パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さら

文字の大きさ
5 / 70

第5話 魔法が暴発する少女

しおりを挟む
 翌朝。追放者ギルドの広場には、昨日のイノシシ退治で盛り上がった余韻がまだ残っていた。
 鍋の香りが漂い、リナは残り物で粥を作り、グレンは「戦いの後は飲む!」と叫んでまた酒を我慢していた。

 そんなとき――。

「ひ、ひゃあああああ! また暴発したぁぁぁっ!」

 谷に悲鳴がこだまし、直後に轟音。地面が揺れ、煙がもくもくと立ち上がる。俺たちは顔を見合わせた。

「……嫌な予感しかしないな」
「カイルさん、また“追放者”ですかね?」リナが呟く。
「十中八九そうだ」

 煙の方へ駆けると、そこにいたのは――。

 焦げたマントを羽織り、三つ編みの先がぱちぱち火花を散らしている少女だった。背丈はリナより少し低く、杖を持つ手は震えている。顔には煤、目には涙。

「……やっちゃった」

 少女はぺたりと座り込み、壊れた木の杭と焦げた地面を見ていた。

「君、大丈夫か」俺が声をかけると、少女はびくっと肩を震わせた。

「わ、私はフィオ。王都の魔法学校を……追放されたの」

「理由は?」

「魔法が……暴発しちゃうから……」

 彼女の背後で、まだ畑の柵が焦げて煙を上げている。俺は額を押さえた。

「……なるほど、わかりやすいな」



 だが、魔法の威力は確かだった。彼女が唱えた炎の矢は、狙いを外して柵を吹き飛ばしたが、その破壊力はイノシシの群れを一掃できるほどだ。

「狙いさえつけば大活躍だな」
「でも、私……みんなに迷惑かけてばっかりで……」フィオは涙目で杖を抱きしめた。

 そこへグレンが豪快に笑いながら近づいた。

「気にするな! 俺だって酒で迷惑かけて追放された! 似たようなもんだ!」

「え、えぇぇ!? そんな人が……」

「そういうやつが集まってんだよ、ここは」俺は肩をすくめた。「追放者ギルドだ」

 フィオの瞳が揺れた。

「……わたしも、入れてくれるの?」

「もちろん。ただし条件がある」

「じょ、条件?」

「一人で魔法を撃つな。必ず誰かと組め。狙いをつけるのが苦手なら、俺たちが補う」

 フィオはしばらく迷っていたが、やがて小さく頷いた。

「……うん。ありがとう」



 その日の午後、追放者ギルドは初めて“合同訓練”を行った。
 グレンが木の的を持ち上げ、リナが「ここ!」と指差し、俺が合図を出す。

「フィオ、今だ!」

「え、えいっ!」

 放たれた炎の矢は、的を大きく外れて地面を抉った。土が舞い上がり、皆がずっこける。

「ご、ごめんなさい!」

「大丈夫。今のは半分合ってた」

「どこがですか!?」リナが叫ぶ。

「“炎の矢が出た”って時点で成功だ。あとは的に寄せていけばいい」

 訓練は何度も失敗したが、最後には炎の矢が的の端をかすめた。その瞬間、皆が拍手を送った。

「やった……! 当たった!」フィオの目に涙が浮かぶ。

「失敗してもいい。ここでは“盛り上がらない成功”より、“迷惑をかけながら成長すること”が許されるんだ」

 俺の言葉に、フィオはぎゅっと杖を握りしめた。



 夜。温泉の蒸気が漂う中、追放者たちは焚き火を囲んで鍋をつついた。リナが作った料理は今日も絶品。グレンは酒を我慢し、フィオは小さく笑っていた。

「ここは変な人ばっかりだね……」

「褒め言葉として受け取っておく」

 また一人、追放者ギルドに仲間が増えた。

 ――魔法が暴発する少女フィオ。ドジっ子だが、その炎は必ず俺たちの力になる。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

過労死コンサル、貧乏貴族に転生す~現代農業知識と魔法で荒地を開拓していたら、いつの間にか世界を救う食糧大国になっていました~

黒崎隼人
ファンタジー
農業コンサルタントとして過労死した杉本健一は、異世界の貧乏貴族ローレンツ家の当主として目覚めた。 待っていたのは、荒れた土地、飢える領民、そして莫大な借金! チートスキルも戦闘能力もない彼に残された武器は、前世で培った「農業知識」だけだった。 「貴族が土を耕すだと?」と笑われても構わない! 輪作、堆肥、品種改良! 現代知識と異世界の魔法を組み合わせた独自農法で、俺は自らクワを握る「耕作貴族」となる! 元Sランク冒険者のクールなメイドや、義理堅い元騎士を仲間に迎え、荒れ果てた領地を最強の農業大国へと変えていく、異色の領地経営ファンタジー!

防御力ゼロと追放された盾使い、実は受けたダメージを100倍で反射する最強スキルを持ってました

黒崎隼人
ファンタジー
どんな攻撃も防げない【盾使い】のアッシュは、仲間から「歩く的」と罵られ、理不尽の限りを尽くされてパーティーを追放される。長年想いを寄せた少女にも裏切られ、全てを失った彼が死の淵で目覚めたのは、受けたダメージを百倍にして反射する攻防一体の最強スキルだった! これは、無能と蔑まれた心優しき盾使いが、真の力に目覚め、最高の仲間と出会い、自分を虐げた者たちに鮮やかな鉄槌を下す、痛快な成り上がり英雄譚! 「もうお前たちの壁にはならない」――絶望の底から這い上がった男の、爽快な逆転劇が今、始まる。

『今日も平和に暮らしたいだけなのに、スキルが増えていく主婦です』

チャチャ
ファンタジー
毎日ドタバタ、でもちょっと幸せな日々。 家事を終えて、趣味のゲームをしていた主婦・麻衣のスマホに、ある日突然「スキル習得」の謎メッセージが届く!? 主婦のスキル習得ライフ、今日ものんびり始まります。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

コストカットだ!と追放された王宮道化師は、無数のスキルで冒険者として成り上がる。

あけちともあき
ファンタジー
「宮廷道化師オーギュスト、お前はクビだ」  長い間、マールイ王国に仕え、平和を維持するために尽力してきた道化師オーギュスト。  だが、彼はその活躍を妬んだ大臣ガルフスの陰謀によって職を解かれ、追放されてしまう。  困ったオーギュストは、手っ取り早く金を手に入れて生活を安定させるべく、冒険者になろうとする。  長い道化師生活で身につけた、数々の技術系スキル、知識系スキル、そしてコネクション。  それはどんな難関も突破し、どんな謎も明らかにする。  その活躍は、まさに万能!  死神と呼ばれた凄腕の女戦士を相棒に、オーギュストはあっという間に、冒険者たちの中から頭角を現し、成り上がっていく。  一方、国の要であったオーギュストを失ったマールイ王国。  大臣一派は次々と問題を起こし、あるいは起こる事態に対応ができない。  その方法も、人脈も、全てオーギュストが担当していたのだ。  かくしてマールイ王国は傾き、転げ落ちていく。 目次 連載中 全21話 2021年2月17日 23:39 更新

処理中です...