2 / 70
第2話 追放者ギルドの朝ごはん
しおりを挟む
「えっと……ほんとに、入れてもらっていいんですか?」
リナが両手をぎゅっと胸の前で握り、こちらを見上げてきた。背負子からは鍋やフライパンがガチャガチャ音を立てて転がり出そうになっている。栗色の髪を三つ編みにして束ね、顔には煤が残り、白いエプロンには焼け焦げの痕がいくつもある。どう見ても、料理人だ。
「もちろん。追放者なら大歓迎だ。ここは追放者ギルドだからな」
俺が笑うと、リナの瞳がぱっと光った。
「わ、わたし……王都の大料理亭で働いてたんです。でも、味が“安定しすぎる”って理由で……」
「はい出た、“安定すぎて追放”」
俺は肩をすくめた。昨日の夜、村の若者たちとやった初仕事もそうだった。罠を仕掛け、害獣を退治し、みんなで肉を得て喜んだのに、「派手さがない」という理由でここまで来たやつらばかりだ。リナも同類だ。
「安定っていいことだろ。命に関わる飯なら、なおさらだ」
「そう、そうですよね! でも、上の人からは“料理は劇場だ、もっと波乱を”って……」
「波乱で腹壊しても誰も得しないだろ」
俺が呟くと、周りで聞いていた若者たちが笑った。昨晩イノシシを捕まえた連中だ。
「カイルさん、リナさんを試してみましょうよ!」
「肉はあるし、朝からごちそうだ!」
皆がわくわくしている。どうやら本能的に「飯=希望」らしい。
「よし、リナ。腕を見せてもらおう」
「は、はいっ!」
◇
リナはさっそく鍋を出し、井戸から水を汲み、香草を摘み、肉を手際よく刻んでいく。包丁さばきは速く、余計な動きがない。まさに“安定”。
焚き火の上に鍋をかけ、油を引き、肉を炒めると、じゅうじゅうと音が響き、香ばしい匂いが漂った。
「すごい匂いだ……!」
「久しぶりに“ちゃんとした料理”だな」
村人たちの目が輝き、子どもたちは腹を押さえて唾を飲み込んでいる。
「リナ、調味料は?」
「塩と胡椒くらいしか……でも、香草で補います」
彼女は摘んできたハーブをすり鉢で砕き、鍋に振り入れた。ふわりと立ち上る香りは、どこか懐かしい。
ほどなくして、肉と野菜のスープが完成。リナは鍋を抱えて言った。
「追放者ギルドの……最初の朝ごはんです!」
◇
器に分けられたスープを一口。
「……うまい」
俺の口から自然に言葉が出た。塩気は控えめなのに、肉の旨味と香草の香りがしっかり効いている。派手ではない。けれど、胃の底からじんわり広がる温かさがあった。
「ほんとだ……! 落ち着く味だ!」
「胃が安心してる……!」
「涙出そう……」
村人や若者たちが次々と器を空けていく。子どもは頬を赤らめて「おかわり!」と叫んだ。
「……よかった。これで、わたしも役に立てますか?」
リナが不安げにこちらを見上げてきた。
「立ちすぎだ。今日からお前は“追放者ギルドの料理長”だ」
俺がそう宣言すると、村人たちから拍手と歓声が上がった。リナの目に涙がにじみ、三つ編みが揺れた。
◇
朝食の後、俺は広場に皆を集めた。
「聞け! ここは追放者ギルド。誰もが見捨てられた者ばかりだ。だが、ここでは生きる。俺たちは“物語”じゃなく、“生活”を守る!」
「おーっ!」
声を合わせる仲間たち。昨晩集まった若者、今日加わったリナ、老人ノーム。確かに、ここから何かが始まる気配がある。
畑は荒れ、屋根は崩れ、まだまだ問題は山積みだ。だが、“段取り”さえあれば何とかなる。俺の役目は、それを整えること。
「今日の目標は二つ。畑を耕すこと。そして温泉を探すことだ!」
「えっ、温泉!?」
皆の目が輝いた。俺は谷の地図を広げ、地下水脈の線を指差す。
「地熱の匂いがする。岩の色も変わってる。掘れば当たる」
「段取りの神様か!?」
「違う。俺は追放者だ」
でも、この仲間となら、“追放者ギルド”はきっと世界一面白い場所になる――そう確信していた。
リナが両手をぎゅっと胸の前で握り、こちらを見上げてきた。背負子からは鍋やフライパンがガチャガチャ音を立てて転がり出そうになっている。栗色の髪を三つ編みにして束ね、顔には煤が残り、白いエプロンには焼け焦げの痕がいくつもある。どう見ても、料理人だ。
「もちろん。追放者なら大歓迎だ。ここは追放者ギルドだからな」
俺が笑うと、リナの瞳がぱっと光った。
「わ、わたし……王都の大料理亭で働いてたんです。でも、味が“安定しすぎる”って理由で……」
「はい出た、“安定すぎて追放”」
