パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

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第2話 追放者ギルドの朝ごはん

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 「えっと……ほんとに、入れてもらっていいんですか?」

 リナが両手をぎゅっと胸の前で握り、こちらを見上げてきた。背負子からは鍋やフライパンがガチャガチャ音を立てて転がり出そうになっている。栗色の髪を三つ編みにして束ね、顔には煤が残り、白いエプロンには焼け焦げの痕がいくつもある。どう見ても、料理人だ。

「もちろん。追放者なら大歓迎だ。ここは追放者ギルドだからな」

 俺が笑うと、リナの瞳がぱっと光った。

「わ、わたし……王都の大料理亭で働いてたんです。でも、味が“安定しすぎる”って理由で……」

「はい出た、“安定すぎて追放”」

 俺は肩をすくめた。昨日の夜、村の若者たちとやった初仕事もそうだった。罠を仕掛け、害獣を退治し、みんなで肉を得て喜んだのに、「派手さがない」という理由でここまで来たやつらばかりだ。リナも同類だ。

「安定っていいことだろ。命に関わる飯なら、なおさらだ」

「そう、そうですよね! でも、上の人からは“料理は劇場だ、もっと波乱を”って……」

「波乱で腹壊しても誰も得しないだろ」

 俺が呟くと、周りで聞いていた若者たちが笑った。昨晩イノシシを捕まえた連中だ。

「カイルさん、リナさんを試してみましょうよ!」
「肉はあるし、朝からごちそうだ!」

 皆がわくわくしている。どうやら本能的に「飯=希望」らしい。

「よし、リナ。腕を見せてもらおう」

「は、はいっ!」



 リナはさっそく鍋を出し、井戸から水を汲み、香草を摘み、肉を手際よく刻んでいく。包丁さばきは速く、余計な動きがない。まさに“安定”。

 焚き火の上に鍋をかけ、油を引き、肉を炒めると、じゅうじゅうと音が響き、香ばしい匂いが漂った。

「すごい匂いだ……!」
「久しぶりに“ちゃんとした料理”だな」

 村人たちの目が輝き、子どもたちは腹を押さえて唾を飲み込んでいる。

「リナ、調味料は?」

「塩と胡椒くらいしか……でも、香草で補います」

 彼女は摘んできたハーブをすり鉢で砕き、鍋に振り入れた。ふわりと立ち上る香りは、どこか懐かしい。

 ほどなくして、肉と野菜のスープが完成。リナは鍋を抱えて言った。

「追放者ギルドの……最初の朝ごはんです!」



 器に分けられたスープを一口。

「……うまい」

 俺の口から自然に言葉が出た。塩気は控えめなのに、肉の旨味と香草の香りがしっかり効いている。派手ではない。けれど、胃の底からじんわり広がる温かさがあった。

「ほんとだ……! 落ち着く味だ!」
「胃が安心してる……!」
「涙出そう……」

 村人や若者たちが次々と器を空けていく。子どもは頬を赤らめて「おかわり!」と叫んだ。

「……よかった。これで、わたしも役に立てますか?」

 リナが不安げにこちらを見上げてきた。

「立ちすぎだ。今日からお前は“追放者ギルドの料理長”だ」

 俺がそう宣言すると、村人たちから拍手と歓声が上がった。リナの目に涙がにじみ、三つ編みが揺れた。



 朝食の後、俺は広場に皆を集めた。

「聞け! ここは追放者ギルド。誰もが見捨てられた者ばかりだ。だが、ここでは生きる。俺たちは“物語”じゃなく、“生活”を守る!」

「おーっ!」

 声を合わせる仲間たち。昨晩集まった若者、今日加わったリナ、老人ノーム。確かに、ここから何かが始まる気配がある。

 畑は荒れ、屋根は崩れ、まだまだ問題は山積みだ。だが、“段取り”さえあれば何とかなる。俺の役目は、それを整えること。

「今日の目標は二つ。畑を耕すこと。そして温泉を探すことだ!」

「えっ、温泉!?」

 皆の目が輝いた。俺は谷の地図を広げ、地下水脈の線を指差す。

「地熱の匂いがする。岩の色も変わってる。掘れば当たる」

「段取りの神様か!?」

「違う。俺は追放者だ」

 でも、この仲間となら、“追放者ギルド”はきっと世界一面白い場所になる――そう確信していた。
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