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大輔の決意
しおりを挟む月が満ちる夜が近づいていた。奈々の体に入っている大輔と、大輔の体に入っている奈々は、次の満月の日にお守りを握りしめて元の体に戻れるように願う予定だった。しかし、満月の直前、状況は一変する。
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#### **突然の異変**
奈々の体に入った大輔は、最近体調の異変を感じていた。朝から吐き気が続き、食べ物の匂いに敏感になっていたのだ。最初は疲れやストレスだと思い、奈々に相談もせずにやり過ごそうとした。
しかし、ある日オフィスで同僚から声をかけられる。
「奈々さん、最近体調悪そうだけど…もしかして妊娠してるんじゃない?」
その言葉に大輔は笑うしかなかった。自分が妊娠するなんてあり得ない、と。
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#### **検査の結果**
それでも気になり、家に帰った大輔はドラッグストアで購入した妊娠検査薬を試してみることにした。結果は陽性。
「嘘だろ…こんなこと…」
大輔は奈々を呼び出し、検査結果を見せる。奈々の顔色が青ざめた。
「え、まさか…どういうこと? 私の体が妊娠してるの?」
二人は急いで病院に向かった。医師の診断でも妊娠は確定。胎児は既に心拍が確認できる段階だった。
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#### **決断の時**
家に帰った二人は無言のまま座り込んだ。奈々は頭を抱え、大輔は落ち着かない様子で部屋を歩き回る。
「満月の日に元に戻れば、この妊娠もきっと解決するはずだよな…」と大輔が口を開いた。
しかし奈々はそれを遮るように言った。
「でも…もし戻ったら、この赤ちゃんはどうなるの?」
その一言が大輔の心に深く刺さった。自分の体ではないとはいえ、今、この命を宿しているのは間違いなく奈々の体であり、大輔自身だった。
数日間、二人は何度も話し合った。そして、満月の夜が迫る中、大輔は決意した。
「俺、このまま奈々の体で赤ちゃんを産むよ。」
奈々は驚いた表情で大輔を見つめた。
「本当にいいの? 元の体に戻らないままで…?」
「正直怖いし、不安だらけだ。でも、この子には罪はないし、命を守りたい。それが俺たちに与えられた責任なんじゃないかって思うんだ。」
奈々は涙を流しながら頷いた。
「わかった…大輔、私も協力する。一緒に頑張ろう。」
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#### **新たな家族の始まり**
満月の夜、二人はお守りを握りしめて祈りを捧げた。しかし、元の体に戻りたいという願いではなく、新しい命を無事に育てられるように、と。
大輔はこれからの道のりが決して簡単ではないことを理解していた。それでも彼は、この経験を通じて新しい家族の形を受け入れる覚悟を決めていた。
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#### **結び**
数か月後、会社の人々は奈々(の体を借りている大輔)の妊娠を祝福した。奈々は大輔の体を借りて出産の準備を支え、大輔は「母親」としての役割を全うしていく。
体が入れ替わるという特別な状況の中で、大輔と奈々はこれまで以上に強い絆で結ばれていった。そして、彼らの新しい家族の物語が始まるのだった。
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