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第25話 永遠の定位置
〇
第一王子派の動きは王妃陛下の後押しもあり、完全に鎮圧された。城下を騒がせていた扇動者たちは捕らえられ、背後に糸を引いていた貴族たちも次々と失脚していく。王宮の空気は急速に落ち着きを取り戻し、宰相様の地位はさらに揺るぎないものとなった。
その変化を一番間近で見ていた私は、心の底から安堵を覚えていた。けれど同時に、自分がどれほど無力で、ただ守られているだけだったかを痛感していた。
その夜、宰相邸の大広間に灯がともされ、控えめながらも祝宴が開かれた。宰相様の功績を称えるために集まった家臣や侍女たちは、口々に彼の勝利を祝福していた。
私は膝の上に座ったまま、その様子を見つめていた。笑顔を向けてくれる人々の視線は温かく、以前のような冷たい噂はもうどこにもなかった。
「……宰相様」
「どうした」
「本当に……ここまで導いてくださったのは、あなたのおかげです」
「違う」
宰相様は即座に否定し、私を抱き寄せた。
「私がここまで来られたのは、君が膝にいたからだ」
「……っ」
胸が甘く震え、涙がこぼれそうになる。
「君の存在が、私に力を与えた。噂も陰謀も、君が隣にいたから恐れる必要はなかった」
「宰相様……」
「だからもう一度、ここで誓おう」
宰相様は私を抱いたまま立ち上がり、広間に集まった人々の前に歩み出た。
「聞け。私はこの娘を妻として迎える。――彼女の名はエリナ。私の膝の上こそが、彼女の定位置だ」
広間がざわめき、やがて拍手が湧き起こった。
涙が頬を伝う。宰相様が皆の前で、堂々と私を「妻」として認めてくれたのだ。
――この瞬間、私の運命は完全に宰相様と結ばれた。
△
広間に鳴り響く拍手の中、私は宰相様の膝の上で顔を真っ赤にしながらも、涙を拭うことができなかった。人々の視線は今や嘲笑ではなく、祝福の色で満ちている。
「……宰相様、本当に私でよろしいのでしょうか」
震える声で問うと、宰相様はわずかに眉を上げ、低く答えた。
「何度も言わせるな。君以外を妻に迎えるつもりはない」
その一言で、また涙が込み上げた。
宴が進むにつれ、人々は次々と祝福の言葉をかけてくれた。侍女たちは「おめでとうございます」と涙ぐみ、老臣たちは「宰相殿に相応しい方だ」と頷いていた。
そんな中、私はふと気づいた。――これまで私を苦しめてきた「殿下とアリシア」の姿が、この場にはないことに。
やがて宰相様もそれに気づいたのか、静かに呟いた。
「彼らはもう過去だ。君の視界に入れる必要はない」
「……はい」
その言葉に、私は心の奥から安堵を覚えた。
祝宴が終わり、静かな廊下を二人で歩く。外は月明かりが降り注ぎ、庭園の花々を白く照らしていた。
「エリナ」
「はい」
「今夜のことを忘れるな。君が私の妻となることは、もう誰にも否定できない」
「……宰相様……」
胸が甘く痺れ、涙がまた溢れそうになる。
寝室に戻ると、宰相様は迷わず私を抱き上げ、ベッドに腰を下ろして膝の上に乗せた。
「ここが君の定位置だ。たとえどれほど年月が流れようとも、変わることはない」
その言葉に、胸が熱く震えた。
「私……宰相様のお傍にいられることが、何よりの幸せです」
「ならば、ずっと傍にいろ。私が望むのはそれだけだ」
その断言に、私は強く抱きついた。
――この人の隣で生きていくこと、それが私にとっての全てだ。
◇
宰相様の膝の上で過ごすその夜は、これまでのどの夜よりも穏やかで、そして確かな幸福に満ちていた。月明かりが窓から差し込み、髪飾りをきらめかせる。私は宰相様の胸に顔を埋め、静かに囁いた。
「……宰相様。あの日、殿下に捨てられて、すべてを失ったと思っていました。でも、今は違います」
「違うとは?」
「私の居場所は……最初から宰相様の膝の上だったのだと、心から思えるのです」
宰相様は少し目を細め、私の背を抱き寄せる。
「気づくのが遅いくらいだな。私は最初からそう決めていた」
「……ふふ、やっぱり宰相様はずるいです」
「ずるくて構わん。君を離さないためなら、私はどれほどでもずるくあろう」
甘い声が耳を撫で、胸が痺れるように熱くなる。
やがて宰相様は私を見つめ、真剣な声で告げた。
「エリナ。これから先、どれほどの年月が流れようと、どんな嵐が訪れようと――君は私の膝の上にいろ。それが君の永遠の定位置だ」
「……はい。私はずっと、ここにいます」
答えた瞬間、涙が頬を伝い落ちた。だがそれは悲しみではなく、限りない安堵と幸福の涙だった。宰相様はそれをそっと指で拭い取り、唇を寄せて囁いた。
「泣くな。……いや、泣いてもいい。君の涙すら私の誇りだ」
私は彼に抱きつき、胸の奥から湧き出る言葉を口にする。
「宰相様。私はあなたを愛しています」
「私もだ。君を、誰よりも」
その夜、私たちは互いの心を重ね、未来を誓い合った。
――殿下に捨てられたあの日から始まった私の物語は、こうして「宰相様の膝の上」という居場所に辿り着いた。これからも私は、この場所から彼を支え続ける。
どんな陰謀も、どんな嵐も恐れることはない。
なぜなら私には、永遠の定位置があるのだから。
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第一王子派の動きは王妃陛下の後押しもあり、完全に鎮圧された。城下を騒がせていた扇動者たちは捕らえられ、背後に糸を引いていた貴族たちも次々と失脚していく。王宮の空気は急速に落ち着きを取り戻し、宰相様の地位はさらに揺るぎないものとなった。
その変化を一番間近で見ていた私は、心の底から安堵を覚えていた。けれど同時に、自分がどれほど無力で、ただ守られているだけだったかを痛感していた。
その夜、宰相邸の大広間に灯がともされ、控えめながらも祝宴が開かれた。宰相様の功績を称えるために集まった家臣や侍女たちは、口々に彼の勝利を祝福していた。
私は膝の上に座ったまま、その様子を見つめていた。笑顔を向けてくれる人々の視線は温かく、以前のような冷たい噂はもうどこにもなかった。
「……宰相様」
「どうした」
「本当に……ここまで導いてくださったのは、あなたのおかげです」
「違う」
宰相様は即座に否定し、私を抱き寄せた。
「私がここまで来られたのは、君が膝にいたからだ」
「……っ」
胸が甘く震え、涙がこぼれそうになる。
「君の存在が、私に力を与えた。噂も陰謀も、君が隣にいたから恐れる必要はなかった」
「宰相様……」
「だからもう一度、ここで誓おう」
宰相様は私を抱いたまま立ち上がり、広間に集まった人々の前に歩み出た。
「聞け。私はこの娘を妻として迎える。――彼女の名はエリナ。私の膝の上こそが、彼女の定位置だ」
広間がざわめき、やがて拍手が湧き起こった。
涙が頬を伝う。宰相様が皆の前で、堂々と私を「妻」として認めてくれたのだ。
――この瞬間、私の運命は完全に宰相様と結ばれた。
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広間に鳴り響く拍手の中、私は宰相様の膝の上で顔を真っ赤にしながらも、涙を拭うことができなかった。人々の視線は今や嘲笑ではなく、祝福の色で満ちている。
「……宰相様、本当に私でよろしいのでしょうか」
震える声で問うと、宰相様はわずかに眉を上げ、低く答えた。
「何度も言わせるな。君以外を妻に迎えるつもりはない」
その一言で、また涙が込み上げた。
宴が進むにつれ、人々は次々と祝福の言葉をかけてくれた。侍女たちは「おめでとうございます」と涙ぐみ、老臣たちは「宰相殿に相応しい方だ」と頷いていた。
そんな中、私はふと気づいた。――これまで私を苦しめてきた「殿下とアリシア」の姿が、この場にはないことに。
やがて宰相様もそれに気づいたのか、静かに呟いた。
「彼らはもう過去だ。君の視界に入れる必要はない」
「……はい」
その言葉に、私は心の奥から安堵を覚えた。
祝宴が終わり、静かな廊下を二人で歩く。外は月明かりが降り注ぎ、庭園の花々を白く照らしていた。
「エリナ」
「はい」
「今夜のことを忘れるな。君が私の妻となることは、もう誰にも否定できない」
「……宰相様……」
胸が甘く痺れ、涙がまた溢れそうになる。
寝室に戻ると、宰相様は迷わず私を抱き上げ、ベッドに腰を下ろして膝の上に乗せた。
「ここが君の定位置だ。たとえどれほど年月が流れようとも、変わることはない」
その言葉に、胸が熱く震えた。
「私……宰相様のお傍にいられることが、何よりの幸せです」
「ならば、ずっと傍にいろ。私が望むのはそれだけだ」
その断言に、私は強く抱きついた。
――この人の隣で生きていくこと、それが私にとっての全てだ。
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宰相様の膝の上で過ごすその夜は、これまでのどの夜よりも穏やかで、そして確かな幸福に満ちていた。月明かりが窓から差し込み、髪飾りをきらめかせる。私は宰相様の胸に顔を埋め、静かに囁いた。
「……宰相様。あの日、殿下に捨てられて、すべてを失ったと思っていました。でも、今は違います」
「違うとは?」
「私の居場所は……最初から宰相様の膝の上だったのだと、心から思えるのです」
宰相様は少し目を細め、私の背を抱き寄せる。
「気づくのが遅いくらいだな。私は最初からそう決めていた」
「……ふふ、やっぱり宰相様はずるいです」
「ずるくて構わん。君を離さないためなら、私はどれほどでもずるくあろう」
甘い声が耳を撫で、胸が痺れるように熱くなる。
やがて宰相様は私を見つめ、真剣な声で告げた。
「エリナ。これから先、どれほどの年月が流れようと、どんな嵐が訪れようと――君は私の膝の上にいろ。それが君の永遠の定位置だ」
「……はい。私はずっと、ここにいます」
答えた瞬間、涙が頬を伝い落ちた。だがそれは悲しみではなく、限りない安堵と幸福の涙だった。宰相様はそれをそっと指で拭い取り、唇を寄せて囁いた。
「泣くな。……いや、泣いてもいい。君の涙すら私の誇りだ」
私は彼に抱きつき、胸の奥から湧き出る言葉を口にする。
「宰相様。私はあなたを愛しています」
「私もだ。君を、誰よりも」
その夜、私たちは互いの心を重ね、未来を誓い合った。
――殿下に捨てられたあの日から始まった私の物語は、こうして「宰相様の膝の上」という居場所に辿り着いた。これからも私は、この場所から彼を支え続ける。
どんな陰謀も、どんな嵐も恐れることはない。
なぜなら私には、永遠の定位置があるのだから。
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