宇宙人へのレポート

廣瀬純七

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二日目、大学へ

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翌朝、直人は見慣れない風景に包まれて目を覚ました。昨日の出来事が夢であればいいと願っていたが、手足の感覚が自分のものではないことをすぐに感じ取り、現実を思い知らされた。

「…やっぱり夢じゃなかったのか…」直人は布団から体を起こし、鏡を見て驚きの表情を浮かべる紗栄子の顔をした自分に小さくため息をついた。

その一方、紗栄子も同じように目を覚ましたが、彼女の混乱はさらに深いものだった。彼女は何度も寝返りを打っては、慣れない体の重みや筋肉の感覚に戸惑い、ようやく現実を認めざるを得なくなっていた。鏡の前に立ってみても、そこに映るのは直人の顔だ。

「直人の体のまま一日を過ごさないといけないなんて…どうしよう…」と、自分の声ではない低い声にまだ違和感を感じながら、紗栄子はつぶやいた。

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その日の午前中、二人はお互いの大学の授業に出席しなければならなかった。大学生活で入れ替わったことが一番わかりやすく現れるのは授業で、話す友人たちも、普段どおりの態度をとるように努めるのに苦労した。

紗栄子は、直人の友人たちが近づいてきて「お前、今日なんか変じゃね?」と言われ、慌てて適当な返事を返すことになった。緊張で手汗をかきながら、どうにかやり過ごしたものの、いくつかの質問にどう答えればいいのかわからず、冷や汗をかきっぱなしだった。

一方、直人も紗栄子の授業に出ることに不安を抱えていた。周りの女子学生たちから「昨日、何かあったの?」と尋ねられ、うまく笑顔を作りながら「ちょっと寝不足で…」と曖昧に答えるのが精一杯だった。

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昼休み、二人は大学近くのカフェで合流することにした。お互いの顔を見るなり、どっと疲れが出たような表情で椅子に座り込む。

「授業…どうだった?」直人が訊くと、紗栄子は深いため息をついた。

「もう最悪よ!周りから色んなこと聞かれるし、何答えていいのかわからなくて。あと、君の友達が君の冗談を期待してるみたいなんだけど…あれって普段どうやって返してるの?」

「そっか…確かに俺の友達、いつもふざけ合ってるからな。あんまり真面目に考えずに、適当に返せば大丈夫だよ」直人は微笑んで言ったが、その顔は紗栄子の顔なのでなんだか不思議な気持ちになった。

「でも、私の授業も結構キツかったよ。友達と話してると、変なこと言っちゃわないかって緊張しちゃってさ」

そうして二人は、今日も「宇宙人へのレポート」を書かなければならないことを思い出した。カフェのテーブルにスマートフォンを出し、それぞれの体験を記録することにした。

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**第二日目:直人のレポート**

> 今日は紗栄子の大学で一日を過ごしたけど、普段と違う友人関係に頭を使って大変だった。周りに気づかれないように振る舞うのは思った以上に疲れる。でも、紗栄子の生活や友達関係を体験するのは面白くもある。この調子で毎日やっていけるのかは、正直不安だけど、頑張ってみる。

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**第二日目:紗栄子のレポート**

> 今日は直人の授業に出たけど、周りの友達と会話するのが難しかった。直人みたいに冗談を言って返すのがどうしても自然にできない。毎日がこんな感じだと精神的に参っちゃいそう。でも、こうやって記録することで少し冷静になれるかも。

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こうして二人は、日々の奇妙な生活をレポートに記録し続けることになった。それは、お互いの生活に少しずつ入り込むことで、普段見えなかった一面を理解するための旅でもあった。
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