俺は肩をすくめた。昨日の夜、村の若者たちとやった初仕事もそうだった。罠を仕掛け、害獣を退治し、みんなで肉を得て喜んだのに、「派手さがない」という理由でここまで来たやつらばかりだ。リナも同類だ。
「安定っていいことだろ。命に関わる飯なら、なおさらだ」
「そう、そうですよね! でも、上の人からは“料理は劇場だ、もっと波乱を”って……」
「波乱で腹壊しても誰も得しないだろ」
俺が呟くと、周りで聞いていた若者たちが笑った。昨晩イノシシを捕まえた連中だ。
「カイルさん、リナさんを試してみましょうよ!」
「肉はあるし、朝からごちそうだ!」
皆がわくわくしている。どうやら本能的に「飯=希望」らしい。
「よし、リナ。腕を見せてもらおう」
「は、はいっ!」
◇
リナはさっそく鍋を出し、井戸から水を汲み、香草を摘み、肉を手際よく刻んでいく。包丁さばきは速く、余計な動きがない。まさに“安定”。
焚き火の上に鍋をかけ、油を引き、肉を炒めると、じゅうじゅうと音が響き、香ばしい匂いが漂った。
「すごい匂いだ……!」
「久しぶりに“ちゃんとした料理”だな」
村人たちの目が輝き、子どもたちは腹を押さえて唾を飲み込んでいる。
「リナ、調味料は?」
「塩と胡椒くらいしか……でも、香草で補います」
彼女は摘んできたハーブをすり鉢で砕き、鍋に振り入れた。ふわりと立ち上る香りは、どこか懐かしい。
ほどなくして、肉と野菜のスープが完成。リナは鍋を抱えて言った。
「追放者ギルドの……最初の朝ごはんです!」
◇
器に分けられたスープを一口。
「……うまい」
俺の口から自然に言葉が出た。塩気は控えめなのに、肉の旨味と香草の香りがしっかり効いている。派手ではない。けれど、胃の底からじんわり広がる温かさがあった。
「ほんとだ……! 落ち着く味だ!」
「胃が安心してる……!」
「涙出そう……」
村人や若者たちが次々と器を空けていく。子どもは頬を赤らめて「おかわり!」と叫んだ。
「……よかった。これで、わたしも役に立てますか?」
リナが不安げにこちらを見上げてきた。
「立ちすぎだ。今日からお前は“追放者ギルドの料理長”だ」
俺がそう宣言すると、村人たちから拍手と歓声が上がった。リナの目に涙がにじみ、三つ編みが揺れた。
◇
朝食の後、俺は広場に皆を集めた。
「聞け! ここは追放者ギルド。誰もが見捨てられた者ばかりだ。だが、ここでは生きる。俺たちは“物語”じゃなく、“生活”を守る!」
「おーっ!」
声を合わせる仲間たち。昨晩集まった若者、今日加わったリナ、老人ノーム。確かに、ここから何かが始まる気配がある。
畑は荒れ、屋根は崩れ、まだまだ問題は山積みだ。だが、“段取り”さえあれば何とかなる。俺の役目は、それを整えること。
「今日の目標は二つ。畑を耕すこと。そして温泉を探すことだ!」
「えっ、温泉!?」
皆の目が輝いた。俺は谷の地図を広げ、地下水脈の線を指差す。
「地熱の匂いがする。岩の色も変わってる。掘れば当たる」
「段取りの神様か!?」
「違う。俺は追放者だ」
でも、この仲間となら、“追放者ギルド”はきっと世界一面白い場所になる――そう確信していた。
117
あなたにおすすめの小説
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます
黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。
しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。
全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。
超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!?
万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。
一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。
「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」
――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。
これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる