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猫王妃と離婚危機
フィリエルの答え 1
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「んー」
ごろん、と寝返りを打とうとして、フィリエルは違和感を覚えた。
なんかちょっと、妙というか、懐かしいというか、それでいて今まで感じたことがない感触がするというか、とにかく――変。
ぱちり、と目を開けてフィリエルはまず、目に飛び込んできたたくましい胸に安心した。
リオンの胸は温かくて好きだ。
すり、と顔を寄せて、フィリエルの違和感はまたそこで大きくなった。
(うん?)
なんか、違う。
ぺったりと、肌に吸い付く感じがする。
(んんん?)
ぺとっと頬を寄せたまま考えること数秒。
「……フィリエル、その、あんまりまさぐらないでほしいんだが」
頭の上から、困惑したような声が降って来た。
顔を上げると、綺麗なエメラルド色の瞳がある。
「陛下、おはようございま――す?」
うん? とまたフィリエルは首を傾げた。
今、「にゃあ」ではない声が出た気がする。
ぱちぱちと目をしばたたきながらじーっとリオンの瞳を見つめると、瞳の中に見覚えのある女の顔が映っていた。
(んー?)
フィリエルはそーっと自分の体を見下ろして、それからひっと悲鳴を上げる。
「みやあ!」
「フィリエル、ええっと、今は猫ではないみたいだが」
つい猫のような悲鳴を上げると、リオンが、戸惑いつつも冷静なツッコミをくれた。
ばっとまた顔を上げると、リオンの頬が少し赤い。
(えっと、えっと、えっと……って、きゃあああああ‼)
フィリエルは今度こそ飛び起きた。
よくわからないがフィリエルは人の姿に戻っていて、そしてリオンにがっちりと腕を回し、すりすりと彼の胸に頬ずりを続けていたようだ。
顔が、火が出そうなほどに熱くなる。
ベッドから転がるように飛び降りて、そのままバスルームまで走った。
べたっとバスルームの鏡に両手をつけば、その中には銀色の髪に紫色の瞳をした女の顔が映っている。
「にゃああああああ!」
またしても、フィリエルは猫のような悲鳴を上げた。それなりに猫生活が長かったからだろうか。
(戻ってる! 戻ってる⁉ なんで⁉)
いや、もちろん嬉しいのだが、目が覚めたら元に戻っていたという衝撃の方が大きすぎてパニックになりそうだった。
(え? いつ戻ったの? え? いつから陛下にしがみついて寝てたの? っていうか陛下はいつから起きていたの⁉)
しがみつくどころかがっちり腕を回して頬ずりとかした。
(いやああああ! 死ねる! 恥ずかしくて死ねる!)
両手で顔を覆ってへなへなと膝をつけば、フィリエルを追いかけてきたリオンがギョッとした。
「フィリエル⁉ どうした? 気分が悪いのか?」
駆け寄って肩を抱かれて、フィリエルはさらに真っ赤になる。
(陛下、お願いだから上にガウンとか羽織って‼)
癖なのか、リオンはよく上半身裸で眠りにつくのだ。
猫のフィリエルは慣れていたが、人に戻った今、たくましい胸筋とか腹筋とか上腕二頭筋とかが直視できない。
両手で顔を覆ったまま必死に羞恥と戦っていると、何を思ったのか、リオンがひょいっとフィリエルを抱き上げた。
「にゃ⁉」
「フィリエル、だから今は人間だよ」
わかっている。わかっているのだが、頭の中はまだ猫の気分で、混乱しているからか、つい口から猫のような声が出る。
(というか冷静! 冷静すぎるでしょ陛下‼)
フィリエルを横抱きにしたまますたすたと寝室に戻ったリオンが、フィリエルをそっとベッドの上に下ろした。
熱を確かめるように額に手を当て、首をひねる。
「熱はないみたいだが、あとで侍医を呼ぼう」
「だ、だだだ、大丈夫です!」
「だが、気分が悪いんじゃ……」
「悪くないですっ」
ただ恥ずかしいだけだ。
フィリエルはシーツを手繰り寄せ、顔の半分までを隠すと、恐る恐るリオンを見上げた。
「あ、あの、陛下……。わたし、いつ戻ったんですか?」
「どうだろうな。ただ、俺が目を覚ました時にはその姿だったから二時間前には戻っていたようだが」
(二時間⁉)
というか二時間も前にリオンは目を覚ましたのだろうか。フィリエルにしがみつかれて苦しかったとか?
(ってことは二時間もわたし、起きていた陛下にしがみついて頬ずりしてぐーすか寝てたわけ? どうしよう、寝言とか言ってないかな。よだれとかたらさなかったかな⁉)
リオンもリオンだ。起こしてくれればいいのに、何故二時間も放置したのだろう。
「ど、どうして起こしてくれなかったんですか……?」
「気持ちよさそうに寝ていたからな。それに、寝顔を見ていたい気分だった」
「ね⁉」
(寝顔⁉)
リオンがベッドの縁に腰かけて、フィリエルの頭に手を伸ばす。
猫だったフィリエルに触れる時よりも遠慮がちで慎重に、ゆっくりと頭が撫でられた。
当たり前だが、猫のときに撫でられるのと、感触が違う。
「それから、またすぐに猫に戻ってしまうのだろうかと考えたら、わずかの間でも目を離したくなかったんだ」
リオンは、ふわりと笑った。
「挨拶をまだ返していなかったな。おはよう、フィリエル」
フィリエルを見つめるリオンの瞳には、何の嫌悪感もない。
フィリエルはホッとして、けれどもドキドキしながら、ゆっくりと上体を起こした。
「おはようございます、陛下」
ごろん、と寝返りを打とうとして、フィリエルは違和感を覚えた。
なんかちょっと、妙というか、懐かしいというか、それでいて今まで感じたことがない感触がするというか、とにかく――変。
ぱちり、と目を開けてフィリエルはまず、目に飛び込んできたたくましい胸に安心した。
リオンの胸は温かくて好きだ。
すり、と顔を寄せて、フィリエルの違和感はまたそこで大きくなった。
(うん?)
