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第5話 魔法が暴発する少女
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翌朝。追放者ギルドの広場には、昨日のイノシシ退治で盛り上がった余韻がまだ残っていた。
鍋の香りが漂い、リナは残り物で粥を作り、グレンは「戦いの後は飲む!」と叫んでまた酒を我慢していた。
そんなとき――。
「ひ、ひゃあああああ! また暴発したぁぁぁっ!」
谷に悲鳴がこだまし、直後に轟音。地面が揺れ、煙がもくもくと立ち上がる。俺たちは顔を見合わせた。
「……嫌な予感しかしないな」
「カイルさん、また“追放者”ですかね?」リナが呟く。
「十中八九そうだ」
煙の方へ駆けると、そこにいたのは――。
焦げたマントを羽織り、三つ編みの先がぱちぱち火花を散らしている少女だった。背丈はリナより少し低く、杖を持つ手は震えている。顔には煤、目には涙。
「……やっちゃった」
少女はぺたりと座り込み、壊れた木の杭と焦げた地面を見ていた。
「君、大丈夫か」俺が声をかけると、少女はびくっと肩を震わせた。
「わ、私はフィオ。王都の魔法学校を……追放されたの」
「理由は?」
「魔法が……暴発しちゃうから……」
彼女の背後で、まだ畑の柵が焦げて煙を上げている。俺は額を押さえた。
「……なるほど、わかりやすいな」
◇
だが、魔法の威力は確かだった。彼女が唱えた炎の矢は、狙いを外して柵を吹き飛ばしたが、その破壊力はイノシシの群れを一掃できるほどだ。
「狙いさえつけば大活躍だな」
「でも、私……みんなに迷惑かけてばっかりで……」フィオは涙目で杖を抱きしめた。
そこへグレンが豪快に笑いながら近づいた。
「気にするな! 俺だって酒で迷惑かけて追放された! 似たようなもんだ!」
「え、えぇぇ!? そんな人が……」
「そういうやつが集まってんだよ、ここは」俺は肩をすくめた。「追放者ギルドだ」
フィオの瞳が揺れた。
「……わたしも、入れてくれるの?」
「もちろん。ただし条件がある」
「じょ、条件?」
「一人で魔法を撃つな。必ず誰かと組め。狙いをつけるのが苦手なら、俺たちが補う」
フィオはしばらく迷っていたが、やがて小さく頷いた。
「……うん。ありがとう」
◇
その日の午後、追放者ギルドは初めて“合同訓練”を行った。
グレンが木の的を持ち上げ、リナが「ここ!」と指差し、俺が合図を出す。
「フィオ、今だ!」
「え、えいっ!」
放たれた炎の矢は、的を大きく外れて地面を抉った。土が舞い上がり、皆がずっこける。
「ご、ごめんなさい!」
「大丈夫。今のは半分合ってた」
「どこがですか!?」リナが叫ぶ。
「“炎の矢が出た”って時点で成功だ。あとは的に寄せていけばいい」
訓練は何度も失敗したが、最後には炎の矢が的の端をかすめた。その瞬間、皆が拍手を送った。
「やった……! 当たった!」フィオの目に涙が浮かぶ。
「失敗してもいい。ここでは“盛り上がらない成功”より、“迷惑をかけながら成長すること”が許されるんだ」
俺の言葉に、フィオはぎゅっと杖を握りしめた。
◇
夜。温泉の蒸気が漂う中、追放者たちは焚き火を囲んで鍋をつついた。リナが作った料理は今日も絶品。グレンは酒を我慢し、フィオは小さく笑っていた。
「ここは変な人ばっかりだね……」
「褒め言葉として受け取っておく」
また一人、追放者ギルドに仲間が増えた。
――魔法が暴発する少女フィオ。ドジっ子だが、その炎は必ず俺たちの力になる。
鍋の香りが漂い、リナは残り物で粥を作り、グレンは「戦いの後は飲む!」と叫んでまた酒を我慢していた。
そんなとき――。
「ひ、ひゃあああああ! また暴発したぁぁぁっ!」
谷に悲鳴がこだまし、直後に轟音。地面が揺れ、煙がもくもくと立ち上がる。俺たちは顔を見合わせた。
「……嫌な予感しかしないな」
「カイルさん、また“追放者”ですかね?」リナが呟く。
「十中八九そうだ」
煙の方へ駆けると、そこにいたのは――。
焦げたマントを羽織り、三つ編みの先がぱちぱち火花を散らしている少女だった。背丈はリナより少し低く、杖を持つ手は震えている。顔には煤、目には涙。
「……やっちゃった」
少女はぺたりと座り込み、壊れた木の杭と焦げた地面を見ていた。
「君、大丈夫か」俺が声をかけると、少女はびくっと肩を震わせた。
「わ、私はフィオ。王都の魔法学校を……追放されたの」
「理由は?」
「魔法が……暴発しちゃうから……」
彼女の背後で、まだ畑の柵が焦げて煙を上げている。俺は額を押さえた。
「……なるほど、わかりやすいな」
◇
だが、魔法の威力は確かだった。彼女が唱えた炎の矢は、狙いを外して柵を吹き飛ばしたが、その破壊力はイノシシの群れを一掃できるほどだ。
「狙いさえつけば大活躍だな」
「でも、私……みんなに迷惑かけてばっかりで……」フィオは涙目で杖を抱きしめた。
そこへグレンが豪快に笑いながら近づいた。
「気にするな! 俺だって酒で迷惑かけて追放された! 似たようなもんだ!」
「え、えぇぇ!? そんな人が……」
「そういうやつが集まってんだよ、ここは」俺は肩をすくめた。「追放者ギルドだ」
フィオの瞳が揺れた。
「……わたしも、入れてくれるの?」
「もちろん。ただし条件がある」
「じょ、条件?」
「一人で魔法を撃つな。必ず誰かと組め。狙いをつけるのが苦手なら、俺たちが補う」
フィオはしばらく迷っていたが、やがて小さく頷いた。
「……うん。ありがとう」
◇
その日の午後、追放者ギルドは初めて“合同訓練”を行った。
グレンが木の的を持ち上げ、リナが「ここ!」と指差し、俺が合図を出す。
「フィオ、今だ!」
「え、えいっ!」
放たれた炎の矢は、的を大きく外れて地面を抉った。土が舞い上がり、皆がずっこける。
「ご、ごめんなさい!」
「大丈夫。今のは半分合ってた」
「どこがですか!?」リナが叫ぶ。
「“炎の矢が出た”って時点で成功だ。あとは的に寄せていけばいい」
訓練は何度も失敗したが、最後には炎の矢が的の端をかすめた。その瞬間、皆が拍手を送った。
「やった……! 当たった!」フィオの目に涙が浮かぶ。
「失敗してもいい。ここでは“盛り上がらない成功”より、“迷惑をかけながら成長すること”が許されるんだ」
俺の言葉に、フィオはぎゅっと杖を握りしめた。
◇
夜。温泉の蒸気が漂う中、追放者たちは焚き火を囲んで鍋をつついた。リナが作った料理は今日も絶品。グレンは酒を我慢し、フィオは小さく笑っていた。
「ここは変な人ばっかりだね……」
「褒め言葉として受け取っておく」
また一人、追放者ギルドに仲間が増えた。
――魔法が暴発する少女フィオ。ドジっ子だが、その炎は必ず俺たちの力になる。
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目次
連載中 全21話
2021年2月17日 23:39 更新
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