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扶養義務はありません 7
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ジョルジアナは目を見開いていた。
(ちょっと、どういうこと……?)
イアナが身に着けていたスターサファイアがどうしても諦めきれなくて二人のあとを追いかけて庭に向かったジョルジアナは、ベンチに座って微笑みあう姉夫婦を茫然と見つめた。
目の前には、高価なドレスに身を包み、最高級の宝石を身にまとったイアナと、六十過ぎの初老の公爵がいる。だが、先ほどジョルジアナは見たのだ。年寄りのフェルナンドが、一瞬にして年若い美青年の姿に変わるのを。
(お姉様は年寄りに嫁いだんでしょう? え? まさか、本当は違うの?)
公爵家に嫁ぐと言っても相手が年寄りだから嗤っていられた。だが、相手が年若い美青年ならば話が違う。
もしかして、ステファーニ公爵には隠し子がいたのだろうか。そしてその隠し子とイアナを密かに結婚させたのだろうか。フェルナンドに嫁いだふりをして、端整な顔立ちの貴公子と贅沢三昧に暮らしているということか。そんなの許せない。
(お姉様のくせに……!)
ジョルジアナにとって姉のイアナは召使も同然の人間だった。
一応血のつながった姉なので「お姉様」と呼んであげてはいるが、一度も姉と思ったことはない。ジョルジアナの身の回りの世話をする奴隷だ。
父も母も、姉のことは気持ちが悪いと言っていた。ジョルジアナもそう思う。子供のころからイアナは妙に大人びていて、両親から愛されなくても、ジョルジアナが馬鹿にしても、奴隷のように扱っても、「はいはい」とやり過ごすような性格だった。
幼いころから子供らしさが皆無だったイアナのことを、両親は悪魔付きと思っている。まともな人間ではないのだ。そんな欠陥品が貴公子と結婚して楽しく暮らしているなんて!
(こんなことならあたくしが嫁げばよかったわ! そうしたらあのサファイアも、ドレスも、公爵家の財産もなにもかも、ぜーんぶあたくしのものだったのに‼)
そうしていたら、新しいドレスも宝石も買えず、それどころか家の借金返済のために宝石類を奪われるようなみじめな思いをしなくてもすんだのだ。
忌々しいことに、例の慰謝料騒ぎから、ジョルジアナの周りにはパッとしない男しか集まらなくなった。
夫をたぶらかしたとかなんとか言って慰謝料を請求してきたあの女がきっとあちこちでジョルジアナの悪口を吹聴したのだ。そうに違いない。
イアナが嫁いだせいでジョルジアナが婿を取らなくてはならないが、このままではダサくて不細工な男と結婚させられる羽目になるかもしれなかった。父も母もジョルジアナに甘いが、このまま何年も結婚相手が見つからなければ妥協せざるを得ないからだ。そんなのは絶対に嫌である。
(全部お姉様のせいよ‼)
金持ちのステファーニ公爵家に嫁いだのだから、イアナは当然ジョルジアナのためにドレスや宝石を買うべきだし、伯爵家の借金を肩代わりすべきだ。そしてジョルジアナに慰謝料を請求してきた忌々しいあの女に一泡吹かせて社交界から追放するぐらいすべきなのだ。
何のための姉だろうか。役立たずが!
とはいえ、今見たことを騒ぎ立てても自分に分が悪くなるのはわかっていた。さきほどパーティー会場でイアナのサファイアをよこせと言ったせいで、大広間にいた人たちから白い目で見られたのだ。話しかけても無視される。父からも「時と場合を考えろ」と言われた。
だが、ジョルジアナにだって言い分はあるのだ。イアナがジョルジアナの命令を断ると思っていなかったし、フェルナンドがイアナを庇うとも思っていなかった。実家に送金もできないのだから、イアナは公爵家でもつまはじきにされていると思っていたのだ。
(てっきり公爵もあたくしに味方してくれると思っていたのに!)
イアナよりジョルジアナの方が可愛いのに、なんでイアナの肩を持つのだろう。
舌打ちしかけて、ジョルジアナはハッとした。
イアナの隣にいるのがステファーニ公爵の隠し子なら、きっとイアナと仲良くすることを父親から強要されているに違いない。魔術か何かで年寄りのふりをしているくらいだ、彼は父親の命令には逆らえないのだろう。だからイアナを大切にしているふりをするしかないのである。
ジョルジアナはふふんと笑った。
(見てなさいよお姉様。そのサファイアも、公爵家の財産も、ぜーんぶ、あたくしのものなんだから! 必ず奪い取ってやるわ!)
せいぜい、それまでの短い幸せを享受していればいいのだ。
ジョルジアナは呑気に語り合っている姉夫婦に背を向けると、憤然と大広間に戻って行った。
(ちょっと、どういうこと……?)
