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近すぎる距離
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「朝から元気だな!」
優斗が笑いながら言ったその瞬間、ちょうど二人の前にバスが到着した。
優衣は頷きつつも、内心は(やった、一緒に乗れる)と小さくガッツポーズを決めていた。
しかし、車内に一歩踏み入れた瞬間――
(……え、なにこれ、人の壁!?)
朝の通勤通学ラッシュを甘く見ていた。
座席はもちろん、通路もすでに人でぎゅうぎゅう。バス特有のむっとした空気が漂う中、優斗はすっと奥へ進み、優衣も慌ててその後を追う。
「ほら、もっと詰めないと後ろの人乗れないぞ」
優斗が軽く手招きする。
(詰めるって言っても……)
一歩進んだ瞬間、彼の背中にぴたりと自分の胸元が当たる距離になった。
(――うわぁぁぁ!近い!)
優衣は慌てて少し後ろに下がろうとしたが、背中側から別の乗客に押され、そのまま前へ。結果、完全に優斗の腕の横に自分の顔がある位置に固定された。
「……大丈夫か?」
振り向いた優斗の顔が近すぎて、優衣は思わず視線を逸らす。
「だ、大丈夫……!全然……!」
(全然じゃない、心臓が爆発しそう……!)
バスが発進し、急な揺れが襲う。
優衣はバランスを崩し、思わず優斗の腕を掴んだ。
その瞬間、彼の制服越しに感じる体温と固さに、ますます心拍数が上がる。
「……お前、なんか今日……髪いい匂いするな」
何気なく放たれた一言に、優衣の耳まで真っ赤になる。
(やばいやばいやばい!女子の体って、距離感近いとこんなに意識するの!?)
次の停留所までの数分間、優衣は揺れに耐えるふりをしながら、ただひたすら心臓の音がバレないことを祈るしかなかった。
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優斗が笑いながら言ったその瞬間、ちょうど二人の前にバスが到着した。
優衣は頷きつつも、内心は(やった、一緒に乗れる)と小さくガッツポーズを決めていた。
しかし、車内に一歩踏み入れた瞬間――
(……え、なにこれ、人の壁!?)
朝の通勤通学ラッシュを甘く見ていた。
座席はもちろん、通路もすでに人でぎゅうぎゅう。バス特有のむっとした空気が漂う中、優斗はすっと奥へ進み、優衣も慌ててその後を追う。
「ほら、もっと詰めないと後ろの人乗れないぞ」
優斗が軽く手招きする。
(詰めるって言っても……)
一歩進んだ瞬間、彼の背中にぴたりと自分の胸元が当たる距離になった。
(――うわぁぁぁ!近い!)
優衣は慌てて少し後ろに下がろうとしたが、背中側から別の乗客に押され、そのまま前へ。結果、完全に優斗の腕の横に自分の顔がある位置に固定された。
「……大丈夫か?」
振り向いた優斗の顔が近すぎて、優衣は思わず視線を逸らす。
「だ、大丈夫……!全然……!」
(全然じゃない、心臓が爆発しそう……!)
バスが発進し、急な揺れが襲う。
優衣はバランスを崩し、思わず優斗の腕を掴んだ。
その瞬間、彼の制服越しに感じる体温と固さに、ますます心拍数が上がる。
「……お前、なんか今日……髪いい匂いするな」
何気なく放たれた一言に、優衣の耳まで真っ赤になる。
(やばいやばいやばい!女子の体って、距離感近いとこんなに意識するの!?)
次の停留所までの数分間、優衣は揺れに耐えるふりをしながら、ただひたすら心臓の音がバレないことを祈るしかなかった。
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