リボーン&リライフ

廣瀬純七

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女子の体力

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玄関のドアを閉めると、朝のひんやりした空気が肌に触れた。
制服のスカートがふわりと揺れ、昨日の自分とは少し違う感覚を覚える。

(よし、今日はメイクもしてるし……変じゃないはず)

門を出て通りに目をやった瞬間――

(あ……!)

遠くの交差点の向こうに、優斗の姿が見えた。
学生鞄を片手に、いつもの無造作な歩き方。
その後ろ姿に、優衣の胸がなぜか軽く跳ねた。

(今、追いつけば一緒に行ける……!)

反射的に足を踏み出し、小走りになる。
だが――

(……あれ、全然距離が縮まらない!?)

昨日までの「男子の足」感覚で走ったつもりだったが、体は思った以上に軽いのに、速度が出ない。
それどころか、髪が視界にかかるし、スカートの裾が脚にまとわりついて、思うようにストライドが取れない。

「……っ、はぁ、はぁ……な、なんでこんなに……!」

前方の優斗は、気づいていないのか、マイペースに歩き続けている。
追いかける優衣は、すぐに太ももがじんじんしてきた。

(くそっ……! 前の俺だったらとっくに追いついてたのに……!)

髪を片手で押さえ、スカートを気にしながら駆けるという、人生初の“女子高生ラン”を余儀なくされる。

(……なんかドラマっぽいけど、実際やるとめっちゃキツい!)

さらに呼吸も浅くなる。胸の上下動が大きくて、余計に走りづらい。

(これ……女子って、体育の持久走めっちゃ大変なんじゃ……)

そんなことを考えている間に、優斗は曲がり角に差し掛かり、視界から消えかける。

「ま、待ってってば……!」

必死で声を張り上げると、ちょうど振り返った優斗と目が合った。
彼は一瞬驚いたような顔をして、口を開く。

「……お前、なんでそんな息切らしてんだ?」

「そ、それは……!」

(言えるか! 女の子の体が想像以上に走れないからなんて!)

どうにか平静を装いながら、優衣は小さく笑ってみせた。

「……ちょっと、全力で走ってみたくなっただけ!」

優斗は小さく首を傾げたが、特に突っ込まずに歩みを緩めた。
その横に並んだ優衣は、内心で大きくガッツポーズを決める。

(……よし。なんとか追いついた)

ただし、呼吸が整うまでの数分間、優斗には話しかけられない状態だった。

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