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変身
しおりを挟む彼女――いや、元々は「彼」だった――は、鏡に映る姿を見て驚きを隠せなかった。そこに映っているのは、以前の自分とはまったく異なる、華奢な体つきと美しい顔立ちの若い女性だった。流れるような黒髪、柔らかな瞳、そして凛とした輪郭。まるで生まれつきの女性のように自然だった。
「これが……本当に、俺なのか?」
低くこぼれた声も、まるで別人のように高く、鈴の音のような響きに変わっていた。
テーブルの上には薄いマスクが置かれていた。それは奇跡的な技術で作られた「リアル・フェイスマスク」。触れると本物の皮膚のような感触があり、装着すればただ顔だけではなく、声や肌の質感までも完全に作り変えることができるという代物だった。特注品だったこのマスクを手に入れるために、彼は大金を費やし、何ヶ月も待ったのだ。
彼がなぜ女性に変身したのか、理由は一言では語れない。単なる興味ではなかった。彼にはどうしても近づかなければならない女性たちがいた。そして、そのためには「男の自分」では不可能なことがあまりに多すぎた。
新しい自分を確認するようにそっと手を動かし、鏡の中の顔に触れる。なめらかな頬、形の良い唇――どれもまるで生まれた時から彼女自身であるかのようだ。
「これで、ようやく第一歩だ。」
彼女の口元に浮かんだのは、かつての自分では決して見せなかった、計算された微笑みだった。
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