未来への転送

廣瀬純七

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20年後に

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再び未来の姿を確かめようと、リョウと沙織は20年後の世界へと旅立つ決意を固めた。10年前の転送装置での体験から、彼らは未来で何が起こるか予測がつかないことも理解していたが、今度こそ何も起こらないはずだと自分たちに言い聞かせていた。

装置が作動し、彼らの体を再び未来の光が包み込む。強烈な光と圧力を感じたのち、ふたりは未来の世界に着地した。しかし、またしても奇妙な違和感が全身に広がっていた。

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目を開けた瞬間、リョウは背中に重心を感じ、視界が妙に狭く感じられることに気づいた。ふと手を挙げて見ると、それは沙織の手だった。彼は再び沙織の体に入ってしまっていたのだ。

「またか…」リョウは信じられない気持ちで呟きながら周囲を見回した。

一方、沙織も状況を理解するのに数秒かかったが、目の前に見慣れた自分の姿をしたリョウがいるのを見て、再び入れ替わってしまったことを確信した。

「まさか、また入れ替わるなんてね…」沙織が少し笑いながら言うと、リョウも苦笑した。「全く油断ならないな、この転送装置ってやつは」とため息をつきながら答える。

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未来の街並みは20年の間にさらに進化していた。建物はすっきりとしたシルバーとブルーで統一され、ホログラムの広告が空中で舞い、空にはドローンが静かに飛び交っていた。リョウと沙織が歩いていると、ふと、どこか懐かしいような二人の姿が遠くに見えた。

それは20年後のリョウと沙織だった。二人は未来の自分たちに出会うために少しずつ近づき、目の前に立ち止まった。

「…これは驚いたな」20年後のリョウが、自分の若い頃の姿をした沙織に向かって静かに微笑んだ。年を重ねた未来のリョウは、穏やかな表情で落ち着いた雰囲気を漂わせていた。一方で、未来の沙織もまた、優しげで少し大人びた表情で、現在のリョウに微笑みかけた。

「まさか、二人ともまた入れ替わって来たのね?」20年後の沙織が微笑みながら言うと、リョウも沙織も思わず顔を見合わせて頷いた。

「どうしてこうなるのか分からないけど…」リョウが少し困惑しながら話しかけると、未来のリョウが静かに頷いて言った。「実は、入れ替わりはこれが初めてじゃない。私たちはこの20年間で、たびたび体を入れ替えながら生活してきたんだ」

「えっ、そんなに何度も?」沙織が驚きの声を上げると、未来の沙織もまた少し微笑みながら、「入れ替わるたびに、私たちはお互いのことをもっと深く知ることができたのよ。リョウの視点で物事を考えると、普段の生活で感じることもまったく変わってくるわ」と答えた。

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その後、ふたりは未来の自分たちとともにカフェに入り、彼らの人生について語り合った。リョウが20年後の自分に「お互いの体で生きることが、どれだけの影響をもたらしたのか」を尋ねると、未来のリョウは穏やかに話し始めた。

「たとえば、大きな決断をするときや、困難な場面に直面するとき、相手の視点で考えることで、自分の心の奥に潜む不安や焦りに気づけることもある。お互いにとって必要なのは、見えないものを共有し合うことなんだ」

未来の沙織もまた、「だからこそ、私たちは本当に強い絆を持っているの。どんな問題があっても、互いに支え合い、理解し合うことができるのよ」と優しい声で語った。

リョウと沙織はその言葉に深く頷き、自分たちが経験してきた困難が未来の自分たちを強くし、より深い愛情で結びつけていることを実感した。

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再び元の時代に戻る決意をしたリョウと沙織は、別れ際に未来の自分たちから一つのアドバイスを受け取った。

「これからもお互いにとっての一番の理解者でいてほしい。たとえ入れ替わっていなくても、相手の心を理解しようとすることが何より大切だから」

その言葉を胸に、二人は装置に乗り込み、未来の自分たちと再会を約束しながら、元の時代へと帰っていった。
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