置は変わっていないはずだ。
 まして旧正月であり、旅順は祝いの真っ最中。太平洋艦隊の首脳部も大夜会を開いており、艦隊が動く予定はない。
 攻撃は成功するハズだった。
 しかし、攻撃予定時刻までまだ時間があった。警戒を緩めてはならないが、何もない退屈な時間だ。
 だから、隣にいた綾波艦長佐々木麗少佐が鯉之助に話しかけてきた。

「いよいよ開戦ですね」
「ああ」

 鯉之助は頷いた。
 すでに攻撃命令は下されていた。
 二月八日に三笠で大海令第一号が下された時、いや、すでに日露の外交関係が断交状態になっていた時に決まったも同然だった。
 そもそも日露関係は悪化の一途をたどっていた、日清戦争直後の三国干渉から義和団の乱、ロシアの満州撤兵問題、日露の勢力圏調停などが問題だった。
 日本は必至に外交努力を重ねてきたが日本を小国と侮るロシアは交渉の意志がなく、傲慢な態度と要求を突きつけてばかりだった。
 最早、改善関係は見込めず、それどころかシベリア鉄道の完成により日本の生存権さえ脅かされると判断した明治政府は対露開戦を決意。
 去年の一二月二八日に戦争準備の緊急勅令を出し戦争に備えた。
 鯉之助にも命令が下り、本日の開戦に備え準備をしていた。
 いや、生まれる前から備えていたと言っても過言ではなかった。
 開戦は覚悟していたが、いざその時が来ると緊張しそわそわする。だから艦長は鯉之助に話しかけてきたのだろう。
 それは鯉之助も同じで、緊張のせいか体が強ばった鯉之助は、気の利いた台詞を返せず都々逸を口ずさむ。

「三千世界のカラスを殺し主と朝寝がしてみたい わしとお前は焼山葛 裏は切れても根は切れぬ」
「よく謳いますね」

 後ろにいたポニーテールの女性、鯉之助の右腕であり参謀長の谷沙織大佐が言う。

「親父がよく口ずさんでいた。三代目として覚えて四代目に伝えろと言われたよ」

 肩をすくめて言う。
 若い内に亡くなった父親の知人が作った都々逸だそうだ。
 なかなか良い作品で韻も良く、思わず口ずさんでしまう。

「ええ、息子も覚えていますよ」
「それは良かった」

 鯉之助はほっとして答えた。
 ただ、気まずい雰囲気になり、話を逸らそうと機関室へ通じる伝声管に大声で叫ぶ。

「そろそろ、攻撃時刻だな。平賀造船大技士、機関の調子はどうだ?」
「機関異常なし。全艦正常です」

 機関室で機関の監督をしていた平賀譲は答えた。
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