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命の誕生、そして新たな約束
しおりを挟む陣痛は奈々の体になった大輔にとって、これまで経験したことのない痛みだった。息を吸うことさえ忘れそうなほどの激痛に襲われながら、彼は奈々や医療スタッフの声に必死に応えた。
「大輔、頑張って! もう少しよ!」
奈々の体を持つ大輔は汗まみれになりながら、奈々(自分の体を借りている)が手を握るのを感じていた。彼女の声援が唯一の支えだった。
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#### **出産の瞬間**
最後の力を振り絞り、大輔は叫び声を上げながら力を込めた。そして、赤ん坊の泣き声が産声として響き渡った。
「おめでとうございます! 元気な女の子です!」
大輔は目を閉じ、全身の力が抜けるのを感じた。痛みは続いているはずなのに、それ以上に大きな達成感と安堵感に包まれていた。
「やった…生まれたんだな…」
そうつぶやいた瞬間、大輔の意識は遠のいていった。
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#### **目を覚ますと…**
大輔が次に目を覚ましたのは、静かな病室だった。目を開けると、自分が見慣れた手をしているのに気づいた。
「…あれ?」
その時、隣のベッドに座る奈々が、赤ちゃんを優しく抱きしめながら微笑んでいるのが見えた。奈々は大輔を見て、少し涙ぐみながら言った。
「おはよう、大輔。お疲れ様。」
「え…奈々? 俺の体…戻ってる?」
大輔は驚いて自分の体を確認する。間違いない、自分の体だ。
「そうみたい。赤ちゃんが生まれた時、私たち元の体に戻ったの。」
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#### **新たな約束**
奈々は大輔に赤ちゃんをそっと渡した。まだ小さな手で何かをつかもうとする仕草に、大輔は胸がいっぱいになった。
「この子…俺たちの赤ちゃんなんだな。」
「そうよ。あなたが命懸けで産んでくれた赤ちゃん。」
奈々は少し照れたように笑った後、決意に満ちた表情でこう言った。
「でもね、大輔。次は絶対に私が赤ちゃんを産むわ!」
「奈々…」
大輔は笑いながら頷いた。彼らの体験は異常ともいえる状況だったが、それが彼らをより強い絆で結びつけたのだ。
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#### **結び**
赤ちゃんを見つめながら、大輔は小さな命が持つ無限の可能性を感じていた。奈々もまた、母親としての決意を新たにしていた。
二人はこの不思議な経験を胸に、これからの人生を共に歩んでいくことを誓った。そして、新しい家族の一歩が静かに、けれど力強く始まったのだった。
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