パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

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第1話 三重追放くらって俺は悟った

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 「カイル、お前は今日限りでパーティーから追放だ!」

 王都の酒場の奥、丸太の柱と古い依頼書に囲まれたテーブルで、リーダーのランツが拳を叩きつけた。ジョッキのエールが波打ち、泡が俺の鼻先に飛んでくる。いや、そんな真剣に言わんでも伝わるだろ。

「ちょっと待て、理由をはっきりしてくれ。俺、今日の作戦も昨日の下見も段取り完璧だっただろ。荷運び、補給、馬の準備、帰りの食事、全部整えたぞ」

「それが問題なんだ!」ランツは机を蹴って椅子を鳴らす。「お前のせいで冒険に盛り上がりがないんだ! 全部安全に済んで、俺たちに見せ場がねぇ!」

「……は?」

 いや、何を言ってるんだこいつは。俺が段取りして罠を全部回避したから、全員生きて帰ってきたんじゃないのか?

「冒険は命懸けだから輝くんだ。だが、お前がいると危険が全部なくなる! 物語にならん!」

「命があるから物語になるんだろ」

「うるさい! もういい、出ていけ!」

 ……こうして俺はパーティーから追放された。



 次の日、冒険者ギルド本部。大広間でギルドマスターが腕を組んでいた。

「カイル。残念だが、お前はギルドからも追放だ」

「はぁ!? 今度は何だよ」

「各地から苦情が来てな。『安全すぎて盛り上がらない』、『罠を先に潰すから俺の見せ場が奪われる』、『依頼が拍子抜けする』……」

「感謝の声は?」

「それも山ほど届いているが……掲示すると“盛り上がらない”と叩かれる」

「盛り上がり至上主義すぎるだろ、この国」

 ギルドマスターは申し訳なさそうにカードに除籍の印を押した。二日連続で職を失った俺は、街の片隅でパンの耳をかじりながら頭を抱えた。



 三日目。俺は玉座の間に立っていた。

「カイル。余は汝を――この国から追放する!」

 王が杖を鳴らし、貴族たちがどよめく。

「理由は三つ。一つ、余の狩りの見せ場を奪った。二つ、英雄譚がつまらなくなった。三つ、民が『危なくなくていいからカイルに頼みたい』と言い出した」

「三つ目は褒め言葉じゃないのかよ」

「国家にとっては損失だ。物語は税収に直結する。だからお前は不要」

 ……マジかよ。俺は三日連続で追放を食らった。パーティー、ギルド、国。トリプルコンボで人生終了。



 国境の外。荒れ果てた集落に流れ着いた俺に、老人ノームが言った。

「ここは“追放者の谷”じゃ。国からもギルドからも弾かれた者ばかりが暮らしておる」

「お仲間ですね。俺も三連続で追放された男です」

 畑は荒れ、害獣がはびこり、若者は覇気を失っていた。俺は地図を描き、罠を仕掛け、役割分担を決め、夜の見張りを整えた。たった一晩で、村に兎と猪の肉が並び、皆が泣き笑いした。

「カイルよ、ここに残ってくれぬか」

「残りますよ。ただし一つ条件がある」

 俺は納屋の板に大きく文字を刻んだ。

 ――追放者ギルド。

「ここは、追放された者が安心して生きられる場所だ。依頼がなくても、物語にならなくても、俺たちは生き延びる。英雄譚じゃなくても、“生活”を守るギルドを作る」

 そこへ、荷物を背負った小柄な女が駆け込んできた。

「ここ、“追放者ギルド”って書いてあるけど……ほんとに受け入れてくれるの!? 私はリナ、料理人! 味が安定しすぎて追放されたの!」

 おい、またそれか。

「歓迎するよ、リナ。ここじゃ“安定”は最高の誉め言葉だ」

 こうして、追放者ギルドの物語が始まった。
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