カオルとカオリ

廣瀬純七

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ドラマ撮影

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 放課後の教室。夕陽が西の窓から差し込み、机や椅子を黄金色に染めていた。

 「でね、こっちが構成案。全五話で、一話は“薫と香織の共存の日常”から始めて――」

 咲良は真剣な顔でノートをめくりながら、隣の席の香織と薫に説明していた。

 香織は口をぽかんと開けて、薫は眉を寄せて困惑顔。

 「……え、ちょっと待って、咲良。本当にやるの? あのドラマ計画」

 「え? だって香織が“バズるかも”って言ったじゃない」

 「う、うん……まぁ、言ったけど、あれは冗談っていうか、その場のノリで……」

 「私は本気だったよ。で、昨日のうちに構成案とキャラ設定、脚本メモまで書いた。あと、うちの放送部に頼んだら、撮影機材も貸してくれるって」

 「マジで動いてる!?」

 薫のツッコミに、香織は顔を引きつらせながらも笑った。

 「すご……咲良、本気すぎ」

 「ふふ。だって面白いじゃない? “実体験ベースのドラマ”って、リアリティあるし、何より――“秘密を抱えた青春”って、絶対刺さるって思うのよ」

 そう言って咲良はスマホを取り出し、「YouTubeチャンネル開設予定リスト」と名付けられたメモを見せた。

 **・仮タイトル:『私は、わたしたち。』**
 **・出演:薫(主演・本人役)、香織(主演・本人役)、咲良(脚本&副キャスト)**
 **・全5話構成(1話7分想定)**
 **・OPテーマ候補:「私は最強(カバー)」**
 **・撮影予定:校内・公園・カラオケボックス**

 「……思ったより本格的だな」

 「ちょっと待って、それって……私たち、自分の秘密を公開するってことじゃ……?」

 香織が不安そうに言うと、咲良は肩をすくめた。

 「もちろん、名前も設定もフィクションとして変えるよ。“双子の男女の魂が同居してる高校生の話”って、あくまで創作。香織と薫の実話ベースだけど、誰にもバレないようにする。演技力さえあればね?」

 そう言ってニヤリと笑った。

 「……へぇ」

 香織がその笑みに応えるように言う。

 「面白そうじゃん。どうせなら、思いっきりやろうよ。せっかく薫も“香織”を一週間も演じたんだし、役者デビューしちゃいなよ」

 「いや、俺は別に――」

 「脚本は咲良、主演は私と薫、撮影は放送部……編集は、あたしがやる!」

 「香織まで本気になった!? ていうか編集って、お前できたのかよ!」

 「ある程度は! 今どきスマホで何でもできるし、動画編集アプリとか使いこなしてるから!」

 香織は勝ち誇ったように親指を立てた。

 咲良は机をパンと叩いて立ち上がる。

 「じゃあ決まり! 今週末、第一話の撮影スタート! タイトルコール練習して!」

 「ま、マジかよ……」

 それでも、薫の頬が少し赤くなっているのは、まんざらでもなかった証拠だった。

 



 

 こうして――
 『私は、わたしたち。~ある高校生とふたつの心~』は、
 静かに、でも確実に、その第一歩を踏み出したのだった。

 数週間後。動画投稿された第一話は、意外にも再生回数が1万回を超えていた。

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