リボーン&リライフ

廣瀬純七

文字の大きさ
9 / 11

朝のメイク

しおりを挟む
翌朝。
鏡の前で髪を結び直しながら、優衣はため息をついていた。

(やっぱり朝の支度って、男子のときより時間かかるな……)

ブラウスのボタンを留めるのにも、スカートのプリーツを整えるのにも、まだ手際が悪い。
制服姿は鏡越しに見るとそれなりに様になっている――はずだが、なんだか落ち着かない。

階段を降りて台所に向かうと、テーブルには朝食が用意されていた。
トースト、スクランブルエッグ、サラダ。
すでに新聞を広げている父と、スマホをいじる母。そして――

「おはよー、優衣」

「おはよ、優美」

ソファに腰掛けていた姉・優美が、にやっと笑った。
大学生にして、朝からやけにテンションが高い。

優衣が席に着き、トーストにかじりついたその瞬間――

「優衣! ちゃんとメイクしないと、彼氏の優斗君に嫌われるわよ!」

「ぶふっ!?」

盛大に牛乳を吹きかけるところだった。

「な、な、何言ってんの!? 彼氏じゃないし!」

「昨日だって一緒に帰ってきたんでしょ~? 家の前で楽しそうにおしゃべりしてさ~、あれ完全に青春の香りだったよ?」

「ち、違うってば! 隣の家だから一緒になっただけで――」

「はいはい、言い訳はもういいから。さ、こっち来なさい!」

「え、なにその急展開――」

返事を聞く前に、優美はガタッと立ち上がり、化粧ポーチを手に優衣の腕を引っ張った。

「ほら、座って。眉毛整えて、ちょっと色つけるだけで印象変わるんだから!」

「いやいやいや、私まだ初心者で――」

「大丈夫! 私に任せなさい!」

椅子に押し込まれた優衣は、抵抗もむなしく、顔をぐいっと持ち上げられる。

「まずは眉~。……おお、形は悪くないね。でも薄いからちょっと足して……はい、次チーク!」

「うわっ、なんか顔が熱っ――」

「ほら、笑って! ニッコリ!」

「え、あ、こ、こう?」

「うんうん、その調子~。ほら可愛いじゃん!」

(うわ~~なんだこれ~~! 中身おっさんなのに女子力イベント発生してる~~!)

「はい、最後にリップ! これ塗るだけで顔色明るくなるんだから!」

「え、でもこれちょっとピンクすぎない?」

「男子はこういうの好きなの!」

「だから彼氏じゃないってば!」

塗り終わった優美は、鏡を優衣の前に差し出した。

「じゃーん! 我ながらいい出来!」

鏡の中には――ほんのり頬が色づき、唇に艶を帯びた女子高生が座っていた。
それは確かに、昨日までよりも少し大人びて見える。

「……なんか、別人みたい」

「でしょ? これで優斗君もイチコロよ!」

「イチコロにする予定ないから!!」

口では否定しながらも、優衣は鏡から目を離せなかった。

(……もし、これであいつが驚いたら……ちょっとだけ、面白いかも)

そんな小さな悪戯心を胸に、優衣の2日目の朝は始まった。

---

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

恋愛リベンジャーズ

廣瀬純七
SF
拓也は、かつての恋人・純への後悔を抱えたまま生きてきた。ある日、過去へ戻れる不思議なアプリを手に入れるが戻った先で彼を待っていたのは、若き日の純ではなく――純そのものになってしまった自分自身だった。かつての恋人とやり直すはずが、過去の自分を相手に恋をするという奇妙で切ない関係が始まっていく。時間と心が交差する、不思議な男女入れ替わりストーリー。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

ボディチェンジウォッチ

廣瀬純七
SF
体を交換できる腕時計で体を交換する男女の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

宇宙人へのレポート

廣瀬純七
SF
宇宙人に体を入れ替えられた大学生の男女の話

身体交換

廣瀬純七
SF
大富豪の老人の男性と若い女性が身体を交換する話

処理中です...