未来への転送

廣瀬純七

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30年後

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リョウと沙織は、転送装置で体が入れ替わることが「当然のこと」と割り切るようになっていた。何度も未来へ行くたびに入れ替わりを経験し、その度に互いの視点から新しい発見や学びがあったからだ。転送装置に入るとき、ふたりはすでに覚悟を決めていた。

「さて、30年後の私になるわけだけど、どうなっているのかしら?」沙織がにっこり笑いながら装置に入ると、リョウも微笑みを返した。「もしお前の体になっていたら、しっかり沙織の気持ちを味わってみるよ」と少し冗談めかして言うと、沙織も「それは頼もしいわ」と答えた。

再び転送装置が作動し、未来の光が二人を包んでいく。そして、目を開けるとまたしても体は入れ替わっていたが、二人は慌てずに穏やかに状況を受け入れた。

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30年後の未来に着いた二人は、お互いの姿を見て思わず微笑んだ。リョウは沙織の体で長くなった白髪を触り、沙織はリョウの体で頬に刻まれた深いしわを手で撫でた。

「30年も経てば、私も立派におばあちゃんね」と沙織が冗談めかして言うと、リョウもリラックスした表情で「こっちはおじいさんってことか。悪くないよ」と答えた。二人は、この未来の姿にどこか懐かしさと親しみを感じていた。

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その日の午後、二人は30年後の世界を歩き回ることにした。街はさらに進化を遂げ、空中を無数の車が走り、デジタルなホログラムアートが街中に散りばめられている。人々もどこか穏やかで、街全体がゆっくりとしたリズムで動いているように感じられた。

その途中、未来のリョウと沙織の姿を発見した。二人は未来の自分たちに会うことを楽しみにしながら、そっと近づいていった。

「こんにちは、私たちも会えるのを楽しみにしていましたよ」と未来のリョウがにこやかに話しかけた。年を重ねた彼は穏やかな眼差しで二人を見つめ、その目には深い知恵と落ち着きが感じられた。

「また会えたのね、リョウ」と沙織も未来のリョウに微笑みを返す。「そして、あなたが未来の私ね」と自分の姿をした未来の沙織に声をかけた。

未来の沙織はやさしい微笑みで応じ、「あなたたちがまた未来に来ることを感じていたわ」と話し始めた。どうやら、入れ替わりが繰り返されるたびに、ふたりはお互いをより深く理解するだけでなく、未来の自分たちとも不思議なつながりを感じるようになっていた。

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夕暮れが迫る中、四人でカフェに入り、30年間に起こった様々な出来事を語り合った。未来のリョウは、自分たちが年を重ねたあとも、何度か体が入れ替わりながら人生を歩んできたことを教えてくれた。お互いの身体の不調や心の葛藤も共有することで、ふたりの絆はさらに深まってきたという。

「最初は奇妙だと思ったけれど、今では入れ替わることが二人の生活において大切な意味を持つようになっているんだ」と未来のリョウがしみじみと語った。

「入れ替わるたびに、相手の苦しみや幸せを自分ごとのように感じることができるから、二人で過ごす時間がより特別なものになるのよ」と未来の沙織も付け加えた。

リョウと沙織は、その言葉に深く頷き、自分たちの体験が未来でのさらなる愛情と理解へとつながることを確信した。

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未来の自分たちと過ごす最後の夜、リョウと沙織はふたりだけで歩きながら語り合った。彼らの心の中には、また新たな感謝と敬意が芽生えていた。

「私たちも、これから何度でもこうしてお互いを知り直していけるのね」と沙織がリョウの手を握りながら言った。リョウも頷きながら「きっと、次にまた未来に行くときも入れ替わるんだろうな。でも、それでいいと思う」と穏やかに微笑んだ。

そして、彼らは再び転送装置に足を踏み入れ、今度はさらに深まった絆を胸に、元の時代へと戻っていった。
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