なんか、違う。
ぺったりと、肌に吸い付く感じがする。
(んんん?)
ぺとっと頬を寄せたまま考えること数秒。
「……フィリエル、その、あんまりまさぐらないでほしいんだが」
頭の上から、困惑したような声が降って来た。
顔を上げると、綺麗なエメラルド色の瞳がある。
「陛下、おはようございま――す?」
うん? とまたフィリエルは首を傾げた。
今、「にゃあ」ではない声が出た気がする。
ぱちぱちと目をしばたたきながらじーっとリオンの瞳を見つめると、瞳の中に見覚えのある女の顔が映っていた。
(んー?)
フィリエルはそーっと自分の体を見下ろして、それからひっと悲鳴を上げる。
「みやあ!」
「フィリエル、ええっと、今は猫ではないみたいだが」
つい猫のような悲鳴を上げると、リオンが、戸惑いつつも冷静なツッコミをくれた。
ばっとまた顔を上げると、リオンの頬が少し赤い。
(えっと、えっと、えっと……って、きゃあああああ‼)
フィリエルは今度こそ飛び起きた。
よくわからないがフィリエルは人の姿に戻っていて、そしてリオンにがっちりと腕を回し、すりすりと彼の胸に頬ずりを続けていたようだ。
顔が、火が出そうなほどに熱くなる。
ベッドから転がるように飛び降りて、そのままバスルームまで走った。
べたっとバスルームの鏡に両手をつけば、その中には銀色の髪に紫色の瞳をした女の顔が映っている。
「にゃああああああ!」
またしても、フィリエルは猫のような悲鳴を上げた。それなりに猫生活が長かったからだろうか。
(戻ってる! 戻ってる⁉ なんで⁉)
いや、もちろん嬉しいのだが、目が覚めたら元に戻っていたという衝撃の方が大きすぎてパニックになりそうだった。
(え? いつ戻ったの? え? いつから陛下にしがみついて寝てたの? っていうか陛下はいつから起きていたの⁉)
しがみつくどころかがっちり腕を回して頬ずりとかした。
(いやああああ! 死ねる! 恥ずかしくて死ねる!)
両手で顔を覆ってへなへなと膝をつけば、フィリエルを追いかけてきたリオンがギョッとした。
「フィリエル⁉ どうした? 気分が悪いのか?」
駆け寄って肩を抱かれて、フィリエルはさらに真っ赤になる。
(陛下、お願いだから上にガウンとか羽織って‼)
癖なのか、リオンはよく上半身裸で眠りにつくのだ。
猫のフィリエルは慣れていたが、人に戻った今、たくましい胸筋とか腹筋とか上腕二頭筋とかが直視できない。
両手で顔を覆ったまま必死に羞恥と戦っていると、何を思ったのか、リオンがひょいっとフィリエルを抱き上げた。
「にゃ⁉」
「フィリエル、だから今は人間だよ」
わかっている。わかっているのだが、頭の中はまだ猫の気分で、混乱しているからか、つい口から猫のような声が出る。
(というか冷静! 冷静すぎるでしょ陛下‼)
フィリエルを横抱きにしたまますたすたと寝室に戻ったリオンが、フィリエルをそっとベッドの上に下ろした。
熱を確かめるように額に手を当て、首をひねる。
「熱はないみたいだが、あとで侍医を呼ぼう」
「だ、だだだ、大丈夫です!」
「だが、気分が悪いんじゃ……」
「悪くないですっ」
ただ恥ずかしいだけだ。
フィリエルはシーツを手繰り寄せ、顔の半分までを隠すと、恐る恐るリオンを見上げた。
「あ、あの、陛下……。わたし、いつ戻ったんですか?」
「どうだろうな。ただ、俺が目を覚ました時にはその姿だったから二時間前には戻っていたようだが」
(二時間⁉)
というか二時間も前にリオンは目を覚ましたのだろうか。フィリエルにしがみつかれて苦しかったとか?
(ってことは二時間もわたし、起きていた陛下にしがみついて頬ずりしてぐーすか寝てたわけ? どうしよう、寝言とか言ってないかな。よだれとかたらさなかったかな⁉)
リオンもリオンだ。起こしてくれればいいのに、何故二時間も放置したのだろう。
「ど、どうして起こしてくれなかったんですか……?」
「気持ちよさそうに寝ていたからな。それに、寝顔を見ていたい気分だった」
「ね⁉」
(寝顔⁉)
リオンがベッドの縁に腰かけて、フィリエルの頭に手を伸ばす。
猫だったフィリエルに触れる時よりも遠慮がちで慎重に、ゆっくりと頭が撫でられた。
当たり前だが、猫のときに撫でられるのと、感触が違う。
「それから、またすぐに猫に戻ってしまうのだろうかと考えたら、わずかの間でも目を離したくなかったんだ」
リオンは、ふわりと笑った。
「挨拶をまだ返していなかったな。おはよう、フィリエル」
フィリエルを見つめるリオンの瞳には、何の嫌悪感もない。
フィリエルはホッとして、けれどもドキドキしながら、ゆっくりと上体を起こした。
「おはようございます、陛下」
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