イアナが身に着けていたスターサファイアがどうしても諦めきれなくて二人のあとを追いかけて庭に向かったジョルジアナは、ベンチに座って微笑みあう姉夫婦を茫然と見つめた。
目の前には、高価なドレスに身を包み、最高級の宝石を身にまとったイアナと、六十過ぎの初老の公爵がいる。だが、先ほどジョルジアナは見たのだ。年寄りのフェルナンドが、一瞬にして年若い美青年の姿に変わるのを。
(お姉様は年寄りに嫁いだんでしょう? え? まさか、本当は違うの?)
公爵家に嫁ぐと言っても相手が年寄りだから嗤っていられた。だが、相手が年若い美青年ならば話が違う。
もしかして、ステファーニ公爵には隠し子がいたのだろうか。そしてその隠し子とイアナを密かに結婚させたのだろうか。フェルナンドに嫁いだふりをして、端整な顔立ちの貴公子と贅沢三昧に暮らしているということか。そんなの許せない。
(お姉様のくせに……!)
ジョルジアナにとって姉のイアナは召使も同然の人間だった。
一応血のつながった姉なので「お姉様」と呼んであげてはいるが、一度も姉と思ったことはない。ジョルジアナの身の回りの世話をする奴隷だ。
父も母も、姉のことは気持ちが悪いと言っていた。ジョルジアナもそう思う。子供のころからイアナは妙に大人びていて、両親から愛されなくても、ジョルジアナが馬鹿にしても、奴隷のように扱っても、「はいはい」とやり過ごすような性格だった。
幼いころから子供らしさが皆無だったイアナのことを、両親は悪魔付きと思っている。まともな人間ではないのだ。そんな欠陥品が貴公子と結婚して楽しく暮らしているなんて!
(こんなことならあたくしが嫁げばよかったわ! そうしたらあのサファイアも、ドレスも、公爵家の財産もなにもかも、ぜーんぶあたくしのものだったのに‼)
そうしていたら、新しいドレスも宝石も買えず、それどころか家の借金返済のために宝石類を奪われるようなみじめな思いをしなくてもすんだのだ。
忌々しいことに、例の慰謝料騒ぎから、ジョルジアナの周りにはパッとしない男しか集まらなくなった。
夫をたぶらかしたとかなんとか言って慰謝料を請求してきたあの女がきっとあちこちでジョルジアナの悪口を吹聴したのだ。そうに違いない。
イアナが嫁いだせいでジョルジアナが婿を取らなくてはならないが、このままではダサくて不細工な男と結婚させられる羽目になるかもしれなかった。父も母もジョルジアナに甘いが、このまま何年も結婚相手が見つからなければ妥協せざるを得ないからだ。そんなのは絶対に嫌である。
(全部お姉様のせいよ‼)
金持ちのステファーニ公爵家に嫁いだのだから、イアナは当然ジョルジアナのためにドレスや宝石を買うべきだし、伯爵家の借金を肩代わりすべきだ。そしてジョルジアナに慰謝料を請求してきた忌々しいあの女に一泡吹かせて社交界から追放するぐらいすべきなのだ。
何のための姉だろうか。役立たずが!
とはいえ、今見たことを騒ぎ立てても自分に分が悪くなるのはわかっていた。さきほどパーティー会場でイアナのサファイアをよこせと言ったせいで、大広間にいた人たちから白い目で見られたのだ。話しかけても無視される。父からも「時と場合を考えろ」と言われた。
だが、ジョルジアナにだって言い分はあるのだ。イアナがジョルジアナの命令を断ると思っていなかったし、フェルナンドがイアナを庇うとも思っていなかった。実家に送金もできないのだから、イアナは公爵家でもつまはじきにされていると思っていたのだ。
(てっきり公爵もあたくしに味方してくれると思っていたのに!)
イアナよりジョルジアナの方が可愛いのに、なんでイアナの肩を持つのだろう。
舌打ちしかけて、ジョルジアナはハッとした。
イアナの隣にいるのがステファーニ公爵の隠し子なら、きっとイアナと仲良くすることを父親から強要されているに違いない。魔術か何かで年寄りのふりをしているくらいだ、彼は父親の命令には逆らえないのだろう。だからイアナを大切にしているふりをするしかないのである。
ジョルジアナはふふんと笑った。
(見てなさいよお姉様。そのサファイアも、公爵家の財産も、ぜーんぶ、あたくしのものなんだから! 必ず奪い取ってやるわ!)
せいぜい、それまでの短い幸せを享受していればいいのだ。
ジョルジアナは呑気に語り合っている姉夫婦に背を向けると、憤然と大広間に戻って行った。
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