不思議な夏休み

廣瀬純七

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あざとい写真

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日曜午後、恒例となった“入れ替わりメンバー”のファミレス会議。
ガラス張りの明るい窓際席に、見た目男女ペアの高校生四人が座っていた。

コーラ、オレンジジュース、アイスコーヒー、メロンソーダ。
それぞれのグラスが並ぶ中、健一の姿をした香織が、スマホを睨みつけていた。

「……あんたたち、これ、どういうつもり?」

そのトーンに、全員が「やばい」と察する。

「な、なにが?」
香織(の体)の健一が、あくまでしれっとした顔で返す。

「とぼけないのッ!!」

香織(in健一)はスマホの画面をテーブルの中央に突き出す。

表示されていたのは、**メイド喫茶『メルティ・ドリーム』のグッズ通販ページ**。
その中の一枚――

**『香織ちゃんスペシャルチェキ』:限定10枚/1000円/大好評につき再販決定!**

画像には、
スカートを膝で押さえるようにして\*\*“女の子座り”**をする香織(中身:健一)。
ほんのり赤らんだほっぺ、潤んだ瞳で**“上目遣い”\*\*。
「すきになっても、いい……?」という手書きメッセージ。

もう一枚は、愛(中身:秀樹)。
似たように女の子座りで、「ちょっとだけ甘えてもいい……?」の文字付き。

香織(in健一)が怒鳴った。

「**あざとすぎ!!!**」

「いやいや! これは店長の指示で! ほんと、そういうテーマで……」
健一(in香織)が言い訳を始めるが、香織の視線は鋭い。

「しかも“再販決定”って何よ! 限定でもないじゃない! なんで私の体と愛の体が、勝手に“男の欲望をくすぐるポーズ”させられてんの!?」

「演出だから……お客さんが喜ぶならと思って……」
秀樹(in愛)が蚊の鳴くような声で言う。

「いい? あんたたち、**私と愛の身体で、夏限定グッズだの、ボイス付きチェキだの、たっぷり稼いでんでしょ?**」

「……う、うん。まぁ、確かに……」
「香織ちゃんセット、売り切れになった……」

「じゃあ話は早いわ」

香織はにっこり微笑んだ。
が、その目はまったく笑っていない。

「**今日は、奢りね。**」

「……え?」

「え、じゃないッ! ファミレスランチ全員分、プラス、パフェもつけてね!」

健一と秀樹は、顔を見合わせて沈黙した。
すると隣で愛がコクコクと大きく頷いた。

「香織、正論。あたしも怒ってる。何よ、“妹キャラ風”って」

「“お兄ちゃんだいすきっ♡”ポーズもしてたよね」
「ぐぬぬぬぬ……!」

---

少し後

店員が大きなパフェを二つ持ってきた。

「お待たせしました~、チョコバナナスペシャルパフェと、季節のフルーツパフェです」

「は~い♡」
香織と愛は満面の笑みで手を挙げる。

その横で、健一と秀樹は、財布を開いて泣きそうな顔。

「……次は“ちょい泣き顔”のチェキが売れるらしいわよ!」
「やめてーっ……!」

---
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